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中国研究者に愛された代々木の書店、55年の歴史に幕 「学ぼうとする人に親身」90歳店主が残したもの

7/18(木) 7:00配信

withnews

東京・代々木にある中国書専門店「東豊書店」が6月末、ひっそりと閉店しました。1964年に開店して以来55年。中国研究者だけでなく、中国の書物を愛する多くの人たちから惜しむ声が相次いでいます。(朝日新聞国際報道部・今村優莉)

【写真特集】閉店4日前、階段にも本が山積み 中国研究者に愛された老舗書店、半世紀以上の歴史に幕

カバンを持って入れない

JR代々木駅の改札を出て右側に進むこと約20歩。周囲の発展からそこだけ取り残されたかのような、古ぼけた8階建てのビルが目の前に飛び込んできます。

いまにも朽ちかけてしまいそうな外観から、ネットではかつて香港にあったスラム街、「九龍城砦」に見たてて「代々木の九龍城」などと呼ぶ人もいます。

この建物の正式名称は「代々木会館」。8月に取り壊しが決まっています。このビルの3階に、最後まで残ったお店として「東豊書店」はありました。

階段を上っていくと、2階から3階に上がる踊り場のあたりからだんだんと本の山が近づいていきます。段ボールに入ったままの本やビニールひもにくくられた本の束……。一見しただけではそれらがどのような種類か分かりません。

店に近づくと、なんとなくピンと張り詰める空気が伝わってきます。

店の入り口には、パイプいすや小さないすがいくつか無造作に置いてありました。店主が座るものなのかなあと思っていたら、私とほぼ同じ時間帯に入ってきたお客さんが、ポンと、自分のカバンを置いて、店に入っていきました。

中に入って、その意味がわかりました。本がびっしりと所狭しと置かれていて、通路は人一人が通るのがやっとなのです。カバンを持っていると、お店の中の移動が大変そう。私も慌ててお店から一度出て、店外のいすの上にリュックを置いて再び入店しました。

店主の簡木桂さんにお話を聞こうと思いました。ところが、朝日新聞の記者と名乗りお話を伺おうと声をかけたところ、先にこう言われました。

店主 「何の本探しているの?」
私  「あ、実は、閉店すると伺ったので、少しお話をうかがおうと……」
店主 「本買いに来たんじゃないの?」

ジロリとにらまれてしまいました。私は、本も買おうと思っていたので、自分の関心領域である「文化大革命時代の本を」とお伝えしました。店主は、「あっち」と入り口近くの指さしてくれました。ただ、取材が主な目的でもあったため、私はもう少し粘りました。

私  「この大量の本は、閉店されたらどうするのでしょうか」
店主 「そういう話はいいの」

店主の日本語は流暢でしたが、台湾の方だということを知っていた私は、中国語で話しかけた方が少しでも心を開いてくれるだろうか、と思い、中国語で同様のことを伺ってみました。しかし、私の浅はかな考えはすぐに打ち砕かれました。店主は私をみると

店主 「あんた、何しに来たの?本見るの?見ないの?」

声にいらだちを感じました。私はこれ以上聞いて怒らせてしまいたくなかったので、「本、見ます!」と言って店主の指さした方へ向き直ることにしました。

改めて店内を見てみると、なんだか別空間に移動した気分になってきました。清朝史、中医学、東洋医学、文学、哲学、雑誌、地図に絵本。人形劇にお茶関連に中国ご当地料理のレシピ本……。狭い店内を少し歩くだけでも数え切れないジャンルを扱っていることが伝わってきました。

中国大陸では発禁になっている、「ワイルドスワン」の中国語版「鴻-三代女人的故事」もパッと見ただけで3冊ありました。

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最終更新:7/18(木) 7:17
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