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【舛添要一の僭越ですが】 香港の大規模デモ、一国二制度の命運・・・富か自由か

7/18(木) 14:30配信

ニュースソクラ

台湾総統選への影響必至、いずれ日本の問題に

 香港では、立法会で「逃亡犯条例」を改正して、中国本土への容疑者の引き渡しを可能にしようする動きがあり、これに反対する市民がデモを繰り広げている。条例は廃案に近い先送りになったが、デモは収まらない。

 デモは、最初は6月9日に行われたが、103万人が参加している。12日にも、数万人が香港政府や立法会周辺に集まり、デモを行い、警官隊と衝突している。これを受けて、15日、林鄭月娥行政長官は、立法会での法案審議を当面の間、延期することを表明した。その後、事実上の撤回という発言も政府関係者からでている。

 しかし、あくまでも条例案の撤回を求める市民は、16日、200万人のデモを敢行した。香港の人口が745万人であるから、4人に1人は参加したことになる。日本なら、約3000万人という規模である。市民の要求は、条例案撤回にとどまらず、林鄭長官の辞任を要求するまでになっている。
 
 19世紀半ばにアヘン戦争に敗れた清国は、イギリスに香港を割譲した。そして、99年間の租借が終わった1997年7月1日に香港は中国に返還された。当時のサッチャー首相ととう小平と間で、「港人治港」、「一国二制度」を50年間続けることで返還の条件がまとまった。「高度の自治」を香港に認めた上で、特別行政区として中国の社会主義体制とは異なる制度を保証したものである。

 22年前、返還時の香港に行って、中国派、民主派双方の指導者たちと議論したが、民主派の中には将来に悲観的な政治家が多かったように記憶している。しかし、私は、中国もまた民主化しないかぎり経済発展はないので、必ず民主化すると考えていた。

 ところが、その後の中国政府の動きを見ると、着々と香港の中国化を進めるべく手を打っていったのである。たとえば、立法会は親中派が多数を占める仕組みになっているし、行政長官は親中派が推薦することになっている。

 このような状況に対して、市民は抗議を続けてきた。2003年には、50万人のデモで、反体制派を取り締まる国家安全法を廃案に追い込んでいる。2014年には、学生らが行政長官選挙の完全民主化を求める運動、いわゆる雨傘運動を行い、79日間にわたって道路を占拠したが、これは市民の日常生活に不便をもたらしたために批判され、失敗に終わった。

 今回のデモは、この雨傘運動の再来を思わせるものがあり、北京政府も危惧の念を強めている。とくに6月28日からは大阪でG20首脳会議が開かれ、米中貿易摩擦で四苦八苦しているうえに、香港問題で世界から批判を受けることは何としても避けたい思いである。習近平政権のその意向を受けて、香港政府は条例改正の延期を表明したのである。

 香港の事態は、二つの点で注目に値する。
 
 第一は、パックス・シニカ(中国の平和)の行方である。つまり、今のアメリカに代わって世界を支配するという中国の野望の前に立ちはだかる障害物が、香港だということである。中国は、自由な民主主義でなくても、経済発展を遂げ、GDPでアメリカに次ぐ世界第二の経済大国になることができた。しかし、そのモデルが香港には適用できないとなれば、やはり問題である。

 しかし、中国にとって好都合なのは、香港が経済的に凋落していることである。国際金融の面でも、今や香港よりも上海のほうが発展している。中国全体が繁栄を続けるかぎり、香港の地位は相対的に低下し、無視できる存在になりうる。「自由のある貧困」と「自由のない豊かさ」という究極の選択を強いられれば、前者を選ぶ者の比率が高いとはかぎらないからである。

 第二の問題は、台湾への影響である。台湾は、秦の始皇帝以来、中国では行われなかった皇帝(総統)の直接選挙を行った初のケースである。香港の事態を見れば、習近平によって一国二制度での統一を持ちかけられても、台湾の人々が拒否するのは当然である。現在の蔡英文民進党政権は独立志向であるので、強い態度で出るのは当然である。「香港を支え、台湾を守ろう」という声が台湾で高まっている。

 そのような声は、台湾独立に反対する国民党を不利な立場に追いやっており、一国二制度には反対せざるをえなくなっている。来年の1月には、総統選が行われるが、香港情勢の展開が大きな影響を及ぼすことは避けられない。

 中国、香港、台湾の状況は日本にとっても無縁ではない。注意して見守っていく必要がある。

舛添 要一 (国際政治学者)

最終更新:7/18(木) 14:30
ニュースソクラ

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