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12歳社長が語る「親子起業」で学んだ大切なこと…制約こそが工夫の源

7/5(金) 14:15配信

リセマム

 「子どもだからできない」「まだ小さいんだからダメ」「大人になったらね」子育ての場面でつい口にしてしまう言葉だ。

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 2018年12月、中学1年生(12歳)の社長が誕生し、話題となった。親子起業というスタイルで、株式会社クリスタルロードを起業し、取締役社長に就任した加藤路瑛(じえい)さんだ。「小中高生のための職業探究ウェブメディア『TANQ-JOB』」の運営や起業に関する講演会など、活動の幅を広げている。起業の意外なきっかけや事業のこと、今後の展望について、路瑛さん、そして共に起業したパートナーでありお母さまでもある咲都美(さとみ)さんを取材した。

--昨年の12月に起業されたということですが、きっかけを教えてください。

路瑛さん:ちょうど去年の今頃(2018年6月頃)の話なんですけど、そのとき、僕はとあるYouTuberグループにハマっていました。その人たちがアップロードしている理科の実験動画がおもしろくて、憧れていたんです。だから僕も理科を勉強して、同じように実験動画を制作するYouTuberになろうと思い、実験に使う薬品に関する本や実験道具を買い集めていました。でも、本を読んだところで難しくて何から始めて良いかわからなくなっていたんです。

咲都美さん:悩んでいる息子を見かねて、ゲームなら比較的わかりやすいだろうと考えました。そんな思惑で私が「H2Oから勉強したら?」と、買ってきた元素を学べるカードゲーム「ケミストリークエスト」を手渡したのがきっかけです。

路瑛さん:そのゲームを開発したのが小学生だと知って、衝撃を受けました。しかもその米山維斗(ゆいと)さんは、親子で「起業」をしているということも同時に知りました。当時僕は中学校1年生。「小学生でも起業できるんだ!」とびっくりしました。幼い頃から漠然と「働くことはかっこいい」「働きたい」という思いが強かったので、それなら僕もやってみようと思ったのが始まりです。

F--偶然の出会いだったのですね。起業するにあたって、まず何から始めましたか

路瑛さん:思い立った翌日にすぐ学校の先生に相談しました。そしたら「事業計画書を持ってきて」と言われたんです。

咲都美さん:最初そこまで本気だと思っていなかったんです。まさか本当にやるとは思わなかったので、軽く「いいんじゃない?」と相槌を打っていました。私立の中学校ですし、バイトや芸能活動が禁止されている可能性もあるので先生に確認することを勧めました。先生も誠意をもって応えてくださいました。とは言え事業計画書なんて聞いたこともないので、きっとすぐへこたれるだろうと思っていました。

路瑛さん:「事業計画書って何?」っていうところから始めて、学校に理解してほしいこと、協力してほしいこと、約束したいこと、主な事業内容を2~3日で考えて、事業計画書をワードでまとめて提出しました。

--その事業計画書で提出した、おもな事業内容というのは?

路瑛さん:自分に何ができるかということをよく考えたときに、僕みたいに「やりたいことがある子ども」のための支援事業ならできるかもしれない、とひらめいたんです。

起業の際に学校に提出した事業計画書(当時のデータから再現)
咲都美さん:計画書の作成段階でひしひしと本気度が伝わってきて。ならば私も協力しようと、学校側や大人としての視点を考えながら、問題になりそうな点をあらかじめクリアにできるようにアドバイスしました。

路瑛さん:「学校の勉強と両立させることを約束する」「学校での課題は期限内に必ず出す」といったことですね。

--現在の事業内容について教えてください。

路瑛さん:小中高生がさまざまな職業について知るための「TANQ-JOB」というメディアの運営をしています。今後は、18歳以下限定のクラウドファンディング事業をスタートする予定で、それを主軸にするつもりです。それと、会社のアドバイザーになっていただいている方から「創業後1年は、認知されることや信頼関係を築くことに力を入れるほうが良い」とアドバイスをいただいたので、起業している大人の方とコンタクトをとったり、講演会に登壇するといった表に出る活動をしています。

--なるほど。「TANQ-JOB」についてもう少しくわしく教えてください。

路瑛さん:「小中高生のための職業探究ウェブメディア」と称して、いろんな職業の情報を伝えるサイトを運営しています。取材先は小中高生や、ロールモデルになりそうな働く大人の方々です。僕が編集長で、ライターはTwitterなどのSNSやサイトで募集した小中学生の方にお願いしています。

--ライターへの報酬はどのように渡しているのでしょうか。

路瑛さん:「polca(ポルカ)」という外部のクラウドファンディングサービスを使っています。CAMPFIREという会社がやっているサービスで、僕から報酬を渡すのではなく、記事を読んだ読者からライター本人に対して“投げ銭”のようにお金を支援してもらう流れです。「polca」では支援いただくプロジェクトのURLが30日間限定で公開される仕組みで、ライターたちはその間にだいたい1万円ぐらい集めているようです。

咲都美さん:小中高生に「働いて稼ぐ」という体験をしてもらいたくて、当初は数百円の原稿料を渡してやってもらおうと思っていたんですけど、弁護士さんに「業務委託と言えど子どもたちに直接お金のやりとりをさせるのは危険なのでは」とアドバイスをいただいて、今の形式に落ち着きました。

--結果的に、定額の原稿料を渡すよりも、活動の広がりの可能性がある形式になっていますね。

路瑛さん:今度リリースする予定のU-18クラウドファンディングサイトは、報酬面でのケアの仕組みとしても使おうと思っています。

--クリスタルロードを設立するときにもクラウドファンディングを利用したとお聞きしました。115万円も集まったそうですが、そのお金はどのように使いましたか。

路瑛さん:クラウドファンディングの手数料などが引かれて残った100万円を資本金にして会社を設立しました。

インタビューに応じるクリスタルロード取締役社長・加藤路瑛さん
--おふたりのお仕事の分担を教えてください。

路瑛さん:僕は今「TANQ-JOB」の編集長と、これからリリースするU-18クラウドファンディング事業の調整を進めています。依頼いただいたセミナーへの登壇なども僕が担当します。

咲都美さん:私は裏方の作業に徹しています。銀行に行ったり、融資を受けるなどの事務作業が中心です。息子とふたりで経営の勉強をして、政策金融公庫から融資を受けています。

--現時点で、会社の利益としてはスポンサーから得ているのでしょうか。さしつかえなければ具体的な収支について教えてください。

路瑛さん:創業からまだ半年ということもあり、利益というよりも、今はクリスタルロードの事業をみんなに知ってもらうことを中心に考える時期だと思っています。スポンサーはついてくださるのを待っているというのが現状です。今の収入は、メディアや講演会の出演料がメインになっています。「TANQ-JOB」では広告の運用をしていないので、まだ収入の軸がないんです。その理由もあって、U-18クラウドファンディング事業をスタートすることで手数料など、少しずつ安定的な収入を確保できたら良いなと思っています。

--知名度の向上や信頼の構築のフェーズですね。路瑛さんの活動を支援してくださる方々からの信頼を得るために、取り組んでいることはなんですか。

路瑛さん:TwitterなどのSNSで定期的に情報を発信したり、講演会に出たり、プレゼンテーションをするなど、活動の実績報告を積極的にしています。

--講演会はどういった方を対象に行っているのですか。

路瑛さん:そのときによって変わりますが、一番最初にご依頼いただいたのはスタートアップに興味がある20歳以下の学生に向けてのスピーチでした。2019年2月に名古屋で行われた「名古屋スタートアップイベントU-20」というものです。イベントを主催しているリーダーの方も中学生だったんですよ。依頼はTwitterのDMでご連絡いただきました。

--情報収集の基盤は、おもにTwitterですか。

路瑛さん:そうですね。「収集する」というより、情報が「自然に集まる」状態になるようにフォローするアカウントを整えています。同世代の中高生は友人同士のアカウントを相互フォローしたり、芸能人を登録しているようですが、僕は起業家の方を中心にフォローしています。FacebookやInstagram、TikTokなどの他のSNSもアカウントはもっていますが、中心はTwitter。DMで起業したい中高生から相談が来たりもします。時には批判もありますが、僕はまったく気にならないタイプなんです。

咲都美さん:私は結構批判とか気にしちゃうんですけど(笑)。

インタビューに応じるクリスタルロード代表取締役・加藤咲都美さん
路瑛さん:起業している人や自らすすんで情報発信する人をフォローすることで、良い情報を得られます。信頼できる人からの情報は信頼できるので。SNSを仕事のために活用しているのは、僕の特徴かもしれません。

--PCやスマホなどのデバイスにはいつから触れていましたか。

路瑛さん:幼稚園ぐらいからパソコンを触っていましたが、ちゃんと使い始めたのは小学3年生のとき、学校の技術の授業でした。

咲都美さん:特にタイピングを教えたりすることはしてないし、何を教えたっていうわけではないのですが、ちょうどその頃から自宅でもタブレット端末を自由に使って良いという感じにしました。時間制限もまったく設けなかったので、当時はYouTubeも見放題でした。キッズ携帯を持たせたのは習い事に通うようになった、同じく小学3年生の頃。スマホは5年生のときに買いました。

--習い事は何をしていたのですか。

路瑛さん:乗馬、ピアノ、スイミング、体操教室です。中学受験のタイミングですべてやめてしまいましたが、塾には通わず自宅で勉強しました。

--独学で私立中学校に進学されたのですか。

路瑛さん:そうですね。僕は感覚過敏で、大きな音や集団が苦手なんです。それが理由で、塾では集中できず、自宅のほうがじっくり取り組めたんです。

 診断名こそついていませんが、実は読み書きもかなり苦手です。授業も、みんなが解答を書き終わってから、やっと書き始めるみたいな状態だったので、自分のペースで受験に臨みたかったんです。

 志望校を選ぶときも、自分が心地良く通えそうな学校を探しました。においや食感に関しても敏感で、小学生のとき給食に苦痛を感じていたこともあり、給食のない私立中学校に行きたいという思いがありました。入試問題で言えば、僕は算数の途中式を書かずに、頭の中で計算して答えを出すスタイルなので、途中式を書かずに解答のみの記述で出題されるところを探し、今通っている学校にたどりついたんです。

紙での読み書きは苦手という路瑛さんだが、デジタルデバイスで作成した資料は非常にわかりやすくまとめられている
--制約がある中で最良の選択をしたのですね。そういった姿勢はおそらく事業にも生かされているでしょうね。

咲都美さん:視覚、聴覚、嗅覚など、感覚過敏の子どもたちは実は多いと聞きます。多少の生きづらさはあるかもしれませんが、かえって、そういった制約や決められたルールがあることで、工夫することのおもしろさを感じることができると思います。

路瑛さん:制約のある中で、自分ができることは何か、自分がやりたいことを実現する方法は何かを考えるのは楽しいです。15歳以下は起業できないと言われている中で「親子起業」というスタイルを知ったときは、とても感動しましたし、これなら自分にもできる!と感じて、思いきって起業しました。働くことに憧れをもっていた僕にとって「子どもが働くなんておかしい」という世の中の固定観念は、どうにかして覆したいと思っていたんです。

 起業するうえで年齢が制限になる反面、自分がまだ中学生であることで興味をもってくれる人がいたりと、逆に年齢が武器になることも多くありました。今度リリースする予定のU-18クラウドファンディング事業もそういうところを意識しています。

--U-18クラウドファンディング事業は、具体的にはどのような取組みなのですか。

路瑛さん:大きな特徴は、支援を呼びかける際のツールとして動画を使用することです。僕自身、読み書きが苦手ですし、小中学生ならまだ文章力がついてない子もたくさんいると思います。動画を使えば、どんな年齢の子どもでも伝えたいことを表現しやすいですし、受け取る側にもダイレクトに伝えられます。海外の方にも見てもらいたいので、YouTubeの動画翻訳機能も使えるようにしようと思っています。

--ご自身の経験も踏まえた着眼点が素晴らしいですね。今後の展望を教えてください。

路瑛さん:U-18クラウドファンディング事業は、まずサービスのベータ版として僕が第1号の支援プロジェクトを立ち上げます。それで実際にやってみてバグなどを調節しつつ、8月には正式版をリリースできたらと思っています。すでにクラウドファンディングをやってみたいと言ってくれる小中高生が数人います。現段階での関心のあるなしに関わらず、たくさんの子どもたちが取り組みたいと思うようなサービスにしていきたいです。

--進路はどのようにお考えですか。

路瑛さん:大学は行くか決めていませんが、もし行くなら海外の大学に行きたいです。英語を使えたほうが良いし、日本だけにとどまらないビジネスがしたいので。

咲都美さん:息子が15歳になるときか、18歳になるときかわかりませんが、私はどこかで会社からは身を引こうと思っています。日本では未成年だと印鑑の届け出などがスムーズにいかなかったりするので、タイミングを見極めているところです。

自身の経験から「できない理由を探さずに、できることからやることが肝心」と話す路瑛さん
--起業したいと考えている同志たちに、メッセージをお願いします。

路瑛さん:やりたいことが決まっているなら、できない理由を探さずにできることからやっていってほしいです。壁に直面しても何かしら解決策はあるはずです。もし親に反対されたら、他の親戚や学校の先生を味方につけることで、親を説得することができるかもしれません。外堀を埋めていくというか。まず実験的に自分でやってみて、その成果と実績を見せて、親を納得させるのも良いですね。できることから地道にやっていくのが肝心だと思います。

--「起業」を知らない同世代の子どもたちにも、ひとことお願いします。

路瑛さん:起業以外のことでも、それぞれやりたいことってたくさんありますよね。やりたいことを見つけたら最後までやりたいことを貫き通してほしいということを伝えたいです。興味の種がいっぱいあるのに「どうせ無理」などと思い始めると、すぐにやめたくなります。やれない理由を探しているうちに種がなくなってしまう。好奇心の芽につなげるために、種をなくさないように、思いを突き通してほしいです。

咲都美さん:息子はとてもマイペースで集団も苦手なので「良い大学に行って、良い会社に就職する」といういわゆる「普通」の道に進むことは難しいかなと思っていました。とは言え、私個人としては「普通」の道を外れることが正直なところ怖かったんです。でも蓋を開けてみたら、起業を通して「この子は私がいなくても自由に生きていけるな」と確信できて、とても気が楽になりました。信じて応援して良かったと心から思います。

--本日はありがとうございました。

 「僕が言うのもなんですが、母は良きビジネスパートナーです」と話す路瑛さん。ビジネスではパートナーとしてお互いを尊重しつつ、プライベートでは忘れ物を注意されたり、宿題を確認されたりと一般的な親子としての日常を送っているそう。特別なスキルを持ち合わせているわけでもなく、幼少期から英才教育を施しているわけでもない。インタビューに応じた起業親子は、見た目も中身も、極めて一般的な親子だった。

親子であり、ビジネスパートナーでもある路瑛さんと咲都美さん
 ただ印象的だったのは、咲都美さんの絶妙なサポート。決して母親として背伸びしすぎることなく、適度な距離感のもと、子どもの存在と思いを確認する。子どもも母親も、それぞれが与えられた条件下で、自分自身ができることを探す。ふと差し出したカードゲームが好奇心の芽を開かせたように、ふと発した「いいんじゃない?」という相槌が起業につながったように、些細なサポートで子どもは大きく成長するのだ。

 現代の子どもたちにとっての一番のサポートは、ひとりひとりに合った手厚い支援や作り込まれた体制ではなく、たとえ凝り固まった固定観念やルールや制約があっても、工夫次第で自己表現ができるという安心感の提供なのかもしれない。

《リセマム 土居雅美》

最終更新:7/5(金) 14:15
リセマム

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