ここから本文です

TBSドラマ「ノーサイド・ゲーム」出演で注目を集める本物のラグビー選手

7/12(金) 18:02配信

ニュースソクラ

「ラグビー界の真のキャプテン」と呼ばれた廣瀬俊朗選手

 TBS日曜9時の社会人ラグビーを舞台にした連続ドラマ「ノーサイド・ゲーム」。ラグビー好きのわたしも初回(7月7日)を見た。

 9月20日のラグビーワールドカップの日本での開幕に合わせてのスタートで、ラグビーへの関心の高まりに便乗しようとの意図が見え見えのドラマ。人気作家の池井戸潤の書下ろし作品だ。

 ストーリーは、大泉洋が演じるエリートサラリーマンが本社から左遷された工場で、職務上ラグビー部のゼネラルマネージャー(GM)を任される。そして、部の再建に奮闘する、いつもの池井戸「節」満載のドラマである。

 主人公の心境の変化を感じさせるためだろう。第一話は主人公のラグビーへの興味のなさ、むしろ毛嫌いする様子を強調している。筋書きが読めてしまうだけでなく、ラグビーをわざとらしく貶めている描き方は、ラグビー好きにはしらける。

 だが、うれしい驚きがあった。仕事をしながら横目でチラチラ見ていたら、実際のラグビー選手が主要な役で登場しているではないか。それは廣瀬俊朗選手で、かつてジャパン(日本代表チーム)の主将も務めた名プレーヤーだ。

 第一話を見る限りでは、ラグビー部の主要選手としてタックルシーンなどにもでてくるが、キーパーソンとして、主人公をラグビーの面白さへ目覚めさせる役回りになりそう。また、長いセリフはないとはいえ、まるで素人感がなく、演じ切っているのにも感心した。

 廣瀬は日本代表チームにとってもキーパーソンだった。前回のワールドカップでは、ジャパンのメンバーに選ばれていたが、年齢的な問題もあって直前にキャプテンを外れ、ゲームに出ることもなかった。

 だが、南アフリカを破るなど予選敗退ながら3勝と過去最高の戦績を残した「影の立役者」のひとりとされる。ゲームでの控え選手にすら入れなかったが、チームに帯同し、対戦チームの分析や、チームの士気を高めるために貢献した。

 たとえば、関係者がエールを送るビデオを作り、南ア戦の前夜にチームメイトに見せたりした。こうした表の活動かりでなく、ベテランとしてチームメイトの心理状態を常に把握し、コントロールすることに意を尽くしていたとされる。影のキャプテンと呼ばれた。

 サッカーで例えるなら、2010年のワールドカップで出場機会はなかったが、チームに欠かせない存在と言われたキーパーの川口能活のような存在といったところだろうか。

 今回の代表合宿に呼ばれたメンバーをみると、前回の廣瀬にあたるベテランがいない。ワールドカップのような国を背負う重圧がある大会では、精神面の安定が見えない効果をもたらす。それだけに、「廣瀬のいない」チームを危惧する声もラグビー関係者からは聞こえてくる。

 廣瀬は単に選手としてだけでなく、ラグビー界にとってのリーダーの一人だといえる。大阪の北野高校、慶応大学、東芝でラグビーを続け、いつもキャプテンを務めた。前回のワールドカップでジャパンの監督を務めたエディ・ジョーンズに、「自分が経験した中で、ナンバーワンキャプテンだ」と言わしめた。

 いまの日本代表でキャプテンを務めるリーチ選手と同じ東芝のラグビー部に所属、そこでかつてキャプテンを務めた。そのころ、トップリーグ(トップチームの集まり)所属チームのキャプテンを集めたキャプテン会議を設立し、チーム横断的にラグビー界のための情報交換に努めた。

 また、選手の待遇改善などを求めるために2016年に作られた日本ラグビーフットボール選手会の発起人の一人にもなっている。

 ドラマは東芝ラグビー部がある東芝の府中工場でロケしている。東芝の3面もある練習場でも撮影されており、東芝が全面協力している。

 東芝は粉飾問題などが表面化し、部門の切り売りをせざる得ない経営危機が続いた。会社の球技、社技と言われたラグビー部は何度も日本一になった名門だが、一時廃部説も流れた。

 ドラマへの廣瀬の出演は、ラグビー部の存続を東芝経営陣が決めたことを意味するとみられ、ちょっとホッとしている。ドラマがワールドカップへの関心を高めてくれるのであれば、うれしい。

(敬称は略しました)

■土屋 直也(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設

最終更新:7/12(金) 18:42
ニュースソクラ

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

Yahoo!ニュースからのお知らせ