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[週刊ハンギョレ21]日本の経済報復、100年前と似た構造

7/15(月) 11:59配信

ハンギョレ新聞

日本の古めかしいイデオロギー攻勢と先端材料輸出規制、 朝鮮半島をスケープゴートと見なし 自国の植民地的地位から抜け出そうとする蠢き

 韓国最高裁(大法院)の日帝徴用工賠償判決を口実に、安倍晋三政権が結局韓国に対する半導体の先端材料の輸出規制という強硬姿勢を取った理由は何だろうか?徴用工判決に対する報復措置ではないとして前面に掲げる制裁理由からしてこの上なく曖昧だったが、不意に「安保」やら北への不法搬出やら、さらにサリン毒ガス製造の可能性まで根も葉もない“疑惑”を投じた日本政府与党の首脳部は、いったい何を考えているのだろうか?

 「親北朝鮮」「北朝鮮核」などに対し条件反射的に敵対感を表出してきた日本で、「安保」や北への不法搬出疑惑を騒ぎ立てることは、自民党内からも漏れ出てくる「制裁理由」に対する懐疑的見解と異議提議を一気に吹き飛ばす会心の一撃になりうると判断したのだろうか。それは、文在寅(ムン・ジェイン)政府を親北朝鮮・従北左派政権と罵倒してきた韓国内の一部勢力と組む上でも役立つだろう。安倍政権の攻勢のナショナリズム(「日本会議」の右派国粋主義)的本性を覆い隠すのにも有利だろう。

本格的な韓国たたきの序幕?

 文在寅政府の登場自体を「親北左派」という古めかしいイデオロギー攻勢で罵倒し、極度に警戒した安倍政権は、12・28「慰安婦」合意破棄、韓国最高裁(大法院)の徴用工賠償判決、そして海上自衛隊哨戒機レーダー照準論争、福島原子力発電所事故に関連した日本産水産物の輸入禁止についての世界貿易機関(WTO)の審議敗訴などを経て、韓国を無礼・極悪非道な国に追い立て、韓国たたきの強度を高めてきた。今回の制裁はその延長線上にある。

 1965年の韓日協定の規定を根拠に、両国間または3国間の仲裁委員会の設置を要求し、国際司法裁判所提訴の可能性まで挙論して制裁カードをもてあそんでいた時でも、実際に踏み切ることは難しいだろうとの観測が多かった。仲裁委や国際司法裁判所は、当事国が応じなければそれだけで、強制力も他の制裁装置もない。例え韓国が日本側の要求を受け入れて、そこで議論しても勝敗は不透明だ。その上、そうした議論は第2次世界大戦後に日本がきちんと処理せずに覆い隠してしまった過去の戦争犯罪を掘り起こし、世界に暴くかたちになるため、日本にとっては得より損が大きくなるかもしれないためだ。

 それにもかかわらず取り出した制裁カードは、ことによるとそうした計算までして、長期的に準備してきた本格的な韓国たたきの序幕かもしれない。安倍式宣戦布告で火ぶたを切った21世紀の韓日“貿易戦争”は、機先を制せられた韓国がひとまず打撃を受けるだろうが、とはいえ日本に反射利益や明るい将来を保証するものではない。日本にもリスクが大きく、致命打にもなりうる。水平的国際分業で密接につながる半導体供給体制において、日本の制裁はメモリー分野で独占的地位を持つ韓国の生産に支障をきたし、それは連鎖反応を呼びグローバル・サプライチェーンを梗塞させ、韓国産の半導体を使う日本企業にも打撃を加えるだろう。そして、日本が政治的意図でいつでも経済的急所を狙って入ってきかねないという事実が確認された以上、代案を探さざるをえない韓国の“脱日本化”が本格化する可能性がある。最悪の場合、それは近代以降1世紀を超えて享受してきた東アジアにおける日本の優越的地位の喪失を加速させる信号弾になり得る。したがって、安倍政権が大声を上げたように果たして韓国制裁を最後まで貫けるか、懐疑的な見解もある。

 とにかく、日本がいつも数枚下と見なしてきた隣の分断国に対して、ここまで真顔になって先に戦いを挑んできたこと自体が非常に異例だ。少なくとも第2次大戦以後、日本がうまく行っていた時期にはなかったことだ。これは端的に言えば、依然として見下してはいるものの、たやすくはいかない対等なライバルになった韓国に“敵対”しなければならないほど韓国の力が大きくなったか、あるいは日本の力が相対的に弱くなったためかもしれない。また、日本の支配勢力が自らコーナーに追い込まれているという危機意識、ないしは自己診断の結果でもありうる。

自民党支持が圧倒的なのに、無理をする理由

 安倍政権はなぜこの危険な戦いをこれほど見苦しく挑発したのだろうか?第一にねらうのは、なんと言っても7月21日に予定された参議院選挙での圧勝だろう。想定できる第二の理由は、6年余りの「アベノミクス」でも立ち上がれない「失われた30年」の日本経済に対する危機感。第三は推測だが、日本の保守右派勢力が嫌悪し蔑視する一方で恐れている韓国内「左派(進歩)勢力」の執権を阻んで交替させる「レジーム・チェンジ」だ。そして、これらすべての要素と連動しているが、米中貿易戦争、南・北・米板門店首脳会談などで表出された東アジア情勢の急変の中での日本疎外と、新たな対応戦略の摸索だ。

 今、自民党に対する支持が圧倒的という状況で、参議院選挙に韓国たたきを選挙戦略として動員する必要はないという見解もあるが、そうではない。衆議院に比べ、首相指名や予算審議で相対的に権限が弱いが、参議院が与小野大になれば、日本の政治は与野党の衝突でよじれたり混乱に陥り無気力になる。政府与党に対する評価と審判の性格が強い参議院選挙で惨敗すれば、概して首相が退陣し、時には政権交替まで起きる。

 今は自民党支持率が高いとしても、有権者全体に対する自民党の支持率は20~30%に過ぎない。それでも自民党の議席数が圧倒的に多いのは、小選挙区制と野党の分裂、代案不在と高い割合の無党派層(支持政党なし)などの要素のためだ。風がどのように吹くかにより、自民党がいつでも敗北することはありうる。

 1989年、竹下登を継承した宇野宗佑首相(自民党)が女性スキャンダルなどによって、土井たか子・社会党党首の“マドンナ旋風”が吹いた年の参議院選挙で惨敗して退陣しており、その後、自民党政権はかろうじて命脈を維持したが、1993年に細川護煕連立政府に政権を渡した。9年後の1998年にも、消費税を上げ景気低迷を招いた橋本龍太郎首相がその年の参議院選挙で惨敗した後に退いた。さらに9年後の2007年7月の参議院選挙で、公的年金納付者記録が電算処理の過程で大挙脱落した事件などで支持率が下落した安倍晋三第1次執権内閣が崩れ、結局2年後に民主党に政権が交替させられた。

 7月の参議院選挙で敗北すれば、改憲は水泡に帰し、頑丈に見えた安倍第2次執権も揺らぎかねない。1年で退かなければならなかった1次執権の時のように、悪材料が多い。偶然にも今回も公的年金問題が引っかかっている。安倍政権は、公的年金とさえ聞けば、老後は心配する必要がないと大声を張り上げたが、公的年金に加入しても1人当たりの老後資金が30年間基準で2千万円不足するという政府機関の調査結果が出て、不安と怒りを呼んだ。そのうえ、その資料を隠して露見すると、逆に怒って誤っていると主張し、政府公式文書の採択を拒否するという悪手まで放った。森友・加計学園など安倍首相個人と関連する私立学園への土地払い下げなどの不正が発覚し、それを隠すために財務省が関連する政府文書を好き勝手に改ざんした事実が暴かれ、そのために関連公務員が自殺までした。役人たちが安倍首相や麻生太郎副首相(財務相)によく見られようと地域の事業者に特典を与える“忖度”、女性蔑視発言なども相次いだ。

憲法改定議席の確保と長期化したデフレ

 安倍の中核の政治議題の一つである憲法改定を発議するには、衆・参議院の議席の3分の2以上を確保しなければならない。全体245議席の半分を入れ替える参議院選挙で、執権連立与党が過半数を占めるには、今回の選挙で交替される改選議席(123議席)のうち最低でも53議席を得なければならず、3分の2ラインを確保するには85席を獲得しなければならない。自民党支持率が高いというが、多くの悪材料で思いがけない反転の可能性もある。3分の2の占有は容易ではないだろうという展望が出ている。自民党が圧勝に失敗すれば、安倍の政治議題が力を失い、執権基盤も揺らぎかねない。歴史問題の処理と関連して60%以上の支持を得た安倍政権が、韓国をたたけばたたくほど参議院選挙の勝算が高くなると計算した公算が大きい。結果はもちろん今後を見なければわからないが。

 経済事情も史上最長の好況局面だと騒ぎ立ててきた宣伝も顔をつぶすほど中身が不十分だ。7月8日付の朝日新聞社説で逐一指摘されたように、物価を2%引き上げ、家計所得を増やし、経済成長率を3%に牽引することによって失われた30年の“デフレ状態”(低物価・低成長)から抜け出すとし、多量の国債発行などで数十兆円を注ぎ込んだ(量的緩和)アベノミクスの成果は、見るに忍びないほどだ。人口動態変化などの複合的要因による失業率低下を除けば、事実上横ばいに近いという朝日新聞の診断のとおり、騒々しい成果の自慢とは裏腹に、日本経済の現実は良くなく展望はさらに暗そうだ。6年余りの実績を見れば、日本円の価値下落(為替レート上昇)で大企業を中心に輸出は増えたが、実質成長率は1.2%程度の成長、家計所得は0.6%程度の成長だが、消費税の引き上げと物価上昇を抜けば、ほとんど変化がなくなる。結局、消費は増えず成長は停滞し、デフレ危機は続く。

 毎日千人の割合(年間40万人)で人口が減っていく少子高齢化問題が深刻化せざるをえない状況で、国内総生産(GDP、2017年564.5兆円)の2倍をはるかに超える(253%)世界最悪の財政赤字(負債)を抱いている。アベノミクスの資金ばらまきは、財政赤字が年間政府予算の30%以上、累積赤字がGDPの2倍以上という状況で、ますます増える福祉費なども賄いきれなくなる。

 資金をばらまき続けるしかないが、それが戦略的投資余力の増大につながのは難しい。10月には現行8%の消費税を10%に引き上げることにした状況で、量的緩和の出口を探す西欧諸国のように金利を引き上げる出口戦略も使えない。金利を1%上げただけでも、国債利子の追加負担金が10兆円を超えるうえに、金脈が詰まればデフレ状態がさらに深刻化するだろう。米中貿易戦争の余波と、期待していた中国景気が下落し、日本の対中輸出も大幅に減っている。莫大な海外投資収益などで維持される経常収支黒字(韓国人が大きく寄与する観光黒字も含む)のおかげで破局を食い止めているが、量的緩和政策を止めた瞬間に株価は急落し、日本経済は危機に陥りかねず、日本銀行がいつまでも紙幣を刷り続けることもできない。

 このためか、前回の衆議院選挙でもアベノミクスの加速推進を主たるスローガンとして掲げた自民党は、今回の参議院選挙では公約目録から“アベノミクス”という言葉を省いた。

米中あつれきと非常によく似た構造

 安倍政権の挑発で本格化した韓国と日本の最近のあつれきも、米中のあつれきと同じ、または非常によく似た基本構造を持っている。少しでも強いと考える側は、力を使える時に競争相手を叩かなければならないという誘惑と焦燥と危機感に絶えず苦しめられ、これ以上は先延ばしできないと判断する時に打って出るだろう。そうした判断は、内部事情により触発されることも、外部要因により触発されることもある。

 上で調べたように、安倍政権が韓国たたきに出たのは、日本内部の切迫した政治的・経済的事情があり、外部要因もある。一時中断されたり、時には逆転様態まで見られるが、南北関係は米国のドナルド・トランプ政権が登場し、昨年の平昌(ピョンチャン)冬季五輪以降には以前と異なる次元で展開し始めた。6月末の板門店での前例ない南・北・米首脳会合が象徴するように、その流れはますます後戻りできない方向に進んでいる。そこに米国との長期的ヘゲモニー争闘に入った中国も、習近平国家主席の訪朝に見られるように、新しい流れの上に繰り広げられるゲームの主要プレーヤーとして飛び込むことになる。疎外されるのは日本だけだ。

 南北の接近と再統合を、日本にとってマイナスないしは危機要素として受けとめる日本の右派支配勢力は、南北が手を握り中国・ロシアとつながり、結果的に日本疎外が固定化することを最も恐れているのではないだろうか。安倍が制裁に乗り出したのは、南北が接近する場合、結局朝鮮半島は中国側に傾くという最近の日本国内の主流による情勢分析の見解を反映しているという指摘もある。

 それを阻むためには、競争者に浮上した韓国の力がさらに大きくなる前に、その勢いを折って自国の大陸接近に妨害要素ではなく従属的支援要素として押さえておきたいのだろう。1世紀以上前に、親日派「一進会」を動員して、韓国内の“反日派”を除去するために「明成(ミョンソン)皇后殺害」という最悪の野蛮まではばからなかった彼らが、今なお依然として「明治維新」や吉田松陰の侵略的世界観を脱皮できないでいるとすれば、彼らは再び韓国内の同調勢力を似た方式で扇動し糾合しようとするだろう。韓国・日本のその同調勢力は、自分たちの政治的利益のために「アカ」「親北」などの反共理念攻勢を常套的に動員するという点では、すでに民族と国境を超越して意気投合している。

 米国も日本が力を失えば、東アジアにおける自身の核心パートナーをいつでも交替しようとするだろう。日本にしても第2次大戦の敗戦後、米国の植民地的従属地位から抜け出せずにいる。韓国制裁という挑発は、ことによると1世紀前と同じように、朝鮮半島をスケープゴートと見なして、自国の植民地的地位から抜け出そうとする蠢きかもしれない。トランプの登場により第2次大戦以後の東アジアを支えてきた米日同盟の「サンフランシスコ体制」が揺れる状況で、日本の最近の中国接近アプローチや、北朝鮮との無条件の対話追求という政策旋回も、そのような観点から注目する必要がある。

ゲーム・プレーヤーとして脆弱な状況

 こうした構図は、東学農民革命と日清・日露戦争を経て、国権喪失まで突き進んだ19世紀末から20世紀初めの東アジア情勢の構図を彷彿とさせる。韓国は、その時とは明確に違った地位を得たが、分断された南北の境遇はゲーム・プレーヤーとしてはその時以上に有利という保証はない。いや、はるかに脆弱かもしれない。南北が早い時期に敵対関係を解消できない場合、それは南北双方に致命打となるだろう。長い20世紀が終わり21世紀が開かれる今こそ、私たちも朝鮮半島を固く締めつけてきた冷戦とサンフランシスコ体制という20世紀の遺産に対する執着と固定観念を捨てる必要がある。

ジャーナリスト ハン・スンドン、元ハンギョレ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:7/15(月) 11:59
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