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市場を切り開く「自信のない確信」があった 3000個のラジカセを収集した男

7/14(日) 13:50配信

DANRO

もはや懐かしさを感じさせる言葉になった「ラジカセ」。東京・足立区に暮らす松崎順一さん(59)は、そんなラジカセをはじめとするオーディオ機器を集めています。「集める作業が楽しくて、綺麗に飾ろうとか自慢したいという気持ちはない」という松崎さんは、「コレクター」ではなく「蒐集(しゅうしゅう)家」と名乗っています。(土井大輔)

【画像】ラジカセを集める松崎さんの作業場

子供のころ、連れられて行った大阪万博(1970年)で「未来の世界」に触れ、学生時代はラジオや無線にハマった松崎さん。デザイン会社で働くかたわら、家電を集めました。

42歳のとき会社を辞めて「蒐集家」となった松崎さんのもとには現在、TVドラマやCM、ファッションブランド店のディスプレイに、松崎さんが集めた家電を使いたいという依頼が舞い込んでいるそうです。家電を集めることそれ自体が楽しいという松崎さんに、話を聞きました。

コレクターではなく”蒐集家”

ーー松崎さんはどういった家電を集めているのですか?

松崎:ここには約3000アイテムあるんですが、僕が好きなのは1970年代後半から1980年代前半のものが多いですね。特に1975年~85年は、僕のなかで「家電の黄金期」と勝手に呼んでいるんです。

ーー「ウォークマン」が出たあたりでしょうか。

松崎:「ウォークマン」は1979年発売なので、その真ん中ですね。家電メーカーの勢いがよくて、いろんな製品が生まれた。もっとも華やいだ時期だったと思うんです。1970年代は高度成長期の終わりくらいで、まだ経済もよくて。それが下火になったころ、80年代後半のバブルに向かって、また違う景気の良さになって。バブル景気に入ると、家電は僕が考える方向と違う方向にいっちゃうんで、そこはあまり好きじゃないんですけども。

ーーその時代のものでは、他にどんなものがありますか?

松崎:ソニーのラジカセ「ジルバップ」なんかがそうですね。1978年くらいですかね。

ーーアメリカのいかつい人が肩にかついでる感じのラジカセですね。

松崎:そうです。当時、アメリカでヒップホップの人が抱えてたラジカセは、ほとんどが日本製なんです。Run-DMCとかLL・クール・Jとか、オールドスクール・ヒップホップのアルバムジャケットにラジカセが写っていることがありますが、だいたい日本製です。海外のカルチャーにも影響を与えたという意味でも、日本の家電ってすごかったのかなって。「すごかった」って、過去形ですけど(笑)

ーーオーディオ機器に囲まれながら「コレクターではない」というのは、なぜですか?

松崎:僕の場合、集めるまでが活動範囲なんです。綺麗に飾ろうとかコンプリートしようとかいう気持ちはなくて。集めに行ったところに、たまたま気に入るものがあったら、それを持ち帰ってくるだけ。その行程が楽しいんです。

釣りの「キャッチ&リリース」みたいな感じですね。釣りをする方って、コレクションっていう概念がないですよね。それと一緒で、いろんな魚がかかったときに、これは持って帰る、これは海に返すと決める。

ーーだから、集めたものを売ることにも躊躇がない。

松崎:そう。欲しい人がいれば売っちゃうんです。昔のプロダクト、工業製品に対して、過去にこういうものがあったとか、何年にこのメーカーでこういうものが発売されたとか、そこから現代に通じるヒントみたいなものが得られればいいというのが僕の活動なんです。

ーー売る場合は、修理して使えるようにしているとか。

松崎:昔の工業製品が動かないままっていうのは、あまりに面白くなくて。どうせだったら直して、使いたい方に使ってほしいという思いがあって。もう一度使える状態に命を吹き込むみたいなところも僕のポリシーというか使命だと思っているんです。

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最終更新:7/14(日) 18:17
DANRO

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