ここから本文です

「中国からのクルーズ客減少」を読み解く 護得久朝晃氏(沖縄エクスカージョンズ社長)

7/17(水) 10:00配信

沖縄タイムス

数優先より長期誘客を

◆ニュースナビ+プラス(64)

 沖縄県が発表した5月の入域観光客数は同月で過去最高の83万4900人だった。大型連休で国内客は1割増えたが、県内へのクルーズ船の寄港数減で海外客が15%減。海外の国・地域別では中国本土が3割減った。中国市場からクルーズ1社が撤退した影響が出たという。(6月25日付、日経新聞)

 入域観光客数が過去最高との報だが、海外客が減少に転じたことは大きな変化である。海外客数はこれまで空路、海路とも上り調子で増加を記録、2018年は海外客数約300万人のうち空路が6割の180万人、海路が4割の120万人で、クルーズ船も相応な来訪手段として活用されている。ここに来て中国からの海路客数が減っていることは何を意味するだろうか。

 中国人が利用するクルーズ船の多くは「買い物船」とも揶揄(やゆ)されるように、クルーズ船=富裕層の旅行ではなく、日本へ買い物旅行に行く安価な手段として利用されてきた。多くが格安料金のため、船社は船上での飲食や娯楽の追加消費に頼るビジネス設計になっている。食事や宿泊の消費を期待する観光地側と、利害が対立することが空路旅行との構造的な違いだ。クルーズ船客の観光地消費額が空路客に比して限られていることから、最近はクルーズ船の積極的な誘致に異を唱える識者の指摘も目立つ。

 実際、県内に寄港するクルーズ船の多くが早朝に到着し、夕方には出てしまう短期滞在だ。今年の那覇港の寄港予定を調べたところ、日付を跨(また)いで滞在するクルーズ船は全293船中2割程度のみだった。

 県内バス会社によると、典型的なクルーズ船客の滞在スケジュールは、まず貸し切りバスに乗り、午前は首里城をはじめとする大型観光施設に立ち寄る。午後は国際通りに4時間ほど滞在し終了、と訪問先が限られている。15年をピークに中国人客の買い物消費が減少していると報じられるように、国際通り滞在後に手ぶらでバスへ帰ってくる客も多いようだ。

 訪日旅行需要の旺盛な伸びを背景に、多くのクルーズ船社の中国市場への進出が行われてきたが、需要の伸びを上回る供給で価格競争が激化している。他方、中国人客の買い物旅行への興味の低下も影響し需要が伸び悩んだ結果、昨年から今年にかけてクルーズ船大手2社が撤退したとみられる。

 沖縄県は「東洋のカリブ構想」を掲げ、4月に国の「国際旅客船拠点形成港湾」の追加指定を受け、民間投資も活用した港湾の一層の整備を進める。

 沖縄観光コンベンションビューロー関係者によると、旅行者の多様化するクルーズ船へのニーズも踏まえた欧米船社の日本航路進出は続くようだ。観光地側は数を優先する従来の誘客から、観光消費の高い長期滞在船の優先や、各クルーズ船客の消費行動の分析に加え、寄港の環境への影響などを定点観測した上での緻密なマネジメントが求められる時代に突入している。(沖縄エクスカージョンズ社長)

護得久 朝晃

最終更新:7/24(水) 9:55
沖縄タイムス

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事