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金融リテラシー調査、日本の正答率は米・英・独・仏を下回る

7/10(水) 9:00配信

MONEYzine

■日本の「金融リテラシー」の現状

 金融広報中央委員会は、日本の個人の金融リテラシー(お金の知識や判断力)の現状を把握するために、2016年に続いて「金融リテラシー調査 2019年」を行い、その結果を発表した。

 調査の結果、「家計管理」では、おおむね7~9割の人が1か月の収入・支出や支払期日を管理している。また、7割の人が、何かを買う前に家計の余裕について注意深く考えており、病気、失業などに備えた生活費を確保している人は半数を超えている。

 「生活設計」では、お金に関する長期計画を立て、「その日暮らし」を回避する考え方を持つ人は、そうでない人よりも多くなっている。「人生の3大費用(老後の生活費、教育費、住宅費)」の必要額の認識状況をみると、いずれも約半数の人が認識していると回答。実際に資金計画を策定している人は、教育費は半数近い人が策定しているのに対して、老後の生活費と住宅費については3割強にとどまっている。

 「金融知識および金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択」では、金融取引の基本に関する正答率は全体の74.0%。一方、金融・経済の基礎、保険、ローン・クレジット、資産形成に関する正答率は5割前後となっている。また、借入れ・保険商品購入・資産運用を行う際に、他の金融機関や商品と比較している人は5~7割だった。

 自分の年金については、「受け取れる金額」「被保険者としての種類」「年金受給の必要加入期間」を認識している人は4割程度となっている。

 株式、投資信託、外貨預金などを購入したことがあるのは2~3割で、そのうちの約2割は、それらの商品性を理解しないまま購入している。

 「外部の知見の適切な活用」については、トラブル発生時の相談窓口・制度を理解している人は全体の72.2%。金融トラブルを経験した人の32.1%は、現在でも相談窓口や制度を認識していないことが明らかになった。

 また、回答者のうち38.7%の人は、金融や経済に関する情報を月に1度も見ていない(前回:37.1%)。なお、金融商品選択時の情報源で最も多かったのは「ウェブサイト」で、以下「金融機関窓口での相談」「金融機関に置いてあるパンフレット」「テレビ・新聞雑誌等」「家族・友人との会話等」の順となっている。

 また、金融・経済情報をまったく見ない人の正誤問題の正答率は、全回答者の平均である56.6%より低い36.3%となっている。前回調査では、情報を見ない人の正答率は33.9%だった。

■正答率が高い人の特徴は? 

 金融知識などの属性別分析では、以下のような傾向が見られた。

(1) 年齢階層別には、年齢層が高いほど、正答率は高くなる傾向。
(2) 職業別には、学生の正答率は相対的に低い一方、教員、公務員(除く教員)の正答率は高い。
(3) 年収、金融資産額が高いほど、正答率は高くなる傾向。
(4) 金融・経済情報をみる頻度が高いほど、正答率は高くなる傾向。
(5) 金融取引の経験を積んだ人の方が、正答率は高い傾向。

 また、正答率が高い人の行動・考え方を見ると、以下のような特徴が見られた。

(1)金融・経済情報をみる頻度が高い
(2)家計管理がしっかりしている
(3)金融商品購入時に、他の商品との比較、ウェブサイトでの調査、金融機関等への相談を行い、商品性を理解したうえで購入している
(4)損失回避傾向や横並び意識は低めである
(5)資金計画をたてている
(6)緊急時の資金的備えを持っている

 以上のような特徴があるため、正答率が高い人は、(1)金融トラブルに遭いにくい、(2)消費者ローンの利用が少なめ、(3)借入れの負担感が低め、(4)経済的ショックへの耐性が強めの状況になっている。

■海外調査との比較

 今回の調査では、以下の2つの海外における調査結果との比較分析も行っている。

 米国調査との比較では、共通の正誤問題の正答率は、日本47%(前回:47%)に対して米国53%(同:57%)と、米国が日本を上回っている。「年齢が高くなるにつれ正答率が高まる」「金融教育を受けた人の正答率が平均よりも高い」という点については、日米とも共通している。

 「金融知識に自信がある人」(「とても高い」と「どちらかとかいえば高い」との合計)の割合は、米国は76%と日本の12%を大きく上回っている。ただし、海外との比較に当たっては、金融商品や金融サービス、税制、教育制度等の面で事情が異なるため、幅を持ってみる必要がある。

 一方、OECD(経済協力開発機構)調査との比較では、共通の正誤問題を比較すると、金融知識についての正答率は、英国、ドイツ、フランスは日本を上回っている。望ましい金融行動を選択した人の割合と、望ましい考え方を選択した人の割合についても、英国、ドイツ、フランスは日本を上回る結果となった。

■自分では「わかっている」と思っていても……

 生活設計や家計管理などの「金融教育」を受けたことがあると認識している人は、正答率および望ましい金融行動(資金運用、借入れ、生保加入時に他の金融機関や商品と比較)をとる人の割合とも高い。

 学生・若年社会人の正答率は相対的に低く、望ましい金融行動をとる人の割合も低くなっている。一方、高齢者は、若年社会人よりも正答率は高いものの、望ましい金融行動をとる人の割合は必ずしも高くない。また、金融知識に関する自己評価は、若年層において客観的評価とのギャップが大きくなっている。

■「教育費」の資金計画は30代の過半数が策定

 定年退職後の生活費については、20代で46.5%、30代で62.8%、50代で79.7%が「意識している」と回答。定年退職後の生活費を意識している人に、その「必要額」の認識の有無を聞くと、20代では26.6%、30代では31.3%、50代では51.1%が認識していると回答している。また、「資金計画の策定」の有無を聞いたところ、50代では34.6%、より若い年代は、2割前後となっている。

 一方、教育費については、必要額は、20代では41.6%、30代では52.1%の人が認識し、資金計画については20代で29.7%、30代で50.4%が策定している。

■高い「損失回避傾向」

 この調査では、行動経済学的な視点からも分析を行っている。期待収益率+5%の投資(以下の図表を参照)に対して、77.3%(前回:78.6%)の人が「投資しない」と回答しており、損失回避傾向は総じて強かった。ちなみに、年代を問わず、女性の方が男性より損失回避傾向は高くなっている。また、損失回避傾向が強い人を見ると、株・投資信託・外貨預金などへの投資を控える人が多くなっている。

 近視眼的行動バイアスは、若干男性の方が強い傾向が見られた。横並び行動バイアスは、他のバイアスよりも総じて低くなっている。また、この2つの行動バイアスが強い人は、金融トラブルが多く発生しており、借り過ぎと感じている人が多いことが明らかになった。

【調査概要】
金融リテラシー調査は、金融広報中央委員会が、18歳以上の個人の金融リテラシー(お金の知識・判断力)の現状把握を目的として行う大規模調査。今回の調査は、金融広報中央委員会としては、2016年調査に続く2回目の調査となる。

調査期間は、2019年3月1日~3月20日。調査は、日本の人口構成とほぼ同一の割合で収集した18~79歳の個人25,000人を対象に、インターネットによるアンケート調査として行われた。

設問は、「金融リテラシー・マップ」の8分野に基づき、「金融知識・判断力」に関する正誤問題と「行動特性・考え方等」といった金融リテラシーにかかる基本53 問、およびアドホック設問5問で構成される。基本53問の約半数の設問は、米国FINRA(金融業界監督機構)やOECD/INFEなど海外機関による同種調査と比較可能な内容となっている。

 調査結果の継続性を確保するため、基本53問は2016年調査と共通。アドホック設問5問は「成年年齢引き下げ」「暗号資産」「キャッシュレス決済」にかかる設問としている。

最終更新:7/10(水) 9:00
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