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白石一郎「海狼伝」 海洋冒険小説に針路開く 【あの名作その時代シリーズ】

7/8(月) 12:00配信 有料

西日本新聞

夕日が落ち、荒波が打ち寄せる対馬・佐須奈湾の磯。ここで笛太郎は、海や船へのあこがれをさらに募らせていく

 「あの名作その時代」は、九州を舞台とした作品、または九州人が書いた著作で、次代に残すべき100冊を選び、著者像や時代背景、今日的な意味を考えながら紹介するシリーズです。西日本新聞で「九州の100冊」(2006~08年)として連載したもので、この記事は06年11月12日付のものです。

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 血沸き、肉躍る小説というのがある。戦国時代末期、海賊に身を投じた若者の成長を描く、この歴史小説も、そうした一冊だろう。出無精で、どちらかと言うと「腰の重い作家」と言われた、白石一郎が、何かに突き動かされるように、取材・執筆に三年、徹底的に現場を踏み、足で書いた小説である。

 この作品を書くに当たり、白石は「舞台の空気を吸いたい」と松浦党ゆかりの長崎県の平戸・壱岐・対馬に計十五回も通った。村上水軍ゆかりの瀬戸内の島々にも二十回近く足を運び、資料を集め、イメージを膨らませた。嵐の海のシーンを書くため、台風の日を選んで玄界灘に面したホテルに泊まり、一昼夜、荒れ狂う海を凝視した。「主人は、この小説に賭けていました。原稿料はすべて取材費に使うと言っていました」(妻の文子さん)。

 執筆にも、全体重を傾けた。原稿用紙三枚分の物語の導入部分を、十回も書き直した。海戦の場面を描くときは、色紙で折った船を机上に並べ、想定した天候、風向、潮流、波高に合わせて、紙の船を動かしながら原稿用紙のマス目を埋めていった。

 白石のファンで壱岐・対馬航路の現役の船員、中野和久氏(43)は、この小説を支える正確な航海の知識にうなった。

 「壱岐・対馬海域では、冬の北西の季節風より、春と秋に吹く北東の風が時化(しけ)を呼び恐ろしい。それに、船の後ろからやってくる追い波が、船のバランスを崩し、操船の脅威になることも書いている。船員でもない人が、なんで、こんなことまで知っているのかと驚いた」 本文:2,528文字 写真:1枚

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西日本新聞

最終更新:7/8(月) 12:00
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