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親会社の意向なので開発中止します。もちろんお金も払いません(IT訴訟解説)

7/10(水) 7:00配信

@IT

ベンダー勝訴、だが……

 判決文の続きを見てみよう。

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東京地方裁判所 平成19年11月30日判決から(つづき)

ベンダーとしては、基本設計フェーズ1の作業終了後である(平成16年)8月には、主にユーザーの担当者などとの打ち合わせなどを通じ、ユーザーにより基本設計フェーズ2についてもそれまでの工程と同様の形で発注行為がなされるものとの強い信頼を有するに至っていたと認められるから、ベンダーとの間で本件基本契約および個別契約を締結して本件プロジェクトを基本設計フェーズ1まで進めてきたユーザーとしては、そのような打ち合わせなどの過程に照らし、信義則上、ベンダーに対し、そのような信頼を裏切って損害を被らせないように配慮すべき義務を負っていたというべきである。

にもかかわらず、ユーザーは、現場責任者において平成16年8月の時点で基本設計フェーズ2の開始を了承し、その後同年10月下旬に本件プロジェクトが凍結となるまで、ベンダーが上記作業を行っていることを認識しながら、これらの作業について注文書が発行されない可能性の有無やその場合にベンダーが負うリスクについて言及することなく、むしろユーザーの現場担当者がベンダーに協力して作業を進めるのを漫然と容認していたのであって、そのようなユーザーの対応は、上記のような信頼を抱いていたベンダーとの関係において、上記信義則上の義務に違反したものと認めるのが相当である。
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 裁判所はベンダーの主張を認め、ユーザーに支払いを命じた。

 ITベンダーでシステム開発に携わってきた私から見ると、至極まっとうな判決だと感じる。いくら正式な書面がなくても、現場で次のフェーズを期待させる「言動」がなされ、実際、ベンダーが作業をしているのを「認容」、つまり作業をしていることを知りながら、これを「黙認」していたのであれば、突然のプロジェクトの中止はユーザーの信義則違反であり、損害賠償の対象となる。

 裁判所における他の判決を見ても、この「作業をしているのを知りながら、これを黙認している」というユーザーの行動は、事実上の発注と捉えられる可能性が高い。「これを突然中止すれば信義則違反となる」という考え方は、珍しくなくなっている。ユーザー企業の方にはぜひ気を付けていただきたいポイントだ。

 しかし、判決がベンダーの一方的な勝訴だったかといえば、そうではなかった。

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最終更新:7/10(水) 7:00
@IT

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