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【その壁を超えてゆけ】横浜隼人の3年生、最後の「背番号発表」に涙と感謝

7/11(木) 16:02配信

日刊スポーツ

夏が来た。高校野球地方大会が各地で続々開幕。激戦区・神奈川大会は181校が参加する。1チーム20人に対し、県内の野球部員数は約7000人。夏に背番号がある球児は半数程度だ。強豪・横浜隼人では部員121人のうち、3年生男子は44人。壁は高い。厳しい練習を乗り越えた最後に、現実が待つ。メンバーに選ばれるか、それとも。当落線上の機微に迫った。

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監督の一番つらい仕事

底抜けに明るく前向きな水谷哲也監督(54)が、珍しく肩を落とす。「一番つらい仕事。これだけは本当にしんどいよ…」。121人の名簿を眺め、しばし固まる。夏の背番号は20枚限り。6月19日。今年も決断の時が迫っていた。
背番号発表前の儀式がある。6月27日、横浜商大高との定期戦が行われた。今年で20年目。今や各地で夏前に行われる“引退試合”の先駆けとされる。今年は背番号の保証がない3年生30人が、夜の横浜スタジアムのフィールドに立った。
「10年20年とたてば、ベンチに入ったかどうかなんて小さなこと。高校時代に何をやってきたかが一番大事。でも『俺は野球をやってきたんだ』といえる環境を最後には作ってやりたい」。水谷監督にはそんな思いがある。徳島市立高から国士舘大と歩んだ。花形選手ではなかった。控え選手の心は痛いほど分かる。
最後の思い出を作る選手、奇跡にかけて懸命に自己PRする選手。輝く1人1人を、仲間が全力で応援する。全員が主役。メンバーから漏れた部員は、大会運営サポートなどに励む。サーティーフォー保土ケ谷球場でのグラウンド整備は、本家甲子園の阪神園芸にたとえて“隼人園芸”と呼ばれ、ファンから拍手喝采を浴びるまでになった。

何事にも一生懸命な姿が大人の心を揺さぶる。09年夏、初優勝した時もそうだった。夕方、学校での甲子園決定祝賀会。満面の笑みで優勝メンバー紹介を終えた水谷監督が最後に「後ろの3年生、起立!」とメンバー外の3年生たちを立たせた。しばしの沈黙の後、顔を上げた監督は男泣きしていた。「この子たちが、神奈川の高校野球を支えているんです…」。
背番号の有無で、教え子たちの価値は決まらない。十二分に分かっている。それでもつらい。ドアがノックされた。「全員そろいました。お願いします」と鈴木丈太主将が頭を下げる。涙の引退試合から4日後の7月1日午後4時、水谷監督は重い腰を上げた。

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最終更新:7/11(木) 17:11
日刊スポーツ

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