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貧しいのは本人のせい? エリート階級に広がる「自己責任論」、乗り越えるには 格差問題の専門家に聞く

7/10(水) 7:02配信

withnews

生活が苦しい人のための政策を考えるとき、必ずと言っていいほどネックになるのが「自己責任論」です。“貧しいのは本人の責任”、“努力しなかった本人が悪い”。日本に広く行き渡ってしまった考え方ですが、格差問題に詳しい社会学者の橋本健二・早稲田大学教授によると、特に高学歴・高収入の人はこう考える傾向が強いそうです。どうすれば自己責任論を乗り越え、本格的な貧困対策に取り組めるのか。橋本さんに聞きました。(朝日新聞記者・牧内昇平)

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貧困は自己責任じゃない

――世の中に「貧困」を「自己責任」とする考え方が広まっているようで、残念です。

ものごとを選択する余地がある場合に限り、人びとは責任を問われるべきです。たとえば、パート主婦や専門・管理職をのぞいた非正規労働者をわたしはアンダークラスと呼んでいます。収入が低く、雇用が不安定な人たちです。アンダークラスの人びとに自己責任論は成立しません。低賃金で不安定な仕事を社会的に強制されているのです。

貧しい人びとが自己責任論に陥ってしまう理由

――でも、生活が苦しい人たちの中にも、自己責任論を受け入れる人たちがいますよね。

たしかに、自己責任論はアンダークラスの人びとにもある程度まで浸透しています。「貧乏な自分」という現実がある中で、「自分は努力している」「自分には能力がある」と思い続けるのは難しいことです。矛盾と葛藤を抱え込むことになるからです。

しかし「自分は努力しなかったし能力がないんだからしかたがない」と考えてしまえば、現実を静かに受け入れることが可能になります。そのように自分を納得させてしまう人々が、アンダークラスの中に一定程度いるのは事実でしょう。

ーーアンダークラスの人びとがすすんで自己責任論に賛成している訳ではない。むしろ貧困の現状に折り合いをつけるため、「自己責任だ」と考えざるを得ない人びとがいる、ということですね。

そうです。一方で、「自分は努力している」「自分には能力がある」と思い続けるなら、「社会が間違っている」という認識にたどり着く可能性が大きくなります。

哲学者のジョン・ロールズが書いた『正義論』で一番のポイントは「自尊」(セルフリスペクト)です。これがすべての人に保障されるべき最も重要な基本財であると、ロールズは書いています。アンダークラスの人びとにいま必要なのは、このセルフリスペクトだと思います。

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最終更新:7/10(水) 7:02
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