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【木内前日銀政策委員の経済コラム(41)】 ECBはマイナス金利政策の影響を再点検

7/5(金) 11:03配信

ニュースソクラ

マイナス金利の悪影響が格段に大きい日本

 日本銀行が4月17日に公表した「金融システムレポート(2019年4月)」は、あたかも追加緩和措置の弊害を詳しく説明するかのような内容だった点が注目される。

 同レポートでは、不動産向け融資を中心に銀行の融資活動に相応の過熱感が生じていることや、中長期的な金融機関の収益性の問題に焦点が当てられた。

 ところで、こうしたプルーデンス(金融機関の健全性・安定性)の観点ではなく、マクロ金融政策の観点から注目されるのが、マイナス金利政策が銀行の収益に与える影響について、日本と欧州とで比較した分析が示されたことだ。

 ECB(欧州中央銀行)は、将来の追加金融緩和策実施も視野に入れ、マイナス金利政策が市中銀行の収益性に与える悪影響を再点検し、また、それを緩和する措置を検討している。

 日本とスイスが既に導入している、階層型中銀当座預金制度の導入の是非も検討されている模様だ。こうした観点から、マイナス金利政策が銀行の収益に与える影響が、改めて欧州で注目を集めている。

 あたかもこれに呼応するかのように、今回の日本銀行の金融システムレポートでは、マイナス金利政策が銀行の収益に与える影響について、日本と欧州を比較した分析が示されたのである。そこでは、欧州諸国と比較して、マイナス金利政策の収益への影響を格段に大きく受ける、という日本の銀行の姿が浮き彫りにされている。

 ただし、それ自体は、2016年1月に日本銀行がマイナス金利政策の導入を決めた際に、既に十分に予想できたことである。

▼欧州に大きく劣る日本の銀行の収益性

 欧州諸国と比較した際の日本の銀行の特徴について、業務粗利益ベースで見た利益率が欧州諸国は横ばいで推移する一方、日本では低下傾向となっていることが、同レポートでは指摘された。

 日本の銀行の業務粗利益ROA(総資産利益率)は近年低下傾向を辿り、2017年度で1%強の水準であるのに対して、ユーロ圏の銀行では3%弱の水準で横ばいの推移をしている。

 資金運用利回りが低下する中で、欧州諸国では資金調達利回りも相応に低下していることで、マイナス金利政策による利鞘の悪化効果が緩和されたのに対して、日本では資金調達利回りの低下がほとんど見られないことが、こうした乖離を生んでいる。

 日本では、低金利、ゼロ金利の継続期間が歴史的に長かったことで、預金金利の低下余地がほとんどなかったこと、銀行の負債に占める預金の比率が極めて高く、市場性資金の調達コスト低下の恩恵が受けにくかった、ことがその背景にある。これは、マイナス金利政策導入以前からある、日本と欧州の銀行の資産・負債構造の大きな違いに根差すものだ。

▼日本の金融政策への影響は?

 このように、マイナス金利政策が銀行の収益性や、やや長い目で見た銀行経営、金融システムに与える悪影響について、欧州と比べて日本の方が、かなり大きいということを直接的に指摘したのが、今回の金融システムレポートだ。

 なぜこのタイミングでこうした分析を示したのかは不明であるが、日本でも追加金融緩和観測が浮上する中、さらなるマイナス金利(付利金利)の引き下げや、貸出金利のマイナス化などが銀行経営、金融システムに与える悪影響について、日本銀行内のプルーデンス部署が金融政策の企画・運営部署、あるいは金融政策を決定する政策委員会に対して暗にアピールする意図があった、との解釈も可能であるかもしれない。

■木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。

最終更新:7/5(金) 11:03
ニュースソクラ

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