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別府市長に「観光で目指す姿」を聞いてきた、「湯~園地」プロジェクトが成功した背景からオーバーツーリズムへの視点まで

7/18(木) 14:20配信

トラベルボイス

オール別府の新たな取り組み

その最たる例が、2019年3月に開催したイベント「ONE BEPPU DREAM」。いわば、別府の未来を創る“公開クラウドファンディング”だ。約100社の地元企業と一般投資家、クラウドファンディング企業の前でプレゼンをし、参加者にはその場で支援が得られるチャンスを提供。観客には一緒に別府の未来を考える機会とする。別府を活性化させるアイデアであれば、別府市民以外の誰でも参加を可能としたところ、92の事業アイデアが寄せられたという。

第1回の今回は残念ながら、クラウドファンディングの成立はなかったが、「可能性のあるアイデアはたくさんあった」と長野氏。これらを翌年の開催までに1年かけ、市役所と民間など各方面からの助言や支援のもと、実現に向けた取り組みを行なう方針だ。

その際には、別府市の出資で2017年秋に立ち上げた一般社団法人「B-biz LINK」も関与するが、この組織自体も別府の新たな取り組みの一つ。観光面からみれば“別府版DMO”だが、観光マーケティングのみならず地域ビジネスのプロデュースも担う「産業連携・協働プラットフォーム」であるのが特徴。市内の事業者、金融機関、大学や行政など幅広い連携を図り、地域経済の発展と市民生活の向上を図る。「単純なDMOではなく、官民学の連携で新しい観光を取り入れていく。これは面白い組織」と、長野氏は太鼓判を押す。

これまで別府の観光施策は市役所が立案から実行まで主導しており、それに市民も信頼を置いてきた。そのためB-biz LINKは現在、トップに副市長を置き、行政も大きく関与しているが、5年くらいかけて完全に自走できる組織へと成長させ、より柔軟な観光・地域づくりを行なう体制とする方針だ。

観光で別府が目指す姿とは

別府市にとって観光とは何か。長野氏に問うと、「市民の生活を豊かにするもの。別府市を盛り上げるためには、観光を盛り上げることが絶対に必要」と力を込める。

ただし、「だからといって、観光客を増やすことが目標ではない」とも言明。「観光は市民の幸せを実現するための途中経過の手段。観光は市民のためにある。それを常に意識して取り組んでいる」といい、「私個人の目標は、別府ファンを増やすこと。リピーターを増やし、観光客が喜んで連泊して観光消費が増える良い連鎖を目指している」と強調する。

世界的な観光の課題の一つ、オーバーツーリズムについても、別府市は現在のところオーバーツーリズムは発生していないとの認識だが、「市民の幸せをないがしろにしてまで、観光客を喜ばせる施策はあり得ない」と断言する。

別府の宿泊客数は2017年現在で254万人となり、5年間で20万人以上増加した。昨年から来年にかけては市内客室数が約1000室増加し、これにより年間の宿泊数はさらに50万人~100万人増加することが見込まれている。

観光客が増加傾向にあるなか、観光スタイルの変化で「別府でも地域の暮らしに入り込んで、その息吹を体験してみたいという観光客が増えている」とも認識。「もし、それによって地元の人がストレスを感じるのは本末転倒。今後はどのように観光客を受け入れていくのかを考える必要がある」と、今後の対応にも思いを巡らす。

「一流の観光地は市民の幸福度も一流」が持論の長野氏は、観光客の満足と市民の幸せの実現をどうバランスを取っていくのか。長野氏は、「その答え合わせを私は常にしているし、おそらく他の皆さんもそうしてくれていると思う」と、コミュニケーションをキーワードにあげる。一方、観光客には、地域の生活圏を守り、その線引きをするためにも「親切でなければいけない」との考えを語った。

例えば別府では、共同浴場では基本的にタトゥーOKだが、市内の旅館やホテルではお断りするところも多い。だから、「入浴OKとNGの場所を事前に知らせることが、丁寧な対応。そういうことが地域や伝統文化を守ることにもなる。知らされずに来訪した人に『入るな』というのは、観光地としては良くない。」そして、「常に私たちは歓迎しているということ、別府は住民の生活圏は守りながら、観光客とよい距離を保って守っておもてなしをする街であることを、観光客と市民の双方に発信していくことが大切だと思う」。

長野氏は2015年に別府市長に初当選し、2019年4月の統一地方選で無投票で再選。2期目に突入した。その間の別府市の躍進ぶりは前述の通りだが、失敗はなかったのか。インタビューの最後に聞くと、「皆さんにはプロジェクトのゴールしか見えていないですが、中では失敗の連続」と笑う。ただし、「私はそれを失敗とは思っていない。私にとって失敗とは、自分が死ぬときに『できなかった』と思うこと。躓いても立ち上がって、なぜ転んだのかを考える。それを繰り返して成功させればいいと思っている」。

トラベルボイス編集部

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最終更新:7/18(木) 14:20
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