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【地方の交通】MaaSの将来に期待(7月17日)

7/17(水) 9:27配信

福島民報

 高齢者による自動車事故が社会問題化し、免許返納を勧める動きが広がる一方、自家用車の代わりとなる移動手段の姿は見えてこない。特に公共交通サービスが弱体化しつつある地方では、移動手段を失った高齢者は出歩くことがおっくうになり、身体的にも精神的にも健康を損ねる遠因となる。ひいては地域の社会活動が不活発になり、経済的な活力も失われかねない。

 多様な交通の検索や料金の決済を一元化したサービスで提供する「MaaS(マース)」という考え方が今、世界で注目を集めている。県内でも現れ始めた関連の動きやモデル事業が、地域の利便性の向上に結び付き、人の動きの活性化に寄与することに期待したい。

 世界的に注目されるMaaSの一形態がフィンランドの「Whim(ウィム)」という名前のサービスだ。アプリをスマホに入れると、電車、バス、タクシー、レンタサイクルなどさまざまな移動手段を勘案した最適ルートが検索でき、予約、決済まで完結する。同様のサービスは日本国内でも近く提供される可能性がある。

 IT技術が発達しても人の移動には物理的な手段が必要だ。そして移動手段は所有よりシェア(共有)が効率的という考えが広まりつつある。

 そうした考え方の地方における可能性を示すのが、南相馬市が昨年三月から始めた地域別定額タクシーサービス「みなタク」だ。原町、鹿島両区の市民は登録した自宅から医療機関など指定した拠点まで通常より三割程度安い料金でタクシーを利用できる。震災と原発事故でバス路線が減り、車を運転できない高齢者らの要望にどう応えるかが課題だった同市の対応は他の自治体の参考になるはずだ。

 同市の公共交通活性化協議会長としてサービス立案に携わった吉田樹[いつき]福島大経済経営学類准教授は「現存のタクシーをフルに生かすことで、行政にとっては車両や人員を新たに負担せずに一定の予算措置で利便性を提供できる。定額という安心感が利用を拡大させている」と語る。

 会津若松市では今年度、国土交通省の日本版MaaSモデル事業が予定されている。「みなタク」が鉄道、レンタカーなどと結び付いてMaaSのようなサービスを提供できれば、外部からの移動を呼び込む装置になる。

 住む人も、外部から訪れる人にも利用しやすい移動手段を提供できれば、地域の底力となるはずだ。参院選でも議論されるべきテーマの一つに違いない。(佐久間順)

最終更新:7/20(土) 0:55
福島民報

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