ここから本文です

児童虐待、法医学者が見抜く…親が否認しても「生体鑑定」がある

7/12(金) 12:10配信

読売新聞オンライン

 児童虐待が深刻化している。札幌市で先月、母親と交際相手の男が女児(2)を衰弱死させたとして、傷害と保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕された。警察は生前、体のあざを確認したが「虐待なし」と判断した。虐待の兆候は見つけにくいのか。死傷の原因を究明する専門家である法医学者は「適正に生体鑑定すれば、兆候を読み取り、虐待死をなくすことは可能だ」と話す。「生体鑑定」とはなにか。(編集委員 平石冬樹)

児相や警察などの依頼を受け、法医学者が鑑定

 法医学者は法律に関する医学的問題を扱う。犯罪に巻き込まれた疑いのある遺体を、警察などの嘱託により司法解剖し、原因を追究する仕事で知られる。日本の法医学は元々、遺体から学ぶことを基本にしてきたが、生きている人間を診断し、負傷原因を調べる生体鑑定も行っている。虐待の可能性がある小児の診断も、打撲や骨折の起因を調べることに精通する法医学者が適している。

 生体鑑定は、児童相談所(児相)や検察、警察などの依頼を受け、児童虐待のほか、高齢者虐待や家庭内暴力(DV)、一般の傷害事件などによるけがの法医学的調査も行い、事件捜査や被害の再発防止に役立てられている。国内の法医学者の多くが所属する日本法医学会の認定医は全国に143人いる(2019年4月1日現在)。

 虐待を受けた可能性のある子どもや赤ちゃんの生体鑑定は児相から依頼されるのが一般的だ。負傷した小児が病院に運ばれるケースでは、小児科などの臨床医は、骨折や頭蓋内出血から虐待を疑うと、児相に通報。児相では診断の正確を期すため、必要に応じて法医学者に鑑定を要請する。

直接診察だけでなく…写真でも

 法医学者は小児の身体的虐待やネグレクト(育児放棄)を調べるため直接診察するほか、受傷部分の写真やレントゲン写真を見て所見を示す。児相が親から子どもを保護するために裁判手続きを取る場合は、こうした所見が活用される。

 札幌市の虐待事件では、北海道警は女児が衰弱死する3週間前、母子と面会し、顔や肩、腕にあるあざを確認した。だが「転んだ」と言い張る母親の説明に矛盾はないと判断し、虐待を見逃した。今回のように近隣住民から「泣き声がする」と虐待を疑う通報があっても、警察だけで判断できないケースは少なくない。

 認定NPO法人「児童虐待防止協会」の津崎哲郎理事長は「大阪の児相に35年間勤務したが、子どもに虐待の痕跡が残っていても、大半の親は『なにもしていない』と否定する。客観的な医学的証拠を示せる法医学者が頼りだ」と話す。

1/2ページ

最終更新:7/12(金) 14:08
読売新聞オンライン

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事