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【10%ショック・消費税を問う】(上) 複雑な軽減 「持ち帰り」なら8%

7/19(金) 19:00配信

カナロコ by 神奈川新聞

 買い物客でにぎわう横浜市南区の弘明寺商店街。青果店や飲食店、洋服店といった店舗が軒を並べ活気あふれる。個人経営の小規模な店が集まる消費の現場にも、増税の重しは確実にやってくる。

 「値上げを検討せざるを得ない」

 食欲をそそる総菜や弁当を取りそろえる老舗の店主は苦渋の選択を迫られていた。

 消費税は10月1日に10%へと引き上げられるが、増税による消費の減退を食い止めようと「軽減税率」が導入され、「飲食料品」は8%に据え置かれる。総菜や弁当は軽減税率の対象のはずだが、値上げとはどういうことか。

 「料理酒やみりん、商品を入れる容器など、弁当を一つ作るために必要な材料のうち、10%の消費税がかかるものも少なくない」

 仕入れのコストが高まるというわけだ。小規模店ではこのコスト増を吸収しきれないため、商品売価への転嫁は避けられそうにない。

 増税のインパクトを低減しようと導入される軽減税率だが、その効果は額面通りとはいかない。

■中小に重荷
 その軽減税率も、極めて複雑な仕組みとなる見通しだ。

 例えば、ハンバーガー店。ハンバーガーは「飲食料品」なので軽減税率の対象だが、「外食」は対象外。「店で食べる」場合には「外食」に該当し10%、持ち帰りを選ぶと「テークアウト・宅配」に当たり8%となる。

 店舗で食べられるスペースを設けているコンビニ店も増えているがこの場合はどうか。

 国税庁の資料では、店舗側が「異なる税込み価格を設定する場合」と「税込み価格を統一する場合」を選ぶことができるという。

 異なる税込み価格を設定する場合には、「持ち帰り」と「店内飲食」の両方を表示するか、「店内で飲食される場合、価格が異なります」と店内に掲示することを前提に10%か8%かどちらか一方のみの税込み価格を表示する。

 この時点で相当複雑で、消費者は一体何%の消費税が課されているのか理解できずに購入することになりそうだが、さらに複雑なケースがある。

 例えば「おもちゃ付きのお菓子」「紅茶の茶葉とティーポットのセット」のような商品の場合だ。軽減税率対象商品と対象外商品が一緒になって一つの商品の場合、税抜き価格が1万円以下で、食品の価格が占める割合が3分の2以上であれば全体が軽減税率の対象になるという。

 このほか、水道水は10%だがボトル入りの水は8%。栽培用の種は10%、食用のカボチャの種は8%といった具合だ。

 こうした複雑な課税に対応したレジや、販売管理できるシステムの導入も必要になる。導入経費は申請すれば一部が補助金の対象になるが、そうした手続きも含めて、中小の店舗には大きな負担となる。

■減資という秘策
 信用調査会社の帝国データバンク横浜支店の内藤修情報部長は7月、意外な企業の動きに首をひねった。

 「今年に入り、特に5月に小売業が『減資』する動きが一気に増加した」

 今回の増税では、影響を軽減しようと中小企業向けの緩和措置として企業に対しポイント還元(中小の小売りは5%分)が行われる。この対象が小売業の場合、「資本金5千万円以下」または「従業員50人以下」で、かつ「3年間の課税所得の平均が15億円以下」という条件だった。

 県内大手のスーパー「富士シティオ」(横浜市)は、1億円の資本金を5千万円に減資する手続きに入った。

 同社の担当者は「ポイント還元とは無関係に、資金の柔軟性、機動性を高めるために減資する」とした上で、「(ポイント還元で)メリットがあるならば、対象になるための申請をすることも検討している」と明かす。

 帝国データバンクの調査によると、1~5月の間に全国で減資した小売業は、前年同期比76・5%増の263社に上る。県内も44・4%増だった。

 内藤部長は「本来、減資は業績が振るわず繰越損失がある場合に決算上打ち消すために行う場合が多い。『資本金』は企業の格や規模の指標でもある」と指摘。「ポイント還元を目当てに減資しているとしたら、税制の本来の趣旨とは異なるのではないか」と話す。

 多くの企業が「消費増税」というインパクトに備え、知恵を絞り、重荷に耐えようとする姿が浮かび上がる。

 ◇

 消費税10%への引き上げまで2カ月余り。5年半ぶりとなる消費増税に、賛否の声、税制への批判、そして景気への下押し懸念が渦巻く。実情に迫る。

神奈川新聞社

最終更新:7/19(金) 19:00
カナロコ by 神奈川新聞

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