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ホルムズ海峡タンカー攻撃、米国のイラン犯行説に矛盾だらけ

7/8(月) 14:01配信

ニュースソクラ

【軍事の展望台】ベトナム、イラクなど米国はウソで戦争始める歴史

 ペルシア湾の出入口であるホルムズ海峡を出たオマーン湾で、6月13日午前6時45分(現地時間)頃、日本の「国華産業」が運航するタンカー「コクカ・カレジアス」(パナマ船籍、約1万9千総トン)が爆発物による攻撃を受け、右舷後部の機関室の燃料タンクから出火した。

 同船は消火に成功したが、その約3時間後に再び右舷中央部に攻撃を受け航行不能となった。

 乗員21名(全員フィリピン人)は救命ボートで退船、オランダのタグボートと米駆逐艦「ベインブリッジ」に移った。

 ほぼ同時刻にノルウェー企業が保有し台湾の石油企業が傭船していたタンカー「フロント・アルタイル」(マーシャル群島船籍、約6万3千トン)も攻撃を受けて大火災を起し、乗員23名はイラン艦艇に救出された。

 ポンペオ米国務長官は13日の緊急記者会見で「米政府はイランに責任があると判断した」とし、「イラン政府は日本のタンカーを攻撃、乗組員の生命を危険にさらした。安倍首相がイラン訪問中に事件を起こして日本を侮辱した」と述べた。

 中東地域を担当する米中央軍は13日「攻撃は吸着水雷によるものだった」との声明を出し、「イランの革命防衛隊が不発だった水雷を日本のタンカーから取りはずし、証拠を湮滅している様子を米軍が撮影した」との「証拠映像」を公表した。

 だが、「吸着水雷による攻撃」との米国側の主張には矛盾、不自然な点がある。

 「吸着水雷」は強力な磁石を付けた小型爆弾だ。アクアラングを背負った潜水兵がボートや小型潜水艇で港に潜入、停泊中の敵の艦船の水線(水面の線)下に取り付け、脱出後に爆発するよう時限信管をセットする。

 第2次世界大戦中、英軍の特殊部隊14名は1943年9月、カヌー3隻でシンガポール港に潜入、吸着水雷で日本の貨物船7隻を沈没または破損させた。1945年7月には英軍の小型潜水艇でシンガポールの港にもぐり込んだ1人の潜水兵が重巡洋艦「高雄」の船底に吸着水雷を付け、大亀裂を生じさせた。人が抱えて泳げる小型爆弾でも、水中では爆発の圧力が周囲の水に抑えられて船に集中するから、相当な威力を発揮する。

 だが、今回の「コクカ・カレジアス」の破孔は最初の爆発が水線より少し上、2回目ははるかに高い舷側に生じている。

 泳いで船に接近する潜水兵は目標の水線下には比較的容易に吸着水雷を付けられるが、泳ぎながら爆弾を水線より上にわざわざ持ち上げて取り付けるのはシンクロナイズド・スイミングより難しい。

 水線下に穴をあけないと効果も乏しい。まして2回目の攻撃のように、舷側の手が届かないような高い場所に取り付けるのはまず不可能だ。水線より上に付けたと言うのなら、何のために、どうやってつけたのか、との疑問が生じる。

 同船の乗組員は「砲弾のような物が飛来した」と報告している。仮に1回目の攻撃の際は突然の爆発だけに思いちがいをしたとしても、2回目の攻撃前には全員が緊張し、右舷の消火をしたのだから、その際に右舷に何か異様な物体が付いていれば見落とすとは考えにくい。「砲弾のような物が飛来した」との報告は無視できない。

 「コクカ・カレジアス」の航海速力は14.3ノット(時速26キロ)で、それが航行中に潜水兵が泳ぎついて吸着水雷を付けることもおよそ不可能だ。もしそれをするなら停泊中にやるしかない。サウジアラビアのジュベイル港か、あるいは10日に同船がそこを出てカタールのメサイード港に寄港、そこでもさらにメタノールを積んだから、どちらかの港に停泊中に吸着水雷を仕掛けたことになろう。

 だが攻撃をする側にはタンカーの出航日時や次の寄港予定などは分からない。今回のようにジュベイル出港から約60時間後に目標の船がホルムズ海峡を抜け、イランにもっとも近い水域を通るころに爆発するように時限信管をセットすることは難しい。また、もし複数の水雷を仕掛けたなら同時に爆発するようにするはずだ。3時間の差があると発見されて除去される可能性がある。

 また、同船はパナマ船籍で、船尾には船籍港が書かれ、パナマ国旗を掲げているから、日本の会社が事実上の所有者であることは簡単には分からない。「安倍首相がイラン訪問中だから日本船を狙って恥をかかせた」とは考えにくい。

 米中央軍が「証拠写真」のように公表した映像も辻つまが合わない。イランの巡視艦が「コクカ・カレジアス」に横付けし、「イランの革命防衛隊員が不発の吸着水雷を回収している光景」と米国側は言う。

 だが、仮に2発以外の水雷を仕掛け、その一部が不発だったことは、事件の発生後に初めて分かることだ。

 事件発生後にはタグボートが駆けつけて、「コクカ・カレジアス」を最寄りのUAE(アラブ首長国連邦)のカルバ港へ曳航を始めた。米駆逐艦「ベインブリッジ」も来て同船の乗組員を一時収容、船内の安全確認を行った。曳航される船も舵を取る方がコースが安定するから、乗組員は船に戻った。

 攻撃を受けた船に衆目が集中する中、イランの巡視艇に乗った革命防衛隊員が現われ、不発水雷を回収するという話は不自然だ。あたかも放火犯が火災の現場に戻り、消防車やパトカーが集まっているのに忘れ物を探すのに似て、関与を自供するに等しい。

 米軍が公表した映像は夜間撮影のようだが、事件の発生は13日の朝だから、証拠湮滅をするには遅過ぎる。

 イランの巡視船が来て「コクカ・カレジアス」を調べていたのなら、それは米国製の小型ミサイルの破片など、米国あるいは他の反イラン勢力の犯行の証拠を探していたとも考えられる。

 米軍はその後、「爆発した吸着水雷の磁石の破片はイラン軍のパレードに出たものと似ている」とも言う。

 だが、特殊部隊が携帯して港に潜入し、秘かに使う吸着水雷は小型で、全く見映えのしない代物だ。弾道ミサイルや戦車などが続々登場し威容を示すパレードに出すとも思えない。

 今回の事件が起きる前、米国の無人機が付近で飛行中、イラクの船から対空ミサイルの発射を受けたが命中しなかった、とCNNは報じている。

 米軍無人機には偵察用のRQ4(グローバルホーク)などのほか、対地攻撃用のMQ1(プレディタ―)、MQ9(リーパー)などもあり、対戦車ミサイルAGM114(ヘルファイア、重さ45キロの小型)などを搭載し、アルカイダやタリバン幹部の車を狙う暗殺に使われてきた。

 今回攻撃された2隻のタンカーを意図的に狙って米軍が無人攻撃機からミサイルを発射した、とは考えにくいが、誤爆、誤射は間々起こる。1999年5月7日には、ユーゴスラビアの中国大使館が米空軍のステルス爆撃機B2に誤爆された。

 イラン・イラク戦争中の1987年5月17日には、米国が支援していたイラクのミラージュ戦闘攻撃機が、米海軍フリゲート「スターク」に対艦ミサイル「エクゾセ」2発を発射して大破させた。

 今回の事件は米軍の無人機に対し、イランの艦艇が対空ミサイルを発射した後に発生しており、無人機で報復攻撃をしようとして、対戦車ミサイルを発射したのが、タンカーに当った可能性も考えられる。

 一方、イランの対空ミサイルがタンカーに当ったこともありうるが、対空ミサイルは敵機に接近または接触したとたんに爆発し、飛散する破片で撃墜を目指すもので、厚さ約3センチのタンカーの外板を貫通し、船内で火災を起こす可能性は低いだろう。

 「コクカ・カレジアス」の破孔は水線より上で、大きくはない。特に、2回目の攻撃では小さな穴しかあいていないことは対戦車ミサイルの射撃を受けた可能性を示すのでは、とも思われる。

 「イランはホルムズ海峡の閉鎖を目指す」とも米国は言うが、それをすればイランは自国の石油輸出を妨げる結果となる。一方、米国はシェール・オイルの産出により、石油輸出国になったから、ホルムズ海峡の閉鎖で原油価格が上昇すれば米国を利することになるのは明白だ。イランが軽々にそのような愚行をするとは考えにくい。

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最終更新:7/8(月) 14:01
ニュースソクラ

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