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日本との競争に敗れ衰退、「東洋の真珠」復活を目指す香港

7/14(日) 15:00配信

AFPBB News

(c)AFPBB News

【7月14日 AFP】香港東部沖のいかだの上で、元投資銀行家ヤン・ワタット(Yan Wa-tat)さん(58)が2000個ほどの貝から根気強くフジツボをこすり落としていく。骨の折れる作業だが、香港の真珠養殖を復活させるという使命を実現するには、この作業が不可欠だ。

「この種(の貝)は香港にかつて豊富にあった」とヤンさん。香港の真珠採取の歴史は1000年以上に及ぶが、乱獲により今ではわずかしか残っていないと嘆く。

 ヤンさんは、香港で真珠養殖に取り組んでおり、自身の研究が刺激になり、香港の真珠業界が活性化することを期待している。

 真珠養殖は根気のいる仕事だ。真珠ができるまで約1年かかり、しかも数週間ごとにアコヤガイからフジツボを落とさなければいけない。かつてこの辺りでは誰もがこのような作業があることを知っていた。そもそも、香港を流れる川は真珠の川を意味する「珠江(Pearl River)」と呼ばれている。

 香港はかつて「東洋の真珠」と呼ばれ、現在も世界最大の真珠貿易国だ。国連(UN)の統計によると、2016年の輸出額は18億ドル(約1940億円)を上回っている。

 だが、取引されている真珠は地元のものではない。香港では乱獲と市場原理によって、真珠養殖はかなり前から壊滅状況にある。真珠養殖は比較的近代の産業で、香港では1950年代に養殖企業数社が出てきた。だが、市場を支配する日本企業との競争に敗れ、最後まで残っていた真珠養殖場は1981年に閉鎖された。

 ヤンさんは、数人の漁師と協力し、最先端の技術と伝統知識を融合させた小規模家内工業によって現状を変えようとしている。

 ヤンさんは50代半ばまで、香港の投資銀行で働いていた。だが、「もっと面白くて、社会にとって生産的なこと」を始めようと決心し、香港の真珠養殖業の復活を目指し、香港大学(University of Hong Kong)の生物科学科の博士課程に入学した。

 ヤンさんは現在、RFID(超小型無線 IC チップを用いた自動識別技術)を真珠核に挿入する方法を研究している。真珠はこの核の周りに形成されるが、詳しいメカニズムは極秘とされている。

 RFIDを使うと、殻をスキャンするだけで真珠が形成されているかどうかが分かるようになる。また、製造番号によって正確な産地を知ることができ、偽物や低品質品など詐欺の危険性を減らすことも可能だという。

 ヤンさんの取り組みに触発された地元の漁師らは3月、真珠を収穫した。これは香港では何年も見られなかった光景だ。西貢(Sai Kung)地区で真珠養殖のいかだを所有するレオン・カムミン(Leung Kam-ming)さんは「香港の真珠養殖は有望だ」と語る。「真珠養殖を始めたのは副収入を得るためだ」

 レオンさんは約3万個のアコヤガイを養殖しており、真珠1粒当たり100香港ドル(約1380円)で売れると話す。また、宝飾品の基準に満たない真珠は、貝とともに中国伝統薬や化粧品用の真珠パウダーとして売ることができるという。

 映像前半は、ヤンさんが手掛ける養殖真珠。後半は、昨年5月にオランダで開催されたオークションに展示された真珠。2018年5月、2019年1月、3月に撮影。(c)AFPBB News

最終更新:7/14(日) 15:00
AFPBB News

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