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日本は実験台?「財政再建しなくても破綻しない」話題の経済理論MMTとは

7/18(木) 5:01配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

自国の通貨を発行して借金できる国が財政破綻することはない。だから財政再建のために政府の支出を減らしたり税や保険料の国民負担を増やしたりしなくても、借金を膨らませて費用を賄えばいい──。

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アメリカで一部の経済学者らが提唱し、主流派の学者から異端視されながらも世論の一定の支持を得る「現代貨幣理論(Modern Monetary Theory、MMT)」。「巨額債務を抱えているのにインフレも金利上昇も起きない日本が実例だ」と発言した米ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授が7月16日、東京都内で講演し、改めてMMTの正当性を訴えたニュースも注目された。

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現状への問題提起は「共感できる部分もある」

2018年、アメリカで史上最年少(29歳)の女性下院議員となり旋風を巻き起こした民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス氏が支持を表明し、一気に知名度が上がったMMT。ニッセイ基礎研究所専務理事の櫨浩一さんによると、標準的な理論体系があるわけではないという。ここでの議論は、経済学者ランダル・レイ氏の著作「Modern Money Theory: A Primer on Macroeconomics for Sovereign Monetary Systems」(2012年)に基づく。

「MMTは現実経済の描写と、それに基づく政策提言という2つの部分から成ります。前者には共感できる部分もありますが、後者については賛同できない部分が多いです」(櫨さん)

櫨さんが評価するのは、単に政府が財政赤字を減らそうとするだけでは景気が悪化し、結果として財政赤字は期待したほど減らないおそれがあることをMMTが強調している点だ。

MMTは、ある国の経済状況を考える時、政府・企業・家計・海外という「部門」ごとの金融資産と負債の差額=純金融資産の動きを重視する。前提として、ある国の純金融資産はすべての部門の収支を合計するとゼロになるとしている。単純化して言えば「誰かの赤字は、他の誰かの黒字になる」。この考え方自体は、主流派経済学と同じだ。

するとどうなるか。政府が財政赤字(負債)を減らすと、それに伴い企業や家計などの黒字(純金融資産)も減る。その時、企業や家計が収支の悪化を避けるために支出(企業による投資や人件費への支出、家計の消費支出)を減らせば、景気が落ち込む可能性がある。そうなると当初の想定よりも税収が減り、財政はそれほど改善しないというわけだ。

「この点は財政再建に関する議論で無視されがちなので、MMTがこの問題を改めて提起しているのは正しいと思います。

つまり財政再建を成功させるためには、政府は支出の削減や増税による収支改善の努力をするだけでなく、企業に設備投資や賃上げ・雇用増を促す税制改革や規制改革などもしっかり進めなければならない、という結論を導くことができます。これは重要なポイントだと私も考えます。

ところがMMTが主張する問題解決の方向性はいま話した内容とは異なり、『失業者の増加や企業の投資の減少といった経済活動の縮小均衡を避けるためには、政府は財政再建をせず、さらに借金をして財政赤字を増やし、支出すべきだ』としています。これは間違いだと思います」(櫨さん)

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最終更新:7/18(木) 17:01
BUSINESS INSIDER JAPAN

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