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国鉄と共に消えた「チッキ便」 新たな枠組みで復活させたい

7/5(金) 8:00配信

ITmedia ビジネスオンライン

 「サザコーヒー」と「木内酒造」が、水戸から東京まで、JRバス関東の路線バスを使った商品輸送を始めた。6月24日から7月31日までの実証事業だ。その背景に国土交通省による貨客混載の規制緩和があり、全国的に貨客混載の事例が誕生している。空気を運ぶよりモノを運ぶほうが良い。その考え方を進めると、地方鉄道にもチャンスがありそうだ。国鉄とともに終わった「チッキ便」を、新たな枠組みで再出発させる契機になるかもしれない。

【画像】路線バスで商品輸送、実証実験のイメージ図

 この実証事業の参加者は「サザコーヒー」「木内酒造」「JR東日本水戸支社」「JRバス関東」「JR東日本物流」「鉄道会館」だ。

 荷主の「サザコーヒー」は、コーヒーファンの間でも話題のコーヒーショップだ。1970年代の喫茶店ブームのころにいち早く自家焙煎を始め、その後はコーヒーの卸売りも手掛け、いまや南米に自社のコーヒー園を持つ。本店は茨城県ひたちなか市、JR勝田駅のそばにある。そして東京駅付近の商業施設「KITTE丸の内」に直営店「サザコーヒーKITTE丸の内店」を出店している。

 「木内酒造」は茨城県那珂市の酒造会社だ。清酒、地ビールの製造を手掛ける。鉄道ファンなら、寝台特急カシオペアや北斗星の食堂車でも提供されていた「木内梅酒」を覚えているかもしれない。現在、東京駅八重洲口のグランルーフに地ビールの直営店「常陸野ブルーイング・ラボ 東京駅店」を出店している。これは都内2号店。初出店は神田万世橋だった。

 「JRバス関東」はJR東日本グループのバス運行会社だ。茨城・福島・栃木・群馬・千葉・長野県でローカルバスを運行するほか、東京と各地を結ぶ路線バスを運行する。「JR東日本物流」は駅構内の店舗への配送業務を中心とする運送業、「鉄道会館」は東京駅エリアで商業施設を運営する。

バスの空きスペースで「適量」輸送を実施

 従来は「サザコーヒー」「木内酒造」、それぞれの会社が宅配便や自社でチャーターしたトラックを使って商品を輸送していた。実証実験では、各社が商品をJR関東バス水戸支店に持ち込み、高速バスのトランクスペースに積み込んで東京駅日本橋口まで運び、「JR東日本物流」または「鉄道会館」が店舗に届ける。「JR東日本水戸支社」は全体のとりまとめ役だという。

 高速バスは座席の位置が高いハイデッカータイプが主流だ。乗客にとって車窓を楽しめるし、大きい荷物は階下のトランクスペースに預けられるから、車内で窮屈な思いをしなくて済む。その意味では、荷物の多い乗客にとって列車より快適かもしれない。しかし、高速バスのトランクスペースは、遠距離旅行の滞在客が乗らなければ使われない。空港行きバスなら満載に近いけれども、短距離便ではほとんど使われていない。そこでコーヒーやビールを運ぼう、となった。

 宅配便の単価は高いし、トラック便もある程度の数量がないと効率が悪い。それに比べれば、バスのトランクはちょうど良いサイズだし、不足すれば続行便に乗せられる。JR関東の「みと号(東京~石岡・水戸駅間)」は1日50往復以上もある。この路線はJR関東、茨城交通、関東鉄道の共同運行で、JR便は18往復だ。今回は「サザコーヒー」「木内酒造」ともに片道1便ずつだけれども、需要の変化に応じられるはずだ。

 良いアイデアだと思うけれども、鉄道びいきとしてはちょっと悔しい。「サザコーヒー」の本店は私も取材したことがある。常磐線の勝田駅から徒歩約8分。ファミリーレストランほどの広い店で、店舗の隣に焙煎工場もある。そして届け先は東京駅の向かいのKITTEだ。高速バスよりもJR常磐線の特急「ひたち」「ときわ」のほうが速い。所要時間はバスの約2時間に比べて、特急は1時間半だ。各駅停車でも約2時間20分で、定時性を考えれば互角の勝負のはず。鉄道による荷物輸送としては、6月に東北新幹線と上越新幹線を使った鮮魚輸送の実証実験が行われた。列車輸送は不可能ではないはずだ。

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最終更新:7/5(金) 8:00
ITmedia ビジネスオンライン

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