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太古の昔、人間と戦った“トトロ族”がいた!? 宮崎駿との仰天秘話を、鈴木敏夫プロデューサーが告白!

7/17(水) 18:10配信

Movie Walker

1992年にスタジオジブリが初めて手掛けた短編作品「そらいろのたね」から、2016年までの、全32本に及ぶショートショート作品を収録した『ジブリがいっぱい SPECIAL ショートショート 1992-2016』が、本日7月17日にブルーレイとDVDで発売された。これらのショートショートには、宮崎駿をはじめ、近藤喜文、百瀬義行、稲村武志、田辺修、橋本晋治、大塚伸治、近藤勝也、宮崎吾朗などが名を連ね、スタジオジブリを支えてきた歴代の監督やアニメーターたちが集結している。

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この発売に合わせ、宮崎駿らと40年にわたって共に作品を制作してきた株式会社スタジオジブリ代表取締役の鈴木敏夫プロデューサーが取材に応じ、90分にわたってタップリと語ってくれた。後編は、宮崎駿や高畑勲との知られざる創作秘話から、鈴木プロデューサーが”優秀だと思うアニメーターの条件“などのトピックをお届けする。

■ 「上手いアニメーターは、キャラクターより芝居を描きたがるんです」

――今回の収録作品ですと、日清製粉グループ企業CMの『コニャラ』(10,12,15)で、鈴木さんの絵が元になっていましたね。

「『笛を吹くお医者さん』もそうなんですよ(笑)。いや、僕の書くのは本当にイタズラ書きで、それを立派にしてくれるのはアニメーターなんです。アニメーターの人たちって、キャラクターを描くよりも、やっぱり芝居や動きを描きたがるんですよね。極論を言うと、キャラクターは誰かが描いてくれたほうがいいっていう人が多いんです。上手な人ほどこの傾向が強くて、例えば『「火垂るの墓」金曜ロードショーの放映告知スポット』(96)、“あの日を忘れない”という作品。キャラクターは僕が描いてるんです。それを近藤(喜文)さんが動かすっていう…。もう、わけわかんないんですよ(笑)」

「この野中くん(『オンライン・ショッピング・モール「SHOP ONE」告知スポット』‘00)っていう作品だと、僕が(モデルになった社員の野中くんをモチーフに)顔を描いて、宮崎駿が体を描いたんです。おもしろいエピソードがあって、宮さんって人は負けず嫌いっていうのか研究熱心というのか、僕がこの顔を描いた日に、僕のところに制作の人が来て、『宮崎さんが、朝からずっと野中さんを描いてます』って言うんです(笑)。夕方になったら、今度は宮さんが僕のところにやってきて、絵の束をバッと見せてくれたの。『リアルに描くとこうだ』とか、いろんなパターンで(野中くんを)描いたものを。でも、最後には『やっぱり鈴木さんのが一番いいよ』って言ってくれたんです。絵描きというのは、自分の領域を侵されると嫌なんでしょうね。その点、僕は絵描きではないので気楽に描けるんです」

■ 「クリエイターに仕事を頼むには、率直に『やって』。これしかないです(笑)」

――鈴木さんにとって、「腕がある、優秀だな」と思うアニメーターとはどんな方でしょう。

「アニメーターって、実写の世界でいうと、やっぱ役者なんですよね。ご飯食べるとか、歩くとか、そういう動きが的確っていうのかな。例えば、近藤喜文さんはリアルな芝居が上手。『となりのトトロ』に、メイというキャラクターが出てきますが、歩く時にまっすぐ立って歩く4歳の女の子っていないんですよね。よく観察してみると前のめりか後ろのめりかになっていて。そういう風に、日ごろから観察したものを作品に活かすことができる人です」

「トトロって柔らかそうで、お腹を押すとヘコみそうでしょ。この感じを出せるのは、トトロに関しては宮崎駿だけ。ほかのアニメーターが描くと、お腹を押しても硬そうなんですよね。だから、将来『トトロ』をリメイクする人が出てきたとしても、多分お腹は硬いんじゃないかな(笑)。あのフワフワしている感じを表現できるのは宮さんだけですよ」

――様々なこだわりの強いクリエイターとお仕事をされてきたと思いますが、お願いの仕方に工夫などはありますか。

「ある一定以上のレベルの方には、小手先のテクニックは通用しないですね。だからもう率直に『やって』って。これしかないですよ(笑)。結果的に、ジブリのショートショートはみんな腕利きが描いているので、品質については胸を張れると思います。でも(三鷹の森ジブリ)美術館でやってる短編があるじゃないですか。一番最近の『毛虫のボロ』は14分なんですが、作るのに3年かかってるんです。『パン種とタマゴ姫』もそうでしたねえ…。なかなか1年で作ってくれないんですけど、それを言うと、宮さんは怒るんですよ(笑)。やっぱり、やる人はとことん突き詰めてやってしまう。完成という意味で一番怖かったのは、高畑(勲)さんと『かぐや姫の物語』を作った時です。彼はすごい時間をかけてやるので、僕、短編でやったらどうかなってご提案したことがあったんです。でも、高畑さんはやっぱり『長編でやりたい』っておっしゃって。そういうこともありましたね」

――『りそな銀行 企業CM』(03)では、家族のバックグラウンドを何か月もかけて作るなど、数秒のなかでも綿密に作り上げたと解説文にありましたが…。

「えっ、そんなこと書いてあるんですか。ちょっと大げさですよ(笑)。でも、いまおっしゃったようなことを本当に考えているのが宮崎駿だね。そういうことを想像するのが好きなんでしょうね。これも『トトロ』の時の話でいまだによく覚えているんですが、ある日彼が『トトロ族っていうのが昔いたんですよ、鈴木さん』って言うんです。それこそまだ有史以前に。そうすると、『人間たちとトトロ一族は戦ったんだけど、結局トトロ一族は人間の前に負けたんですよ』って(笑)。それで、その残党というか生き残りの血が脈々とその後も続いていて、時代時代に現れる。それはある時には幽霊だったり、ある時にはもののけだったり、それが現代に現れたのがトトロなんだよって。面白いこと考えるなぁって思いました」

■ 「宮さんは、死ぬまで作るしかないと思います」

――いまの宮崎監督の話が出ましたが、『ハウス食品「おうちで食べよう。」シリーズCM』について、制作当時、宮崎監督が昭和30年代に興味を持たれていたと資料に書かれていましたが、どのような点に惹かれていたのでしょう。

「ある雑誌で、“トトロの家を訪ねる”って連載をやっていたんですよね。昭和30年代のいろんな古い家を訪ね歩いて、そこで自分が勉強したことを形にしたかったんじゃないかな。僕が感心するのは、彼の映像的な記憶力です。そういう場に行ったときに写真を撮るなどは絶対しないのに、絵として覚えちゃう。普段、日常的にしゃべっていることは全部忘れるんですけどね(笑)。彼は写真や資料を元に描いている方と違って、自分の目で見たふうに描くから、出来上がったものがほかのアニメーション映画とちょっと違う。写真をもとにアニメーションとしてデフォルメされている方を批判するわけではないのですが、空を実際より高くしたり、雲を全部取って小さくしたり、大きくしたり。そういう遊びはそれでおもしろいんだけれど、やっぱり自分の目で、それを記憶しといて描くっていうのに比較すると、どっちが人間的かって言ったら、宮さんのほうですよね」

「宮さんとは、付き合って42年間経つのかな。そうすると、さすがに全部わかってくるんですが、彼が描くキャラクターには、必ずモデルがいますよね。空想で描けないんですよ。実を言うと、建物も風景もそう」

――観察眼と、写真的記憶法が合体したような。そんなふうに作られているんですね。

「そうそう。だから『そろそろ枯渇してきたな』って思うと、連れだすんです(笑)。例えば『崖の上のポニョ』の時。それで僕は『社員旅行で瀬戸内海行きませんか』と声をかけたんですけど、そうするとね、『イヤだよ俺』なんて言う。でも、無理やり引っ張っていくと、古い建物やなんかを見て回って…ものすごい興味持っちゃうんですよね。社員旅行のあとに『ちょっと、しばらくあそこに居たいんだけど』っていうぐらい。新しい場所へ行くと必ず刺激を受けて、しかも、それを血とし、肉とする人だから。感心しますね」

――そうなると宮崎監督って、やはり創作活動を止められない方なんじゃないですか。

「止められないと思います。もう、引退なんて馬鹿なこと言わないと思う。死ぬまで作るしかないですよ。だって彼から映画作る能力外したら、口うるさい“おジャマじいさん”ですよ。僕だったらイヤですよ!家のなかにあんなのが居たら(笑)」

(Movie Walker・取材・文/編集部)

最終更新:7/17(水) 18:29
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