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アグネス・チャン・ユニセフ大使が語る、アフリカ最貧国ニジェール

7/5(金) 15:01配信

ニュースソクラ

母親たちが乳飲み子を連れ、サハラ砂漠を越えて物乞いに

 ユニセフ・アジア親善大使のアグネス・チャンさんは3日都内のユニセフハウスで「ニジェール報告会」を実施した。1998年から毎年続けられているアグネスさんの海外訪問は、今回のニジェールで23回を数える。常に弱者と子供たちの将来に心を砕くアグネスさん。アフリカ・サハラ砂漠に隣接する内陸国ニジェールで何を見たのか。

▼アグネスさんの報告

 サヘル地帯の中心に位置するニジェールは、移動の中継地としてアフリカ各国からの移民・難民を受け入れるだけでなく、自ら移民・難民を生んでいる国でもあります。人口は約2000万人で、うち18歳以下の子供たちが約6割を占めます。日本とは対照的に「若い国」です。

 一人の女性が生涯に産むこどもの数は7.6人に及びます。女性は15歳、男性は17歳以上になれば結婚できるしきたりで、初産の平均年齢は約18歳となっています。しかし、実態は13歳で結婚して出産するケースも少なくないようです。ニジェールは、世界で最も「児童婚率」が高い国です。

 ユニセフの推計によると、4人に3人の女の子が18歳未満で結婚し、4人に1人が15歳未満で結婚しています。

 その一方で、平均寿命は58歳と低い、いわゆる「多産多死」の状況下にあります。5歳未満児の死亡率は1000人当たり91人です。実に日本の約30倍もの子どもたちが5歳未満で命を落としているのです。

 安全な水を利用できる比率は農村部では36%たらず、9割近く人が衛生施設を利用できていません。国民の半数以上が絶対貧困ライン以下の生活を余儀なくされており、識字率は15%。成人の8割以上が読み書きができないでいます。

 私は、現地のトンディビア小学校を訪問しましたが、子どもたちは明るく屈託のない笑顔で迎えてくれました。しかし、その陰で就学年齢の子どもの半数以上が学校に通えておらず、教育を受け、より良い未来を追及する権利を奪われています。

 ユニセフでは、こうした学校に通えない子どもや若者のための代替的教育施設を支援しており、ニジェールでも数多くの委員会を組織して、教育のサポートを行っています。

 より危機的であるのは、栄養不良が子どもたちの健康と成長を脅かしている現状です。10人のうち4人の5歳未満児が発育阻害の状態で、持って生まれた能力が失われてしまう状況にあります。急性栄養不良率は10%以上と深刻です。子供たちは常に命を落とすリスクに晒されていると言っていい。

 私は、隣国・アルジェリアに渡った、あるいはニジェールに強制送還させられた女性や子どもたちと話しました。アルジェリアへの旅路の途中、父親に連れ戻された少年は、砂漠で母親、弟、妹と生き別れとなり、帰宅した時に3人が亡くなったことを知ります。

 彼の顔にはいま表情がありません。また、3年前に子どもを連れてアルジェリアに行った際、暴力の被害に遭いそうになった母親や、息子をアルジェリアで亡くした母親の話を聞き、涙を禁じ得ませんでした。

 彼女、彼らがなぜ、危険を冒してまでアルジェリアに行くのか。それはアルジェリアで「物乞い」をするためです。そのための「運び屋」と呼ばれるエージェントもいます。国土の80%が砂漠で、産業といえば農業と酪農程度しかないニジェール。

 しかも、男性優位の社会の中で、女性が生きていくためには隣国アルジェリアに行って物乞いをするしかないのです。その時、子どもを連れていけば「施し」も多いという悲しい現実があります。そして、数々の悲劇が生まれているのです。

 私がニジェールを訪ねて、垣間見た光景は心に突き刺さりました。子供たちの健康と教育を守ることが、ニジェールの将来のために最も重要です。支援が必要なのです。

■森岡 英樹(経済ジャーナリスト)
1957年生まれ、 早稲田大学卒業後、 経済記者となる。
1997年米国 コンサルタント会社「グリニッチ・ アソシエイト」のシニア・リサーチ ・アソシエイト。並びに「パラゲイト ・コンサルタンツ」シニア・アドバイザーを兼任。2004年 4月 ジャーナリストとして独立。一方で、「財団法人 埼玉県芸術 文化振興財団」(埼玉県100%出資)の常務理事として財団改革に取り組み、新芸術監督として蜷川幸雄氏を招聘した。

最終更新:7/5(金) 15:01
ニュースソクラ

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