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【ドキュメント】スルガ銀株主総会 創業家居座りに怒号が飛び交った

7/4(木) 19:05配信

ニュースソクラ

尾を引くだろう、被害者救済

 「ちょっと待った! 有国(三知男社長)さん、あなたは565億円の(損害賠償請求訴訟の)被告だ。なぜ、その席にいるのか!」

 スルガ銀行が、26日、午前10時から開いた株主総会は、冒頭から大荒れだった。有国社長が頭を下げた瞬間、前方に陣取った株主が、こう声をあげ、「辞めろ!」「辞めろ!」の大合唱。「それでは、当社株主総会を…」と、開会を宣言する議長役の有国氏の声が、マイクを通じても聞こえない。

 動議を申し出るために席を立ち上がる株主や、興奮して議長席に歩み寄ろうとする株主がいて、そのたびにスルガ銀行スタッフや警備員ともみ合いになる。「動議!」「動議!」という声の合間に、「聞こえない。黙れ!」という声も混じる。

 怒りの声を上げているのはシェアハウス所有者らが中心。被害弁護団が形成されているが、年収1000万円に満たないサラリーマン層が、平均で1億3000万円の負債を抱えた。今、売却すれば4500万円相当で、にっちもさっちもいかない。

 最初は自己責任と諦めていた投資家たちだったが、スルガ銀行が設置した第三者委員会の調査の結果、判明したのは、銀行と販売業者が組んだ「組織的な不正」であったこと。契約書の偽造や書類の改ざんで投資に誘い込み、土地売買や建設の過程で費用を中抜き、結果、約束していた利回りは得られず、破綻は必至の詐欺スキームだった。

 女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズが、18年1月、賃料の支払いを停止してから始まったスルガ銀行問題は、1年半が経過しても、まだ先行きが見通せない。

 貸出総額の6割を占める投資用向け不動産ローン1兆8000億円をどうするのか、そのなかでも延滞率が4割近いシェアハウスローン2000億円をどう解決するのか、「組織的不正」を生んだ岡野光喜前会長ら創業家との関係にどうケジメをつけるのか――。

 課題は多いが、この問題に最も敏感で切実なのは、不良債権化した物件を抱えたシェアハウスの所有者たちで、だからシェアハウスローン問題の道筋を示さず、岡野ファミリー企業が今も筆頭株主で居座っている状況を変えない有国氏が許せない。

 ヤジと怒号は、第208期の事業報告がスライドで映される間も続く。声は聞き取れないが、預金が前年度比9203億円減少の3兆1596億円と、顧客の信頼を失って急速に預金が引き出されたことがわかる。

 貸出金は個人ローン残高の減少により、前年比3437億円減少の2兆9043億円。経常損失は750億円、当期損失は970億円と絶望的な数字が並ぶ。

 ヤジが収まり、有国氏の声が聞こえるようになったのは、45分以上経過、質疑応答が始まってからだ。

 シェアハウス問題と岡野家に質疑は集中、集約するのが以下の質問だった。

 「スルガの再建を左右するのは、シェアハウス問題をどう解決するかだ。憎しみの債権、嘆きの債権が残ったままでは、(再生支援に名乗りを上げた)新生銀行との業務提携は進まず、資本提携には至らない。この問題を解決するには代物弁済しかない」

 「また、もうひとつの障害は岡野ファミリーがスルガの株を持っていること。どうして早急に処理できないのか。約500億円の貸金がある。担保としてどれだけ取っているのか。明らかにして欲しい」

 代物弁済とは、シェアハウスの所有者が物件をスルガ銀行に差し出し、残債をゼロにすること。既にスルガ銀行はシェアハウスローンに1369億円の引当金を積んでおり、その処理は可能だ。

 だが、有国氏は「元本の一部カットのご案内はしている。理解はしており、抜本的な解決に努めたい」と、述べるにとどまった。また、岡野ファミリー企業については、「貸付残高は455億円。株については担保にとっているものはあるが、詳細はお答えできない。ただ、早急に処理したい」と、答えた。

 いずれも具体策に踏み込まず、時期を明示しないだけに、「いつ、やるんだ!」「中身がないよ!」と、ヤジが飛んでいた。

 質疑応答が午後1時頃まで続き、3時間が経過したところで、「時間も経ったことですし、後、2問で…」と、有国氏が切り出したあたりから、再び、「ふざけるな!」というヤジが飛び、総会継続の動議が出される。

 有国氏は、それを押し切り、有国氏を除く5名の取締役が退任し、新たに6名が就任する新経営体制など5議案を諮り、賛成多数で可決。その採決を許すまいと、会場前方は総立ちとなり、壇上に上がろうとする株主と守るスルガ銀行スタッフとの間でもみ合いになった。

 3時間22分で総会は終了、有国氏らは退場したが、出席株主556名のうち3分の1程度はその場に残り、「戻ってこい!」「総会を続けろ!」と、声を上げ続けていた。

 激しく対立した総会だったが、争点は出尽くしており、落としどころを探っている感はあった。要は、創業家が株を売却、岡野色を完全に払拭したうえ、代物弁済で元凶のシェアハウス問題にカタをつけることができるのか――。

 総会のせめぎ合いは、結局、そこに尽きるものだった。

伊藤 博敏 (ジャーナリスト)

最終更新:7/4(木) 19:05
ニュースソクラ

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