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マネキン、ガイコツ、便器…寿司店の上に異空間 京都「カオスの間」…あるじのクセも相当強い!

7/19(金) 11:20配信

デイリースポーツ

 平安神宮や京都国立近代美術館などが集まる京都の文化芸術ゾーンの一角に、異彩を放つ妖しい空間がひっそりと出現している。その名も「カオスの間」。薄暗い部屋にはマネキン、ガイコツ、便器などなど、「一体何?」というものばかりが陳列されている。恐る恐る扉を開け、ご主人に話を聞くと、これまた一癖も二癖もあるお方だった。

【写真】こちらがクセが相当強そうなご主人

 京都市営地下鉄の東山駅で下りると、さらさらと流れる白川に沿い、小さな脇道が北へと延びている。ロームシアター京都や市動物園がある岡崎地区へと続くルートで、風情たっぷりの雰囲気が人気を集め、近年は人通りも増えている。その途中にあるビルの2階に「カオスの間」はある。

 1階は寿司店。その看板の横に手書きで「NEXT WORLDミュージアム黄泉[よみ]」の文字。何屋さんなのか、想像もつかない。

 「入りにくいやろ。そこを勇気を持って踏み出すことが必要なんや。一人で入ってくるやつもおる。これは見どころがあるやつや」

 「カオスの間」の主人、砂本松夫さん(70)が笑いながら出迎えた。

■つぼに入っているのは…

 面積は50坪ぐらいだろうか。奥行きのある部屋に照明で浮かぶオブジェの数々。オーディオからはバイオリンの弦をこするような「現代音楽」が流れる。つぼにマネキンの上半身が入っていたり、「看護婦室」との札が掛かった暗い小部屋にはガイコツの人形があったり。なんじゃこりゃ。

 なんか、すごいですね。「見る人によったらガラクタやわな。普通の人は入ってこないわ。でも、外国人は喜んでくれるでえ。安部公房の世界みたいですねって言われたのが一番うれしかったなあ」

 これって展示作品と考えたらいいのだろうか。「そんなん、どっちでもええんや。はっきり分からんイメージの方がええ。君がどう感じたか。あなたが考えなさい。そういうこっちゃ」

 ひょっとして砂本さんの作品? 「もある。作品をつくるための材料を売ってもいる」

 えっ、でも値札は付いていない。「値段なんて付ける必要ない。お客さんと話して、どんな風に使うか聞いて、いくらって決める。基本的には安いわ。若いやつはお金ないやん。ただであげる時もあるぐらい」。骨董の卸市場で売れ残った中から気に入った品を買い上げ、どこにもないマイワールドを作り上げているのだそう。

■あるじの招待は…

 「何年か前から始めたんやけど、ネットで広まるようになって今はひと月に50人ぐらいかな。最近は札幌やら新潟やら全国から、ここをメーンに京都に来る若者もいる。今の人は物じゃないんやな。どこにもない体験や情報を求めている。それでも、見せてるだけじゃ食えへんから、入場料で500円を取るようにしたんや」。京都の「異空間」は金閣寺や清水寺を差し置いて、じわじわと全国の若者諸君を引き寄せているのか。それにしても、このあるじは何者なのだろう。

 「出身は京都やで。これでも同志社大の法学部で政治経済を勉強したんや。京都の繊維関係で会社員したけど倒産してな。50ぐらいの時かな。一時は別の事業して、ここで陶芸教室もしたけど、うまいこといかんくて、もっとおもろいことをと思った時、ほら、アートって高いやん。その敷居を取っ払ったろうと思ってな」

 他人の尺度ではなく、自分の感性で「ガラクタ」に新たな価値を見いだし、命を吹き込む。京都の異分子に見えて、これが案外、とても京都的な場所とも言えるのかもしれない。

 夢があるのだという。「見いだした若い芸術家を海外に売り出していきたいな」。今も部屋の一番奥にあるスペースを別の若者が運営する「ギャラリー逢ノ世」に貸している。「外国の人はこういうのを喜んでくれてな。安部公房の…」。古希にして熱い思いをたぎらせるあるじは、先ほど聞いた世界観を繰り返しながら野望を語った。普通の観光では飽き足らない人を、空間とともにクセの強い主人が待っている。

 「カオスの間」は京都市東山区三条通白川上ル石泉院町394。問い合わせは075(762)5255。

(まいどなニュース/京都新聞・樺山聡)

最終更新:7/19(金) 11:30
デイリースポーツ

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