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心落ち着く懐かしい音――甘えん坊の娘とおんぶと「千切り」の話【おいしい思い出 vol.14】

7/19(金) 20:03配信

クックパッドニュース

クックパッド初代編集長であり、自他共に認める料理好き・小竹貴子のエッセイ連載。誰にでもある小さな料理の思い出たちを紹介していきます。日常の何でもないひとコマが、いつか忘れられない記憶となる。毎日の料理が楽しくなる、ほっこりエピソードをどうぞ♪

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千切りが大好き

キャベツとにんじんを使ったコールスローサラダ、ごぼうと人参とこんにゃくを使ったきんぴらごぼう、春雨サラダ、冷やし中華、とんかつに添えるキャベツ……。これらのお料理に共通するのは、千切り。

ちょっとおかしいと思われるかもしれませんが、私は千切りが趣味です。薄く、細くサイズを合わせて切れると、この上ない幸せを感じるのです。

日々使う包丁を、毎週砥石を使って丁寧に研ぐのも、きれいな包丁は千切りがとても楽しいからというのが理由です。千切りがなければほったらかしです。

娘にとって千切りの音は子守唄

千切りが趣味と言えるようになったのは、長女が生まれてからですから10年前のこと。

今も変わらないのですが、長女は甘えん坊の寂しがりやさん。首が据わり、生後半年くらいから1歳ちょっとくらいまでですが、どんな時でもママにべったりひっついていないとイヤイヤしてしまう子どもで、家にいる時はママから少しでも離れるとご機嫌斜めでぐずったり、大声出して泣いちゃう娘でした。一緒に遊んでいない時は抱っこ、ベビーカーもなぜか大嫌いなので、外出時も抱っこをせがみます。

今となっては本当に懐かしいのですが、毎日保育園から帰り、家族の晩ごはんの用意をしている時は、終始おんぶをおねだり。そして、仕事から帰るなりずっとおんぶ紐を付けて過ごしていたので、私はまるでアニメ『巨人の星』に登場する主人公・星飛雄馬よろしく大リーグ養成ギプスを装着しているような毎日でしたね。

小さな赤ちゃんをおんぶして包丁を使うというのは、一般常識的には間違いなく危険なのでしょうが、そうしないと泣いて足にしがみついて離れず、それはもっと危険。さらに大声で泣いてしまうので、ご近所さんにもとても迷惑になっちゃいます。やむを得ない状況ではありました。

ある日のこと、いつも通り娘をおんぶしてキッチンに立ち、晩ごはんの用意をしていました。確か、きゅうりとわかめのサラダを作っていた時でしょうか。きゅうりの千切りをしていると、まな板のトントントンという音、ほどよく揺れる私の体のリズムが心地良かったのか、おんぶをしている私の背中で娘はすっと寝てしまったのです。

「お!やっと寝てくれた!」。よし、寝てしまえばこっちのものと思い、背中を解放したいという一心でそーっと静かにベットに連れていき、そーっと寝かせてみました。すると目がぱちっと開いて泣き始めました。……寝かしつけ失敗です。

私は小さなため息をつき、もう一度おんぶをし直して、途中になっていた千切りを再スタート。すると、あれ? またすぐにスヤスヤと娘は眠りについてしまいました。寝息をたてて、本気で眠り込んでいる感じですので、しめしめと娘をベットに連れて行くと、再び寝かしつけ失敗……。

そんな作業を繰り返すこと数回。結局は、お料理が完成するまで娘は私の背中で千切りの音を子守唄に寝ていて、私は娘をおんぶして立ったままでご飯を食べることになりました。

ただ、うちの娘は千切りをしていると寝てくれることに気づいた私は、それを機会に子どもの寝かしつけのためにと、晩ごはんに野菜の千切りをする日が増えていきました。

そんなおんぶで千切りという苦悩の日々を過ごしたおかげでしょうか、千切りにした野菜を使ったお料理レパートリーはかなり多いです。子どもが寝てくれるならという一心で、何でもかんでも千切りにしていましたから当然です。

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最終更新:7/19(金) 20:03
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