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元TBSアナの久保田智子さんが『歴史』の道を歩む理由 「テレビ報道ではできないことを…」

7/18(木) 11:36配信

ハフポスト日本版

「大切にしているのは、事実より記憶なんです」。

そう語るのは、元TBSアナウンサーの久保田智子さん。現在は、広島の被爆者を対象とした「オーラルヒストリー」を研究している。

テレビ越しに久保田さんを見たことがある人も多いのではないだろうか。尺の決まったテレビ報道の中で、テキパキと情報を“さばいていた”彼女がなぜ、ゆっくりじっくり時間をかけて、歴史の証言を集める研究に夢中になっていったのか。

ハフポスト日本版のネット番組「ハフトーク(NewsX)」に出演した久保田さんが、オーラルヒストリーとマスメディアの「聞き方」の違い、そして伝えることの本質について語った。 【文:湯浅裕子/ 編集:南 麻理江】

オーラルヒストリーとは?

元TBSアナウンサーで報道記者としても活動していた久保田智子さんは、2017年にTBSを退職した後、アメリカのコロンビア大学でオーラルヒストリーを研究。帰国後も、オーラルヒストリーの手法を用いて広島の原爆被爆者を対象にした研究を続けている。

「口述歴史」とも訳されるオーラスヒストリーとは、一体どのようなものなのだろうか。「たった一つの明確な定義はないのですが…」と前置きした上で、久保田さんはこう説明する。

《「人々の記憶を、インタビューを通じて記録して、歴史の検証に生かす」ということが基本です。この“記憶”というのがポイントなんです。歴史的に事実かどうか、というよりも、その人の中で、ある出来事がどのような記憶として残っているのか、どのように感じながら話すのかに注目して、検証をしていきます。》

長年、テレビ局員として報道取材をしてきた久保田さん。コンパクトに真実を伝えることを強みとするテレビ報道とは、ある意味で逆の手法ともいえるオーラルヒストリーを学ぶようになった背景には何があったのだろうか。

そこにはひとつの原体験があると久保田さんは話す。

《以前、広島出身の被爆者にインタビューしたことがありました。仕事ではなかったので時間を気にせずに目的もなくダラダラと会話をしていたんですね。その時、ふと気づいたんです。ああ、これは、テレビ用のインタビューでは見えなかったことが見えてくるな、と。

テレビでの報道を目的としてカメラインタビューを行う場合、限られた時間の中で聞きたいことを聞かなければいけません。相手にこういうことを言ってほしい、こういうことを言うだろうな、というゴールイメージがあってインタビューをすることが多いです。でも、そうした、せき立てられない状態だからこそ聞ける声があるんだと初めて実感したんです。

正直、それまで自分はインタビューが得意な方だと思っていたんですね。でもその経験を通じて、実際は自分の聞きたいことだけを聞いて、言ってほしいことを言ってもらっていただけなのかな、と考え始めるようになりました。なんだか相手の話を全く聞くことができていなかったのかなぁと…。それ以来、自分が聞きたいことを聞くんじゃなくて、相手が言いたいことを聞いていきたいと思うようになりました。》

転機が訪れたのは、TBSを退職後、夫のニューヨーク転勤が決まった時だった。

「せっかくアメリカに行くのだから自分も何かしたい」と考え始め、自身が広島出身であることから、被爆者たちの声を残す活動をしたいと思うようになったという。

そこで、歴史の伝承活動について調べていたところ、オーラルヒストリーという存在に出会った。「私がやりたいのはこれかもしれない」と感じた。

その後、2017年9月から米・コロンビア大学の大学院でオーラルヒストリーを学んだ。現在は、広島の原爆被害など戦争の記憶を伝える活動をするため、東京大学大学院でオーラルヒストリーの研究を行っている。

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最終更新:7/18(木) 11:36
ハフポスト日本版

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