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虐待防ぐために児相強化を 現場は多忙、公約果たして

7/12(金) 11:23配信

熊本日日新聞

 虐待を受けた子どもが命を落とす深刻な事件が後を絶たない。参院選での各党公約にも「児童相談所(児相)の体制強化」など児童虐待撲滅への取り組みが並ぶ。ただ、全国の児相に寄せられる児童虐待の相談件数は年間13万件を超え、熊本の3児相が対応した件数も、毎年のように過去最多を更新。現場は日々多忙を極めている。

 「こんばんは。児童相談所です。何かお困りのことはありませんか」

 熊本市児童相談所の職員2人がアパートの一室の呼び鈴を押す。その家の児童が頻繁にけがをしているとの連絡が、学校を通じて寄せられたためだ。

 職員はけがの理由などを保護者に尋ね、学校にも聞き取りを実施。保護者がいない場で児童からも事情を聞き、虐待の有無や深刻さを見極めなければならない。子どもの一時保護に踏み切るかどうかの難しい判断を迫られるケースもある。

 「赤ちゃんの泣き声がひっきりなしに聞こえる」「骨折した子どもが受診した。虐待がうかがわれる」

 相談が来ると、児相で初期対応を担当する初動班は48時間以内に家庭と接触し、子どもの安否を確認する。市児相では週末、夜間を問わず当番を置いて緊急対応に当たる。

 「通報があった時点でどれだけ深刻な情報か見極めなければならない。命に関わる虐待対応は、最も神経と時間を使う仕事だ」と初動班の一人は話す。

 他県で起きた幼い命が失われた事件では、児相の対応と警察との連携が不十分だったことが指摘された。ただ、時間を問わず押し寄せる相談を、限られた人材で対応せざるを得ないことも事実だ。

 2018年度に県内3児相が受けた相談は1532件で、前年より2割以上増加。10年前の3倍超に達する。特に市児童相談所への相談は、前年より200件以上多い908件。本年度から初動班の実動部隊を1人増やして5人にしたが、3日に1件のペースで新たな相談が寄せられ、安否確認に追われる日々だ。

 田上和泉所長は「虐待への関心が高まっているからこそ相談も増える。虐待から子どもの命を守るために市民の認知が進んでいる、と捉えたい」と語る。初期対応で見守りが必要な家庭に継続的に児相が関わり、親子の関係改善にもつなげる重要性を強調する。

 先の国会では、親による子どもへの体罰を禁止し、児相の体制強化を盛り込んだ改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が成立。親のしつけの在り方に対しても、政治と社会がどう関わるべきか、試行錯誤が続く。

 児童福祉が専門の出川聖尚子[りさこ]熊本学園大教授は「深刻な虐待を増やさないためには、心配な親子の情報をいかに早い段階で行政が察知し、対応できるかどうかだ」と指摘。市町村とも連携して無認可保育所や学童保育など幅広い機関から情報を得る仕組みの必要性を訴える。(松本敦)

(2019年7月12日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

最終更新:7/12(金) 11:23
熊本日日新聞

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