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朝比奈と福岡が新しい風~欧米に追い付け ”文武両道”

7/10(水) 7:05配信

VICTORY

背景の違い

欧米には、スポーツで多大な功績を挙げた選手たちに対しても、学業面の才能や意欲を引き出す社会的背景が備わっている。例えば米国には、大学スポーツを統括する全米大学体育協会(NCAA)が存在し、1100超の学校が加盟している。学生の本分でもある勉強優先の方針が明確化されており、たとえ有力選手でも成績不振だと試合に出場できないというほどだ。

対照的に、日本はとかく一点集中の傾向が強い。特定のスポーツだけにひたすら打ち込んで好結果を収める面はもちろんある。半面、一流選手を目指す過程で勉学を捨て、スポーツだけの世界に漬かってしまう環境になりがちだ。その昔、ある有名なプロスポーツ選手が大学時代、試験で答案用紙に名前を書いただけで単位がもらえたなどという逸話もあるほどで、教育システムがその流れを助長してきた面は否定できない。近年、不祥事が目立つ日本のスポーツ界。コンプライアンス(法令順守)の重要性がこれまで以上に求められており、その際にスポーツだけの世界に閉じこもる弊害が指摘されている。

重なる姿

そうした風潮に一石を投じるような動きがあった。今年3月、NCAAの日本版として「大学スポーツ協会(UNIVAS=ユニバス)」が発足した。ホームページをのぞくと、事業内容のトップ項目で「学びの環境を充実させます」と宣言し、次のように言及している。「学生の皆さんが競技力向上に邁進しながら、学生の本分たる学業にもしっかりと注力できるような環境を整えていきます。入学前からの教育推奨プログラムを導入したり、各競技の大会日程が一覧できるカレンダーの策定や、学業基準の導入可能性を検討するための実証事業などを行っていきます」。文言からは並々ならぬ意欲が伝わってくる。

ユニバスの実効性は未知数だが、令和改元と軌を一にして、これまでの状況を見直す時期に来ているのではないか。そういえば陸上の1マイル(約1600メートル)走で1954年5月、史上初めて4分の壁を打ち破った伝説的な選手、ロジャー・バニスター(英国)はオックスフォード大の医学部生で、その後は医学の世界に生きた。当時は人類が4分を切るのは無理と考えられていただけに、世界的な偉業との称賛を受けた。バニスターの後、4分を切るランナーが次々と出現したように、一人が壁を突破したら心理的にも後進に好影響を与えた。はなから不可能だと諦めず、可能性や夢を追う素晴らしさ―。福岡と朝比奈の姿が少し重なって見える。

高村收

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最終更新:7/10(水) 7:05
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