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【舛添要一の僭越ですが】 無知なトランプだから言えた「日米同盟破棄」 この衝撃を戦略に生かせ

7/10(水) 12:33配信

ニュースソクラ

破棄なら他国との同盟か核武装か

 6月28日から大阪でG20首脳会議が開かれるが、問題は山積している。本来対象とすべきは経済問題であるが、米中貿易摩擦は世界経済を冷え込ましており、アメリカとイランの対立は中東地域の緊張を高め原油高を通じて世界経済に悪影響を及ぼしている。

 そのような中で、24日、アメリカの通信社ブルームバーグは、トランプ大統領が側近との会話で日米安保廃棄に言及したと伝えた。具体的には、「日本が攻撃された場合はアメリカが支援するが、アメリカが攻撃されたときには日本の援助が義務づけられていないので、あまりにも一方的で不公平だ」と述べたという。

 さらに、沖縄の米軍基地の一部返還については、たとえば普天間基地の土地は、約100億ドル(約1兆7000億円)の価値があると述べ、金銭補償を日本に求める意向だという。

 同じ日に、ツイッターで、トランプ大統領は、各国がホルムズ海峡を通航する自国の船舶は自分で守るべきだと主張している。原油のホルムズ海峡依存率は中国が91%、日本が62%という数字をあげて、「なぜアメリカが代償なしに他国のために輸送路を守っているのか」と不満をぶちまけている。

 これは、13日に、安倍首相がテヘランを訪問中に、日本などのタンカー2隻がオマーン湾で攻撃を受けたことを念頭に置いた発言であり、アメリカはイランが犯人だと名指しで批判している。中国がアメリカの主張に賛成しないのは当然であるが、同盟国の日本までそうであることにトランプは納得がいかず、日米安保破棄論を口に出したものと思われる。

 トランプ政権はアメリカ第一主義を貫いており、それが端的に表れたのが貿易における保護主義である。安全保障についても、NATO(北大西洋条約機構)メンバーなどの同盟国に対して応分の負担を求めている。

 20日には、アメリカの無人偵察機がイランによって撃墜されたが、軍事的に報復すると150人の米兵の死者が出るとして、次期大統領選挙での再選しか念頭にないトランプは実行を中止した。米兵の犠牲は選挙に不利に働くからである。同盟国に対する安全保障が、人的にも財政的にもアメリカにとっては重すぎるというのがトランプの本音である。

 また、安全保障でアメリカに依存しながら、通商では対米貿易黒字をため込むことも許しがたいと考えている。これが、貿易と防衛のリンケージである。

 このようなトランプの主張は、ある意味で当然であり、これまで、歴代の日米政権が臭いものに蓋をするように無視してきた議論である。

 日米安保の片務性が指摘されるが、日本がアメリカに基地を提供していることや米軍駐留経費を負担していることなどで十分に双務的になっているというのが、日本側の主張である。アメリカにしても、双務性を強調するあまり、日本が軍拡をしてアメリカの軍事的脅威になるのは困るという発想である。

 これは、第二次大戦直後の考え方で、米ソ冷戦下で、アメリカは、旧敵国の日本、ドイツ、イタリアを西側同盟の一員として再軍備させたが、常に念頭にあったのは、日独伊枢軸国家を封じ込めることであった。そのような歴史に無知なトランプだからこそ日米安保破棄を唱えることができたのであるが、70年以上戦争のない国で生きてきた日本人もまた、すっかり敗戦直後のことを忘れ、アメリカが日本を一方的に守ってくれるのは当然だと思っている。

 しかし、一つの同盟関係が永遠に続くことはない。それが理解できないのが日本人である。1902年の日英同盟は、アメリカの横やりで1921年に廃棄され、ワシントン条約体制に移行させられた。実は、これが太平洋戦争に帰結する国際関係の変化だったのである。

 日米安保条約を破棄する場合、同盟の相手を別の国に変えるか、核武装して独立独歩で自らの国を守るしかない。トランプ発言が、そのような頭の体操すらしない日本人の太平の眠りを覚ましてくれれば、日本のためにもなる。

舛添 要一 (国際政治学者)

最終更新:7/10(水) 12:33
ニュースソクラ

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