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高度化する“監視”の目 「顔認証」が叩かれるワケ

7/11(木) 8:00配信

ITmedia ビジネスオンライン

 知らぬ間にテクノロジーが飛躍的に進化していることに、ふと気が付くことがある。

 筆者の場合は、タッチスクリーンだった。反応が鈍く感度も悪いというイメージだったタッチスクリーンは、気が付けばスマートフォンで実装され、初めてiPhoneで使った際にはそれまでのタッチスクリーンのクオリティーを完全に覆すもので大変驚いた記憶がある。

【羽田空港に設置された「顔認証ゲート」】

 おそらく人それぞれ、そんな瞬間を経験したことがあるだろう。そして最近、また似たような感覚になっているテクノロジーがある。いつの間にかとんでもなく進化していて、欧米のニュースなどで頻繁に目にするようになっている。

 「顔認証」技術である。

 ただこの顔認証が今、国外でいろいろと物議を醸している。特に話題になっているのが、7月7日に米ワシントンポスト紙が報じたニュースだ。同記事によれば、FBI(米連邦捜査局)が捜査の顔認証に使うために、運転免許証のデータベースにある顔写真を無断で使い、スクリーングしていたことが明らかにされた。しかも犯罪を起こしたことがないような運転免許保持者の写真も、本人に何も知らせることなく、勝手に使っていたのである。このニュースでFBIは批判にさらされている。

 この例のように、これから5G(第5世代移動通信システム)などによって監視カメラなどIoTが爆発的に普及すると見られている中で、それに比例して顔認証もさらにクオリティーを高めながら、知らぬ間に広く使われることになる可能性がある。ワシントンポストの記事のようなケースを踏まえ、顔認証テクノロジーがなぜ議論になっているのか、また、私たちはこの技術の拡散をどう捉えるべきなのか探ってみたい。

中国に隠れるひき逃げ犯を見つけた、ファーウェイの技術

 最近、こんな興味深い話が米フォーリン・ポリシー誌に掲載された。タイトルは、「ビッグ・ブラザーがベオグラードに来た」というもの。「ビッグ・ブラザー」というのは、SF小説『1984』(ジョージ・オーウェル作)に登場する支配者のことで、「強権的な監視者」という意味がある。それが、セルビア共和国の首都ベオグラードにやってきたという。どういうことなのか。

 記事は、ベオグラードで子供のひき逃げ死亡事故を起こした犯人が、そのまま中国に逃亡したという話から始まる。セルビア当局は、中国に犯人の顔写真を送った。すると3日間で、中国国内の「Sシティー」に潜伏していたひき逃げ犯を発見した。世界最大の人口を誇る中国で、3日で人を見つけ出すテクノロジーは称賛に値するだろう。ちなみにこの「Sシティー」は上海のことではないかと思われるが、中国のどこの街なのかは明らかにされていない。

 そして実は、このテクノロジーは、世界的に東西を分断する企業として注目されている中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が提供している。

 ファーウェイは、通信機器やスマホだけでなく、顔認証の分野でも世界的に広く製品が導入されている。現在は非公開になっている同社の資料によれば、「ファーウェイは世界でも唯一、包括的な『セーフティ・シティー(安全な街)』ソリューションを提供するベンダーである」と書く。その上で、世界ですでに90の政府や地方政府のために230都市にこの「セーフティ・シティー」技術を導入していると喧伝(けんでん)している。当時の段階で、同社はロシアやマルタ、トルコ、ウクライナ、アゼルバイジャン、カザフスタンにもシステムを導入していた。

 誰よりもこのひき逃げ犯のケースを見て驚いたのは、セルビア当局だった。そこでベオグラード市は、ファーウェイのテクノロジーを導入することに決めた。というのも、セルビアでは刑事事件の49%以上が未解決になっており、警察当局の能力には限界があったからだ。20以上のギャング組織が存在し、警察を狙う犯罪も増加していた。そこでベオグラード中の800カ所に、顔認証や自動車のナンバープレートを識別する監視カメラが設置されることになった。

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最終更新:7/11(木) 8:00
ITmedia ビジネスオンライン

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