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上半期邦画を盛り上げた『翔んで埼玉』ヒット理由を分析 “くだらない”が褒め言葉になる企画会議

7/13(土) 9:00配信

オリコン

■「Film makers(映画と人 これまで、そして、これから)」第10回 若松央樹プロデューサー&田口和也宣伝プロデューサー
 2019年上半期の邦画実写映画で、大きなトピックスとなったのが、『翔んで埼玉』の大ヒットではないだろうか。改めてヒット理由をフジテレビの若松央樹プロデューサーと、配給元である東映の田口和也宣伝プロデューサーに聞いた。

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■全体興収の約4分の1が埼玉県!

 2月22日に全国319スクリーンで公開を迎えると、オープニング興業で3億円を超える数字を叩き出し首位を獲得。その後も、数字を伸ばし続けロングラン上映されると、累計興収は37.5億円(6/30現在)を超える大ヒットとなった。特に作品の“ディスり”の対象となった埼玉県では、興行全体の約4分の1という数字を記録。「MOVIXさいたま」では1館だけで1億4000万円(6/30現在)という売り上げとなった。まさに驚きの数字だ。田口氏は「一番は作品の魅力」と強調したが、それでも「ご当地映画にならないように、全国に広めようと宣伝はしていましたが、結果的に埼玉県の方に支持していただけたことが、成功につながったと思います」と感謝を述べる。

 魔夜峰央の原作は、ある意味、グサグサくるようなシチュエーションで埼玉県をディスっているが、若松氏は「でも決して悪意はない。実写化するときも、原作のようにしっかり愛を持ちつつ、日和ることなく徹底的に突き抜けよう、遊べるところは遊び倒そう」という強い思いで臨んだという。「遊べるところは」の匙加減についても「いろいろ取材したり、埼玉県の人と飲んだりして、徹底的にリサーチしました」と若松氏は語る。
 
■キーワードは自虐

 いまの時代、どこに地雷があるかわからず、言葉ひとつ間違えれば大炎上してしまう危険性もある。田口氏も「非常にバランスが難しい。広告の文言ひとつでも言葉選びには時間を要しました。“ディスる”ということが差別的な意味や、ただの悪口になってしまったらダメ。どこまで笑ってもらえるか、自虐に持っていけるかがカギでした」とポイントを述べる。自虐という意味では「実写化決定の段階からずっと謝罪していました。映画化してごめんなさい、パンフレットにしてごめんなさいという感じに……」と笑う。確かに二階堂ふみとブラザートムが埼玉県庁に謝罪に行ったニュースは大きな反響を呼んだ。
 
 もうひとつの宣伝の特徴は、SNSやウェブでの展開だ。「一般的な広告はもちろんですが、SNSには結構注力しました。公式ツイッターでは、単に情報を発信するだけではなく、自虐を絡め、製作サイドが楽しんでしまおうというスタンスをとりました。その際も、トライしたことに対しての反応はしっかりとチェックし『ここまでなら大丈夫かな』という感じで少しずつ“ディスり”の幅を広げていきました」(田口氏)。

 丁寧な宣伝活動を展開するなか、ひとつターニングポイントとして田口氏があげたのが、2018年11月14日の「埼玉県民の日」に合わせたプロモーションだという。「その日に合わせてキャラクタービジュアルを一気に解禁し、SNSもスタートさせました。2019年1月28日に東京ドームシティホールで行われた完成披露試写会では、“埼玉スーパーシート”と呼ばれるゴザと藁が敷かれたパイプ椅子を用意し、招待するための募集告知をしました。ここでもかなり良い反応を見せてくれたので、このやり方で合っているんだという手ごたえがあったんです」(田口氏)。

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最終更新:7/13(土) 18:25
オリコン

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