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岩石崩落30年、隠れた観音に光を 15人死亡新トンネル内に移転

7/15(月) 18:10配信

福井新聞ONLINE

 1989年7月に福井県越前町玉川の国道305号で15人が死亡した岩石崩落事故から7月16日で30年。廃道となった現場周辺区間には、かつて観光名所の「玉川洞窟観音」があった。観音像は事故後に新設された玉川トンネル南口近くに移転し、現在は昔ほど知られた存在ではない。住民のよりどころでもある観音を広くPRしようと、地元旅館業者でつくる玉川観光組合は7月17、18の両日、初の「玉川観音祭」を観音前広場で開く。以前のにぎわいを呼ぼうと意気込んでいる。

【写真】土砂が積もる事故発生現場

 「30年たっても事故の一部始終を思い出せる」と話すのは、同組合の孫谷正美さん(74)。当時、発生を目撃し、救助に当たった。「巨大な岩がバタンと倒れてロックシェッドを直撃した。思い出すのはつらいことだ」

 事故の前、旧観音は現場北側の天然の岩洞の中に祭られ、海上安全の守護仏として大勢の参拝があった。岩洞の前から越前海岸の絶景を眺められたこともあり、全国から観光客が訪れる名所だったという。

 しかし事故後、現場や旧観音前を含む国道の玉川~血ケ平の約1キロの区間は立ち入り禁止となり、後に廃道となった。内陸側に新たに玉川トンネルが設けられたのを受け、観音は94年、トンネル南口近くに建設した人工洞穴内に移転された。

 事故現場は今も立ち入り禁止。巨岩で押しつぶされたロックシェッドを覆うように草むらが茂り、人を寄せ付けない。岩洞の中は、過去に観音があったことを記す石碑がぽつんと立つのみだ。同組合の岩本良信会長(62)は「岩洞の周辺の美しい景色が事故で人目につかなくなり、知る人も減ったのが寂しい」と話す。

 旧観音跡の存在を語り継ぐとともに、現観音へ観光客を呼び込もう―。同組合は昨年から計画を練り、7月17、18日に行われてきた例祭に併せ、一般客にも来てもらえる玉川観音祭を開くことにした。

 玉川港で朝採ったマイカやサザエを目の前で焼き、販売する。500円でサザエを手づかみできた分だけ持ち帰れる企画もある。観音を身近に感じてもらおうと、祭り限定の御朱印も頒布する。岩本会長は「集落に息づく洞窟観音の“魂”を少しでも感じてほしい」と来場を呼び掛けている。

 祭りは両日とも午前10時~午後2時。小雨決行。問い合わせは同組合=電話0778(37)0194。

 越前町玉川の岩石崩落事故 1989年7月16日午後3時20分ごろ、越前町玉川の国道305号で高さ約25メートル、幅約30メートル、重さ2千トン以上の大規模な岩石が崩落。落石から車を守る鉄筋コンクリート製のロックシェッドを突き破り、慰安旅行で越前海岸を訪れていた滋賀県彦根市のマイクロバスを真上から押しつぶした。乗っていた食料品店主ら15人全員が死亡。道路を管理する県の責任に関し天災か人災かが焦点となったが、県が設置した調査委員会は「予測は不可能」と結論づけ自然災害との見解を示した。91年、県と遺族が和解し総額5億5700万円余りを支払った。

福井新聞社

最終更新:7/16(火) 12:09
福井新聞ONLINE

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