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【論説】トランプ氏の人種差別発言、その二つの意図

7/19(金) 11:10配信

The Guardian

【ガーディアン論説委員】
 米国のドナルド・トランプ大統領は、米国を半世紀前に逆戻りさせようともくろんでいる。選挙で勝った指導者らが、白人至上主義的な発言をしていた時代だ。1967年までは17州で異人種間の結婚が禁止されていたし、ミシシッピ州は1995年まで、奴隷制を廃止する合衆国憲法修正第13条を批准しなかった。

 もちろん現在は、合法的な人種隔離が行われたのは遠い過去のことで、米国での人種間の隔たりは過去のものとは違う。それでもトランプ氏は、自分に異議を唱える人を次々に排除、抑圧することで共和党を作り変えた。問題は、共和党指導部が無力で大統領の人種主義に対処できないことではなく、その考えに共謀していることだ。

 トランプ氏は、人種問題への対応に失敗した米国の過去を引き継いでいる。故マーティン・ルーサー・キング牧師が「肌の色ではなく人となりで判断されるように」とした米国の大前提を誤解、あるいは無視している。トランプ氏は白人のみが真の市民であり、移民は条件付きの米国人だとずっと考えてきた。そのため、トランプ氏が非白人系の女性議員4人に対し「出身地」の国へ「戻る」よう発言したことに、驚きはなかった。

 これはまごうことなき人種主義であり、トランプ氏が長年抱いてきた白人ナショナリズムの基本的な考えと共鳴するものだ。トランプ氏は米国が維持したいと熱望している法の下の平等、信教の自由、法の平等な保護、迫害からの保護などの価値観を侵す行動をとっている。それはこのような価値観を信じていないからだ。トランプ氏は1100万人の不法移民を強制送還する試みの一環として、14日から数千人を対象とした強制捜査を開始した。さらに15日、メキシコ国境での難民申請を厳格化すると発表。弁護士らは、裁判に持ち込めば違法と判断されると指摘している。

 トランプ氏の行動は、誰が権力を握っているのかを常に思い出させるためのものであり、法の下ではすべての市民は平等だとする公民権の考えを軽視したものだ。

 トランプ氏は特に、合衆国憲法が人種で区別をしないことにもどかしさを感じている。昨年11月には、出生地が米国なら米国籍が付与される制度を廃止する意向を示した。これまでの人種差別的な発言の数々を見ると、米国の法律が適用され守られるべきは白人だけ、とトランプ氏が考えていると結論づけられる。白人のキリスト教徒は米国で多数派ではなくなったものの、現在でも選挙結果に大きな影響を与えている。

 トランプ氏が主張するルールを実際に確立できるかどうかは重要ではない。同氏の人種主義には二つの目的がある。一つは自分の真の意図から有権者の目をそらすこと。もう一つは来年の大統領選挙に向け、票田を活性化させることだ。

 トランプ氏の主な支持層は、性的または人種的少数派に敵意を抱いている。このような敵意を燃え上がらせて得票できるかどうかに政治生命がかかっていると、トランプ氏は計算している。だが、このような憎悪のメッセージが米国市民には響いていないという世論調査がある。トランプ氏が右寄りに爆発すると、社会のムードは大きく左に動くようだ。トランプ氏は、票田が怒りで炎上してほしいと願っている。物事が過熱状態になったときは、世論調査で示されているように、米国市民がその熱を冷ますように温度を調節してくれることを願う。【翻訳編集:AFPBB News】

「ガーディアン」とは:
1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

最終更新:7/19(金) 11:10
The Guardian

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