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グローバル労働搾取は謝罪したが…サムスンの反論は間違っている

7/18(木) 19:17配信

ハンギョレ新聞

ハンギョレ報道に対するサムスンの反論文を見ると  良い点「過度な超過労働、協力会社の問題、労組不認定を認める」 間違っている点「タクト・タイム短縮、労働者の死、論点ずらし」 期待する点「誤ちを改めるなら事実関係をありのまま見て」

 サムスン電子は10日、ハンギョレの「グローバル・サムスン持続不可能報告書」企画と関連してかなり長い分説明資料を発表した。これに先立ち、ハンギョレは6月18日から2日まで5回にわたり、サムスン電子のグローバル生産工場の労働・人権の実態を探査報道した。サムスンの説明資料はこれに対する公開反論の性格のものだ。

 まず、サムスンは「最近のサムスン電子の海外事業場に関する報道について申し上げます」という題の今回の説明資料で、ハンギョレが問題として指摘した部分を一部認めて謝罪した。過度な超過労働や協力会社の労働安全論議、労組活動を認めないなどは、サムスンが直接言及した「力が及ばない部分」や「誤った慣行」の具体的事例だ。

 サムスンはこれに関して「グローバル・スタンダードに合わせて事業を運営してきたが、いまだに力が及ばない部分がある」とし、「今後さらに徹底的に点検し、努力して力不足な部分は改善し、誤った慣行は改善する」と約束した。サムスンの無労組政策と不十分な労働安全管理の実態などは、国内の多くの労働者、労働活動家が十数年闘いながら水面上に引き上げた代表的な「サムスン問題」でもある。

 一方で、もの足りない部分も少なくはなかった。特に、サムスンはいくつかの報道については「事実と異なる」、「客観性とバランスの取れた見解が反映されたのか疑問」などの表現を使って強く反論した。読者の正確な理解のために、サムスンの主張を一つひとつ振り返ることにする。

1. タクト・タイムの短縮は部品のモジュール化と工程の自動化のため
 サムスンは「労働の権利が弱いアジアで、サムスンの顔はいっそう苛酷になった」というハンギョレの報道と関連し、このように反論した。「記事はまた、『タクト・タイム』をサムスン電子が労働者を絞りあげる、いわゆる『労働のサムソン化』の手段のように表現したが、これも企業や製造業に対する理解が足りない報道です」。さらにサムスンは(アジアの工場の)組立て時間が短くなった理由が「部品のモジュール化や工程の自動化などによって組立てがはるかに簡単になったため」だとも付け加えた。

 もちろん、生産性の極大化を図るサムスンなどのグローバル企業がモジュール化と自動化など「工程改善」に絶えず投資し、努力していることを知らないわけではない。問題は、サムスンのグローバル生産工場で働く労働者に“イノベーション”はしばしば“強度の高い労働”を意味する名前になるという事実だ。ハンギョレはアジアの工場労働者数十人を取材し、サムスンの工程改善が時には「電光掲示板を置き、数字と視覚でリアルタイムに圧迫し、後ろに立つ管理者は怒鳴り声を上げ、聴覚的な緊張感で神経を張りつめさせるもの」だということを確認した。

 実際の事例もある。サムスンは2013年、ブラジルで過度なタクト・タイム管理を通じて超過労働を強要した疑いなどでブラジルの労働検察から2億5千万レアル(約110億円)の損害賠償訴訟を起こされた。ブラジルのサムスン工場で、生産量に圧力をかける手段に活用された電光掲示板が消えたのはその後だった。メディアを相手に「企業に対する理解」を強調するサムスンは、どれくらい「労働に対する理解」をしているのか、やはり残念に感じざるを得なかった部分だ。

2. ハンギョレの報道は市民団体の協力を得て客観性に欠ける?
 サムスンは説明資料で「(ハンギョレは)国内外の市民団体の活動家などの協力によって前・現職の労働者の深層インタビューをしたという。インタビュー対象の選定で客観性とバランスの取れた見解が反映されたのか疑問」だとし、「少数の主張を、代表性を持つ事実として一般化した」と述べた。

 サムスンのこのような主張は事実と異なる。労働者との接触は市民団体の助けを受けず無作為で行われた。これについてはハンギョレは「通勤時間帯に工場の周辺でサムスンの社員証やユニフォームを着用した労働者に(取材を)要請した」とすでに明らかにしている(ハンギョレ6月18日付6面)。SNSを通じて無作為に送ったインタビュー要請に応じた労働者もいる。それに、各市民団体の協力を受けたから、客観性に欠けるというサムスンの論理は、それ自体が納得しがたい。ハンギョレはアンケート調査結果について「代表性がある」と主張したこともない。むしろ「無作為のアンケートであるため統計的に代表性があるものではないが、アジアのサムスン労働者たちが直面した現実に対する理解を助けるために調査内容を紹介する」とし、アンケート調査の意味を規定した。

3. ベトナムで死亡した労働者のタムの検死は死亡の隠蔽とは関係ない?
 サムスンは、ベトナム工場で死亡したルー・チ・タイン・タムさんの死について「非常に残念で悲しいこと」だが「サムスン電子と警察が家族の反対にもかかわらず何かを隠すために検死を行ったという主張は無理がある」と主張した。「何かを隠そうとしたなら検死そのものをしなかったはずだ」というのがサムスンの主張だ。

 一見合理的に見えるが、当のタムさんの遺族がいまだに死亡理由を正確に知らないという点でつじつまが合わない主張だ。遺族がタムさんの死亡当時、病院側に死亡診断書など医学的所見を要請したが、もらうことはできなかった。手続き的な必要に応じて検死をしただけというサムスンの主張を受け入れるとしても、遺族にはその内容がなぜ伝えられなかったのか、疑問が残る。

4. 一貫して無回答を続けた後「論点ずらし」に出たサムスン
 ハンギョレは取材を進めながら、サムスンのインド法人本社を訪れ、サムスンの釈明と立場を聞こうとした。しかし門前払いの末に「あなたたちと会う人はいない」という通報を受け、追われるように出てきた。当時、サムスンの複数の役員・職員に電話をかけたが、誰も受けなかった。

 最初の報道の一週間前の6月11日、ハンギョレは全般的な取材内容をサムスンと共有し事実確認を要請した。サムスンの反論権を保障するためだ。具体的に反論してくれば十分に反映するという意思も伝えた。ほとんど全ての取材内容が分かるよう、14項目で構成された質問も送った。工場別雇用人数などごく基本的な内容を問う質問もあった。しかし、サムスンは14項目のうちどの質問にも具体的な返事を送らなかった。

 基礎的な事実関係の確認要請にも無回答で一貫していたサムスンは、今回の立場文を通じて記事のグラフィックに出ていた工場別雇用人数が実際の数字と違うとし、「記事は最も基礎的な事実である事業所の雇用人数からして間違っていた」と述べた。サムスンの回答を得られないままグラフィックを制作する過程で、インド全体雇用規模とされる7万人をノイダの雇用人数と表記し、6万人のベトナム・タイグエンの雇用規模を3千人と書いたミスがあったのは事実だ。読者の皆様にお詫びし、現在は修正したことをお伝えする。

 サムスンは立場文の結論で「過ちは正し、力の及ばなかった部分は引き続き努力して補完する」と言っている。過ちを正すことは事実関係をありのままに見ることから始まる。サムスンが「グローバル・スタンダード」に歩調を合わせていく最初のボタンを、無事にかけるよう期待する。

イ・ジェヨン、キム・ワン、オク・キウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:7/18(木) 19:17
ハンギョレ新聞

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