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退任が発表された日本マイクロソフト・平野拓也社長のこれまでを振り返る

7/4(木) 0:00配信

Impress Watch

 日本マイクロソフトの平野拓也社長が2019年8月31日付で退任し、9月1日付で、米MicrosoftのOne Microsoft Partner Group(ワンマイクロソフトパートナーグループ)バイスプレジデント グローバルシステム インテグレーター ビジネス担当に就任することが明らかになった。

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 9月1日以降、米国ワシントン州レドモンド市のMicrosoft米本社で勤務することになる。また平野社長は、2019年9月1日付で、日本マイクロソフトの特別顧問に就任。日本マイクロソフトの事業を支援するとした。

 なお平野社長は、7月4日に日本マイクロソフト社内にて開催される社員総会で、今回の人事について社員に報告する予定だ。

■日本人の社長経験者として初めて、米本社でのフルタイム勤務へ

 今回の平野社長の米本社バイスプレジデントへの就任は、日本マイクロソフトの経営トップとしての功績が評価されたもので、日本人の社長経験者が米本社にてフルタイムで勤務する、初めてのケースとなる。

 平野社長は、2011年7月から約3年間にわたり、Microsoft Central and Eastern Europe担当マルチカントリーゼネラルマネージャーとして、東欧や中欧の25カ国のビジネスを統括した経験を持ち、日本を飛び出すのは今回が2回目だ。

 Microsoftでは手続き上、米国本社に勤務する場合には、一度、日本マイクロソフトを退職し、米本社に新たに入社することになる。東欧などを担当した際にも、平野社長は一度、日本マイクロソフトを退社している。言い換えれば、今回の日本マイクロソフトの特別顧問という役職は、米本社に籍を置きながら日本マイクロソフトを支援するという、これまでにはない特別な立場だ。

 なお、平野社長が米本社に勤務するのは今回が初めてのことになる。現在、米本社では、コーポレートバイスプレジデント(CVP)の沼本健氏が、日本人として唯一幹部の役職を担っているが、沼本CVPが日本の企業のデジタルトランスフォーメーション支援のために3カ月に一度のペースで日本を訪れているように、平野社長も9月以降は、3カ月に一度ぐらいのペースで日本を訪問することになるのではないか。

 新たな仕事であるワンマイクロソフトパートナーグループでは、米国、日本を含む全世界において、システムインテグレーターをはじめとするパートナービジネスを担当する。Microsoftの全世界のビジネスの95%がパートナー経由によるものであり、重要な役割を担うポジションだ。

 平野社長の上司にあたるのが、ガブリエラ・シュースターCVP。

 同氏は、2018年8月に日本で開催した「Japan Partner Conference 2018」にあわせて来日し、基調講演に登壇。「私は日本が大好きであり、自動車産業の本拠地であるデトロイトに住んでいたのに、初めて購入したクルマがホンダのアコード。その後もホンダのオデッセイ、トヨタのRAV4、シエナを乗り継いだ。自宅でも数多くの日本製品がある」という日本好きを強烈にアピールしていた。

 そうした点からも、日本をよく知るシュースターCVPと平野社長とのタッグにより、今後、日本のパートナー支援に関する投資の強化が期待される。

 講演においてシュースターCVPは、パートナーグループの役割についても言及。「次の10億ドルのビジネスを構築するためにどうするべきかを考えている組織。そして、パートナーと顧客とをつなぐことを実行していく組織である」とし、「2018年度はパートナーとともに、300万件のリードや10万件以上の共同受注(Co-Sell)の実績が生まれ、パートナーを通じて50億ドルの売り上げを達成した。2019年度もこの勢いを継続し、パートナーのビジネスを支援する」と宣言してみせた。

 ここに、日本および東中欧でのパートナービジネスで実績を持つ平野社長が加わることで、Microsoftのグローバルでのパートナービジネスが加速することになるのは明らかだ。

■平野社長が行ってきた取り組み

 平野社長は、2016年7月1日に日本マイクロソフトの代表取締役社長に就任(編集注:それに先だち、2015年7月に取締役 代表執行役社長に就任している)。最初に打ち出したのが、売上高に占めるクラウド比率を50%以上にするという目標だった。

 これは、年度後半にPC事業が予想外に急成長したこともあって相対的にクラウド比率が低下したため、結果として47%にとどまり、「ほぼ達成」という結果になったが、翌年には、その数字をはるかに超える形で完全達成を遂げている。

 また、働き方改革に率先して取り組み、「働き方改革推進企業」を標ぼう。日本マイクロソフト自らが実証ケースとなり、社内でさまざまな働き方を試してきた。制度を変更し、在宅勤務を促進。社長室の会議スペースにもイスを置かず、立ったまま会議をすることで効率的な会議をしようという試みにも自ら挑戦した。

 2019年8月には、こうした働き方改革の取り組みを進化させ、週休3日に取り組むことを公表している。

 さらに2019年度の事業方針では、2020年にナンバーワンクラウドベンダーになることを宣言してみせた。同時に、Surfaceの国内販売台数を前年比1.5倍に拡大する意欲的な目標も掲げた。

 実はSurfaceの販売計画は、同社の期末を4カ月も前倒しして2019年2月時点には達成しており、大きな目標をさらに上回る実績をあげている。

■達成するまでのプロセスを重視

 そして、こうした挑戦的な目標を掲げる上で平野社長が重視していたのが、それを達成するまでのプロセスである。

 「単にナンバーワンになっても意味がない。販売台数が増えても意味がない。それに至るプロセスが重要である」と語り、「例えば、クラウドの売上比率を50%以上にするという目標は、社内の考え方やパートナーとの協業の仕方、顧客との会話のすべてが、旧来の箱売りからクラウドを中心にしたビジネスに変わることの象徴だ」としていた。

 また「2020年のナンバーワンクラウドベンダーになるという目標についても、日本マイクロソフトが、ワークスタイルイノベーション、インダストリーイノベーション、ライフスタイルイノベーションの提案ができていること、デベロッパーコミュニティにもしっかりとリーチできていること、パートナーからも独自のソリューションが出ており、それを共同で販売できる体制が整っていること、顧客が日本マイクロソフトのクラウドを使い倒してもらっている、という状況が重ならないと、パブリッククラウド市場では1位にはならない。そうしたことができたことの象徴として、ナンバーワンという意味がある」とする。

 こうした意欲的な目標とともに、変化を着実に推進してきたのが平野社長のやり方であった。

 なお日本マイクロソフトでは、2019年9月からの新社長および新経営体制については、今回は発表しなかった。ギリギリのタイミングになって発表される可能性が高そうだ。

 ちなみに、日本マイクロソフトでは7月から新年度をスタートしており、8月には新年度の事業方針を発表する予定である。これについては、平野社長が説明を行うことになるという。

 日本マイクロソフトでは、2020年にナンバーワンのクラウドベンダーになることを目指すが、この達成は平野社長自ら達成してほしかった。だが、その達成は後進に譲ることになる。

 その点は残念だが、これまでに高い目標を掲げ、自ら変革に挑戦してきた平野社長。米本社でどんな活躍をするのか。これからが楽しみだ。

クラウド Watch,大河原 克行

最終更新:7/4(木) 13:22
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