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【漢字トリビア】「石」の成り立ち物語

7/14(日) 11:10配信

TOKYO FM+

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今日の漢字は「石(いし)」。「石碑」「石像」の「石(セキ)」とも読む漢字です。

「石」という字は、「がんだれ(厂)」の下に「口」と書きます。
「がんだれ」は山の崖の形を描いた象形文字。
険しい断崖は人が近寄りがたく、そこは、神の住まう聖なる場所であると考えられていました。
その下に記された「口」という字は、白川静博士の解釈によれば、神への祈りの言葉を納める器を意味するといいます。

つまり「石」とはもともと、神の霊が宿る場所を示した漢字。
のちに、信仰の対象としてだけでなく、「いし・いわ」そのものを意味するようになりました。

行ったり来たり、浜辺を転がる小さな石たち。
水に濡れて輝くその姿は、どれも神秘的な美しさを放っています。
誰もいない海で、お気に入りのひとつを選び出すいにしえの人。
暗闇でも光りだしそうな明るい黄色のその石は、手のひらにしっとりと寄り添って心を落ち着けてくれる、小さなお守りです。
それは、活き活きとした地球の記憶を宿しています。

地球の中のマグマが地表に飛び出し、冷え固まったものが岩石になる。
それは風雨にさらされるうち、やがて砕けて石になる。
さらに川や海の流れに磨かれて、この海へたどり着いたのです。
小さな石ころの、気が遠くなるほど長い旅。
その石に宿る神さまと一緒に、壮大な冒険物語に耳を傾けてみてください。

今日の漢字は「石」、「宝石」「隕石」の「石(セキ)」。
険しい崖のそばに、神へ捧げる祈りの言葉を入れる器を置いた様子で、神が宿る場所を意味する漢字が「石」。
後に宗教的な意味が薄れ、「いし・いわ」のことを示すようになったといいます。

哲学者の矢内原伊作(やないはら・いさく)は、『石との対話』というエッセイの中でこう記しています。
―われわれは生命のない石に生命以上に力強いなにものかを感じるのだ。石は表情をもち、雄弁に語り、叫び、歌う。―

それもそのはず、石は永遠の旅人です。
海に流れ着いた石は砂となって海底へと沈み土に還り、長い時を経て地上へ飛び出し、いつか再び、あなたの足元にたどりつきます。
石とあなたの、奇跡の出会い。
そっと触れれば凍える気持ちをゆっくり温め、いきり立つ気持ちを鎮めてくれるのです。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……。
ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献 
『常用字解(第二版)』(白川静/平凡社)
『矢内原伊作の本(1) 顔について』(矢内原伊作/みすず書房)
『石はきれい、石は不思議 津軽石の旅』(株式会社LIXILギャラリー企画)
(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」7月13日(土)放送分より)

最終更新:7/14(日) 11:10
TOKYO FM+

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