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蚊が運ぶ危険な感染症 夏休みの海外旅行は対策を忘れずに

7/12(金) 12:10配信

Medical Note

蚊は感染症を媒介する昆虫であることをご存じでしょうか。日本でも1960年代ごろまでは日本脳炎が各地で発生していたので、多くの国民がそれを知っていました。しかし、今の日本で、蚊は「刺されるとかゆみをおこすだけの害虫」といったイメージが強いようです。その一方で、熱帯や亜熱帯の国々では、日本脳炎だけでなくマラリア、デング熱、黄熱など数多くの蚊媒介感染症が今も流行しています。今回は海外で流行している蚊媒介感染症と、その予防法についてご紹介します。【東京医科大学病院渡航者医療センター部長・濱田篤郎/メディカルノートNEWS & JOURNAL】

◇黄熱:野口英世の命を奪った熱帯病

黄熱はアフリカや南米の赤道周囲で流行している感染症で、原因となる「黄熱ウイルス」をシマカが媒介します。この病気の流行地域には、黄熱ワクチンの接種証明書(イエローカード)がないと入国できない国もあるので、旅行会社が入国を予定する人にワクチン接種を受けるよう指導しています。

旅行会社が旅客にワクチン接種を推奨することは、あまりありません。それというのも旅のイメージダウンにつながるからなのですが、黄熱に関しては、入国できなくなるので積極的に推奨しているのです。

東京医科大学病院では2016年から黄熱ワクチンの接種を行っています。このワクチンは従来、検疫所でのみ接種されていましたが、最近はそれ以外の病院でも接種が受けられるようになりました。詳細は厚生労働省検疫所のホームページ(https://www.forth.go.jp/useful/yellowfever.html)をご覧ください。

当院に黄熱ワクチンの接種で受診する人には次のような説明をします。まず、この病気が蚊に媒介されることをお話しします。ワクチンもあるけれど、蚊に刺されない注意が必要であることを説明します。そして、流行国では毎年20万人近い患者が発生していることや、発病すると肝臓や腎臓が障害され、死亡するケースも多いことをお伝えします。ワクチンは入国時に要求されるからというだけでなく、自分の健康を守るためにも必要なのです。

すると、「日本の旅行者で黄熱にかかった人はいますか?」という質問を受けることがあります。私の知る限り、黄熱にかかった日本からの渡航者は野口英世くらいです。彼は1928年に西アフリカの英領ゴールドコースト(現在のガーナ)で、この病気により亡くなりました。

それでは、旅行者は感染リスクが低いかというと、決してそうではありません。その証拠に、欧米諸国からは多くの旅行者がアフリカや南米を訪れていますが、毎年のように黄熱患者が発生し、死亡例も報告されています。2018年にはブラジルのリオ・デジャネイロ近郊で大流行があり、有名なカーニバルの最中だったため、10人以上の外国人旅行者が発病しました。こうした旅行者がワクチン接種を受けていれば、100%近く予防できたはずです。日本人でかかった人が少ないのは、アフリカ、南米に滞在する旅行者が少ないからにすぎません。

黄熱ワクチンの効果は10年間とされていましたが、最近の研究では1回接種すれば一生涯有効であることが明らかになっています。これに伴ってイエローカードの有効期限も、2016年からは無期限になりました。

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最終更新:7/12(金) 12:10
Medical Note

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