ここから本文です

Mazda3の最後のピース SKYACTIV-X

7/16(火) 7:05配信

ITmedia ビジネスオンライン

 筆者は今、心のそこからうれしい。SKYACTIV-Xの仕上がりが見事だったからだ。

【運転域による効率度合い】紺色の部分はエンジニアが「燃費の目玉」と呼ぶ高効率の運転域

 これまで4度に渡って、Mazda3が驚くほど出来がいいことを記事にしてきた。そして、その浮かれ気分がスッと冷めたのが、前回の2.0ガソリンと1.8ディーゼルの国内向けエンジンの試乗会だった。一度目と二度目に乗った海外仕様のパワートレインについて「北米の嗜好(しこう)に合わせたセッティングになっていますので、日本仕様はまたセッティング変えてきますよ」と言われて納得していたのだが、その日本仕様は、少なくとも筆者の期待と違った。

 マツダは人体の構造と、人が受ける感覚について驚くほど地道な研究を重ねて、Mazda3をこれまでのクルマと違うレベルに仕立てたのに、搭載されるエンジンとATが「並み」だったのだ。

一台のクルマにまとめ上げるということ

 クルマというのはつくづく難しい。アクセル踏み始めの違和感について指摘した1.8のディーゼルも、第6世代のうちは、これほどは目立たなかった。「小排気量ディーゼルだからなぁ」と飲み込むことはなんとかできた。しかし、他の要素が際立って進化したMazda3にそれが移植されると、パワートレインにも改良は加えられているにも関わらず、その粗が目立つし、どうしても気になる。

 万が一、あれだけ素晴らしい出来のクルマに心から相応しいといえるエンジンがないとしたらユーザーにとってもマツダにとっても不幸なことだ。だからSKYACTIV-Xに期待すると書いたし、ホントのところ祈るような気持ちでいた。

 「お願いだからこの上、SKYACTIV-Xもいまひとつ」なんて記事を書かせないでほしい。ドイツで行われた試乗会に向かう飛行機で、それをぐるぐると考えすぎて少し気持ち悪くなった。

 ところがどうだ。試乗を終えて帰って来た筆者を見た某レーシングドライバー氏は、ちょっとからかうように言った。「池田さん何かやたらうれしそうじゃないですか?」

 シートに座って、エンジンをかけた時、まずエンジン音に好感を持った。通過騒音規制の厳しさが増す中で、静かでありながら頼もしさを感じる新しいエンジン音だった。

 最初に乗ったのはMTなので、クラッチを合わせた途端に、もうエンジンの仕付けの良さが感じ取れた。発進時のフィールはマイルドハイブリッドのおかげもあるだろうが、タイヤのひと転がり目から綺麗(きれい)に制御でき、しかも力強かった。トルコンがない分、そこがダイレクトに感じられる。

 もうひとつ面白いところがある。特にバルブ可変機構が当たり前になってからエンジンの回転落ちが遅くなった。そこの回転落ちを補助するためにMazda3ではマイルドハイブリッドを積極的に使っている。シフト時に回生動作を織り込んで、エンジンの回転下がりを早めているのだ。それはMTの操作にとって回転が合うのを待つ時間を短縮することにつながってくる。

 さて、エンジンフィールについて、先走って書いてしまえば、どの領域でも格別の信頼感が感じられる。「沈着冷静で仕事ができ、なおかつ朗らか」そういう安定感のかたまりのようなエンジンである。広島製だけに往年のカープのエース、北別府学を思い浮かべた。そういえばMazda3の主査は別府さんという。

 高回転域でカムに乗って吹け上がるドラマチックなものを求めると、そういうものではない。その楽しさは知らないわけではないが、そういう特性は、技術的にはバランスが悪いとしかいえない。SKYACTIV-Xにはそういう「ムラ」みたいなものが全くない。極低速からトップエンドまで、表情も変えずに正確に仕事をするエンジンだ。

 こういうエンジンを作るのは、実は高回転で豹変(ひょうへん)してビュンビュン回るエンジンを作るよりはるかに難しい。理想のエンジンのリファレンスをどう描くかというエンジニアの見識と、そのためにエンジンにどう振る舞わせるかを考えて、丁寧な作り込みをしないとこんなエンジンにはならない。

1/3ページ

最終更新:7/16(火) 9:41
ITmedia ビジネスオンライン

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事