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世界を荒らした“サムスンの反労働”、法の審判台に

7/4(木) 18:15配信

ハンギョレ新聞

フランス・パリ裁判所がサムスン電子を予備起訴 グローバル企業の労働権侵害の責任を問う 国際労働人権団体「来るべきものが来た」 韓国国内でも人権経営義務化の動き

 サムスンのグローバル経営に“グローバル危機”が近づいた。フランスの司法府が、アジアの労働者に対する労働基本権侵害などを理由にサムスン電子を起訴し、世界各地で労働権侵害論議をかもしてきたサムスンの前近代的形態がサムスンの経営の安定性を害する脅威要因に浮上しはじめたと評価されている。

 フランスのパリ地方裁判所がサムスン電子を起訴し適用した直接的疑惑は、消費者法にともなう「欺瞞的商業行為」だ。サムスンが、アジアの一部の工場で労働権を侵害していながら、消費者にはこうした事実をきちんと知らせなかったということが裁判所の判断だ。

 サムスン電子が、本社のある韓国ではなくフランスで、それもアジアの工場で起こった労働権侵害論議で起訴された根本的背景には、人権経営に関するフランス社会の合意がある。フランスは2017年2月、欧州で最初に「人権実践点検義務」(Human Rights Due Diligence)法を作った国だ。「フランス企業の人権実践責任法」(French Corporate Duty of Vigilance Law)だ。特にこの法は、フランス国内のみならず国外で起きた労働権侵害に対しても責任を問えるよう規定している。国境を越えてなされるグローバル企業の活動を考慮したものと見られる。

 この法では、雇用人員5千人を超える大企業の場合、直接雇用した労働者はもちろん下請け労働者についても、人権および環境侵害の有無を把握するよう定めている。もし深刻な人権および環境侵害に関与した事実が摘発されれば、労働組合と協力し対応策を樹立して、持続的なモニタリングを遂行するよう規定している。これに違反すれば、最高3千万ユーロ(約36億円)までの懲罰的賠償責任を問うことができる。

 サムスンのフランス現地雇用の規模は5千人未満なので、今回この法律違反の疑惑が適用されることはなかった。フランスの裁判所が、消費者法という迂迴路を通じてサムスンを起訴した背景には、サムスンのグローバル労働権侵害をこれ以上黙過できないというフランス社会の合意がある程度反映されたと分析される。サムスンを裁判所に告発したフランスの市民団体「シェルパ」と「アクション・エイド・フランス」は、ハンギョレが最近報道した「グローバル・サムスン、持続不可能報告書」を引用して「サムスンのアジア労働者が月給26万ウォン(約2万4千円)未満の賃金で一日に1600台の携帯電話を組み立てるケースもあった」として、フランスの消費者は「労働者の権利を深刻に侵害したサムスンの製品を買うことに罪悪感を感じなければならない」と明らかにした。

 フランスの裁判所の起訴がサムスンにとって危機の信号ならば、その兆候が現れるのはフランスだけではない。今年6月、フィンランド政府が人権実践点検義務法案の推進を公式発表した。フィンランドは、自国企業はもちろん自国に物品を供給する企業全体に対して人権侵害の有無を確認するよう義務づける法案を推進している。英国も「強制労働禁止」を主な内容とする「現代版奴隷労働防止法」を導入したし、オランダ・ドイツ・デンマークも企業の人権実践点検義務を法制化するための議論を始めた。今月からフィンランドが欧州連合(EU)の議長国を受け持っているという点で、こうした流れはいっそう強化されると見られる。欧州レベルでいわゆる「労働のサムスン化」現象にブレーキをかける可能性が大きいという意味だ。フランスの裁判所の今回の起訴決定と関連して、サムスンの専門家たちは「来るべきものが来た」という反応だ。インドネシアの労働団体「LIPS」のパフミ所長は「全世界のサムスン工場で労働搾取、労組弾圧、職業病問題が発生しているが、これまでサムスンは“移住労働者ガイドライン”と“責任ある企業同盟”(RBA)行動規範などに則り現地労働者の人権を保護していると主張してきた。問題はこうした約束がほとんど守られなかったということ」と指摘した。

 サムスン工場の労働権侵害に対する報告書を発行した国際環境労働団体「IPEN」のジョー・ディガンギ常任顧問は「フランスの裁判所の起訴は、グローバル企業サムスンのイメージとサムスンの工場労働者の苛酷な現実の間に存在する長年の格差を公開的に明らかにする過程になるだろう」としながら「サムスンは韓国でも検察の捜査と重要な判決に向き合っており危機状況」だと話した。

 サムスンの本社がある韓国国内でも、企業の人権経営義務を制度化しなければならないという要求が起きている。公益人権弁護士会「希望を作る法」(希望法)と公益法センター「アピール」、公益人権法財団「共感」などが参加する「企業人権ネットワーク」は昨年3月、第3次国家人権政策基本計画(NAP・人権基本計画)の樹立を控え、ここに企業の人権実践点検義務を反映しなければならないという意見書を政府に出した。人権基本計画は、政府の人権政策の方向と内容を盛り込む基本枠組だ。政府も人権団体などの意見を一部受け入れ、昨年8月に出した人権基本計画に「企業と人権」を別途の章として新たに設けた。政府は企業の人権侵害を予防し、企業活動は人権親和的になされなければならないという内容だ。ただし、民間企業に人権実践点検義務を適用する方案はここに含まれなかった。

 これと関連して、国際民主連帯のナ・ヒョンピル事務局長は「政府の第3次人権基本計画に公企業と公共機関の人権実践点検義務は含まれたが、民間企業はここから外された」として「労働権の侵害が主に現れる所はグローバル企業のグローバル・サプライチェーンであるだけに、民間企業の人権実践点検義務も法制化する努力が必要だ」と話した。


キム・ワン、オク・キウォン、チェ・ソンジン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:7/4(木) 18:15
ハンギョレ新聞

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