ここから本文です

『オーバーウォッチ』と『PUBG』の元プロゲーマー・Vaderがバンダイナムコオンラインの開発スタッフに。プロの視点はゲーム作りに役立つのか?

7/20(土) 11:02配信

ファミ通.com

文・取材:ミス・ユースケ

 こんにちは。ファミ通.comのミス・ユースケです。バンダイナムコオンラインさんにお邪魔しています。


 バンダイナムコオンラインはオンラインゲームの企画・開発・運営を行うメーカーだ。以下のような特徴がある(ミス・ユースケ調べ)。

・2019年に創立10周年を迎える
・『アイドリッシュセブン』や『機動戦士ガンダムオンライン』といった人気タイトルを抱えている
・大ボリュームのPCオンラインゲームを自社開発できるほどのパワーがある

 そして、


 これ!

 “バンナム”とひと括りにされやすいため、意外と世間に知られていない気がするのだが、バンダイナムコオンラインはバンダイナムコエンターテインメントとは異なる、注目すべきメーカーであると断言したい。

 そもそも、がっつり遊べるPCオンラインゲームを自社開発するメーカーは貴重だ。

 100人同時に対戦するPCオンラインアクション『機動戦士ガンダムオンライン』は、2019年で正式サービス7年目。開発コストは相当なものだろうが、堅調にサービスが続いているのはすばらしい。

 さらに。さらにである。現在は新作PCオンラインゲーム『BLUE PROTOCOL』を開発中だ。このご時世にスマホではなくPCプラットフォームを選ぶあたり、「骨太のゲームを作るぞ」という気合を感じる。

 加えて、注目ポイントがもうひとつ。このふたりが働いているのだ。


 『サドンアタック』で上位をキープし続けたObliviousくん(左)と、『オーバーウォッチ』のプロゲーマーとして活躍したVaderくん(右)である。

 ふたりとも、日本におけるeスポーツの根幹を支えたPC用オンラインFPS『サドンアタック』出身。僕は彼らがプレイヤーだった頃に知り合い、そこそこ長い付き合いになっている。

 元トッププレイヤーがどういう流れでオンラインゲームの開発・運営に携わることになったのか。プレイヤーとして磨いたスキルは業務に活かされているのか。

 この辺に興味があったので話を聞かせてもらった。なお、質問の仕方が馴れ馴れしいのはふたりの希望です。雑談みたいに話したいと言われたので。


Vader「僕個人としてはシューターを作りたい気持ちはある」

ユースケいまはどんな仕事をしているの?

Vader僕は開発チームに所属しています。

Oblivious私は既存タイトルの運営が中心です。いまのノウハウをこれからサービスするタイトルにも活かしていければ。

ユースケVaderくんは作るほう、Obliviousくんは運営するほうって感じか。バンダイナムコオンラインさんは企画、開発、運営と、一貫してやってるんだよね。では、簡単な来歴から教えてください。

Vader最初はMatcha(※)と同じで中学生時代に『Gunz Online』を始めたのがオンラインゲームにハマったきっかけです。もっと昔をさかのぼると(ハンゲームの)『ゴールドウィング』とか(ゲームオンの)『レッドストーン』とかも。


※Matcha:『サドンアタック』時代にVader氏が所属していたクランNabDのチームメイト・竹本涼平氏のこと。現在はネクソン所属。


Vader『Gunz Online』は1年くらいクランランキング1位だったと思います。始めた当初から腕には自信がありました。

 で、2007年の高校生時代に『サドンアタック』のサービスが始まって、半々くらいで遊ぶようになって。『サドンアタック』はメーカー公式の大会があると知ってから本格的にやり始めました。

 自分でチームを作るようになって、120チーム以上が集まったユーザー主催の大会で3位に入ったら、わりと満足したんですよ。チームも解散して辞めようと思っていたら、Matchaから「もっと流行る」とか「いまスナイパーがいないから来てほしい」って勧誘されたんですね。そこまで言うんだったら、またやってみるかって。

ユースケMatchaくんに引き止められたんだ。

Vader『サドンアタック』は可能性があるから、いま辞めないでいっしょにやろうよって。それでNabDに入りました。

ユースケMatchaくん、すごいな。NabDは何度も優勝するようなクランになったし、結果的に将来のプロゲーマーをひとり誕生させてるのか。

Vaderその後は、“e-stars Seoul 2009”で初めての世界大会を経験しました。

ユースケ韓国のでかい大会だよね。そのときはどんな印象を受けましたか?

Vader規模が違いますよね。いまはメーカーが公式で1タイトルのオフライン大会を開くことが多いですけど、そのときは会場に行けば『カウンターストライク』の大会もやってるし、『スタークラフト』の大会もやってるし、みたいな。

 パッと感じる規模が大きかったので、そのとき初めて「こういう世界があるんだな」と感動したのを覚えてます。

ユースケ東京ゲームショウのゲーム大会版みたいな空気に触発されてNabDの快進撃につながるわけだ。


Vaderその頃からずっと本気でゲームやってたんですけど、2014年頃かな、モチベーション的に限界が来ちゃいまして。

ユースケ急展開。

Vaderそのときは24歳。Matchaがネクソンさんに入ったのもこの頃かな。もともと僕もゲーム会社に興味があったんですね。とあるゲーム運営会社にご縁があって入社しました。そこでは1年間くらいは運営とかQA(※)とかをやってました。

 ですけど、2016年5月に『オーバーウォッチ』がリリースされたじゃないですか。まぁー、これにハマってしまいまして。いま隣りにいるObliviousとか、昔の『サドンアタック』仲間を適当に集めて大会に出ようって話になったんですよ。


※QA:Quality Assuranceの略。デバッグやテストといった品質管理業務のこと。


Oblivious紙投げとかSlyd1ni(※)もいましたね。


※紙投げ、Slyd1ni:ふたりと同時期に活躍した『サドンアタック』トッププレイヤー。


Vaderそうそう。その辺の面子でShoboSukeさん(※)主催の大会に出たんですね。サービスが始まってから、わりとすぐの時期に。そこそこ戦えて3位に入ったんですけど、やっぱり優勝したいなーと。


※ShoboSuke:自身で大会などを精力的に開催するストリーマー。現在は『PUBG』における日本最大のコミュニティー大会“DONCUP”を主催している。


Vader『オーバーウォッチ』は当時から世界的なタイトルのひとつじゃないですか。あのBlizzard Entertainmentのシューターってことで、もう期待値がすごかった。

 チャンスだと思ったんですよ。こんなチャンスはもうないかも。仕事を辞めてまで突き詰めるメンバーでやっておかないと後悔するだろうなって。

 (大会に出た)メンバーの中で、僕とaktmとNovadyとSparky(※)はやる気があったんです。『オーバーウォッチ』は6人で1チームですけど、あとふたりがなかなか見つからない。


※aktm、Novady、Sparky:『オーバーウォッチ』などで活躍した元プロゲーマー。





Oblivious20代も半ばに差し掛かるタイミングですからね。私もふつうに働いていましたし。

Vaderそれで、プロチームに頼ろうという話になったんです。プロチームに応募するくらいの人ならやる気も実力もあるんじゃないかと思ったので。

 そこで声をかけたのがプロチームのUSG(Unsold Stuff Gaming)。「この4人とあとふたりくらいでチームを組みたい」って連絡したら、すぐに返事がきました。「うちでやりましょう」と。

 プロゲーマーになりたかったというより、プロゲーマーの組織を活用したかったという考えが強かったですね。

ユースケそこでUSGを選んだ理由は何だったのかな。当時、大手チームはたいてい『オーバーウォッチ』に乗り出していた気が。

Vaderたしか、DeToNatorさんとかDetonatioN Gamingさんはメンバーがほぼ決まっていたんですよ。SCARZさんは募集要項の時点で条件が合わなかった。

 僕らは4人ともやる気があって今後もっとうまくなる自信があったから、それを崩したくなかったんです。全員で固まって入れるチームを探して、条件面でUSGがちょうどよかったんだと思います。

 5月にリリースされたゲームなのに、7月末にはオフライン大会が開かれるくらいのスピード感。もうほんとに展開が早くて、8月上旬には(10月に中国で開催される)世界大会にチームで招待されたんです。日程を1週間以上とられる大会で、このときに仕事をしながらずっと続けるのは無理だと思いました。

 半端じゃないレベルのビッグタイトルですし、規模もアジアだけじゃなく北米、ヨーロッパも含めて世界的に盛り上がるのは間違いない。

ユースケ決断が遅いと取り残されちゃうもんなー。


Vaderやろうかな、と。

ユースケ決断。

Vader人生で一度はプロゲーマーを経験してみたかったんです。『サドンアタック』ではレジェンドとか言われてもてはやされましたけど、グローバルで流行っているゲームに本気で挑んだことがない。一度はそういう状況でゲームをしてみたかったんです。

 いろいろ考えて、挑戦するからにはゲーミングハウスが必要だなと思いました。とりあえず住むところがあれば実家に迷惑をかけることもありませんし。

 「ゲーミングハウスが用意されるのなら仕事を辞めて活動したい」という意思をチームのオーナーに伝えました。それが10月にあった中国での大会後。12月までにはゲーミングハウスを用意してもらえることになったので、10月末に仕事を辞めました。

ユースケ環境があれば結果を出せる自信とか勝算があったから、チームに掛け合った、と。『サドンアタック』で十分な実績もあったわけだしね。

Vaderそうですね。中国の世界大会で有名チーム相手に善戦できたことも自信につながったかなと思います。

 11月に東京ヴェルディさんへのレンタル移籍の話(※)もあって。あのときは自分たちに流れが来ていると感じましたね。


※レンタル移籍:2016年秋頃からeスポーツ部門を始動させるスポーツチームが増加。東京ベルディはUSGと業務提携を行い、eスポーツ部門の強化に努めた。





Vaderただ、その後はちょっと思い描いていた将来とは違うほうに動いている感じはありました、『オーバーウォッチ』全体で。大きな国際大会が開かれなくなっちゃったんです。

 国内の大会ではいい結果を出せたんです。JeSLのリーグ戦やNVIDIA主催のオフライン大会でも1位になれました。けど、国内大会だけでは現状の生活を維持して活動を続けるのはどうがんばっても厳しいと感じて、2017年くらいで『オーバーウォッチ』を引退。2018年からは『PUBG』に移行しました。PJS(※)も発表されましたしね。


※PJS:DMM GAMESが運営する『PUBG』国内プロリーグ“PUBG JAPAN SERIES”の略称。


Vaderでもですね、じつは僕、『PUBG』はあまり合わなかったんですよ。プレイヤーとしては後発組なので、追いつけるように必死で研究しましたけど、どうしてもモチベーションが上がらない。

 単純に、ゲームとしては『オーバーウォッチ』のほうが好みだったという話なんですけど。

ユースケシンプルな話だね。やっぱり好きなゲームでトップを目指したいもんなー。

Vader冷静に考えて、シューターゲームでご飯を食べていくには『PUBG』しかない。でも、なかなかエンジンがかからなくて。

 1部リーグには上がれたので多少は結果を残せたと思ってます。でも、中途半端な気持ちで続けるのはよくない。そういうもやもやがあって、2部リーグに落ちてからは無理に続けることもないと思って引退しました。

 自分が仕事を辞めてでも続けたかったのは『オーバーウォッチ』だったんです。


ユースケそこからどういう流れでバンダイナムコオンラインに?

Vaderプロを辞めるとき、少し悩みました。前みたいにゲーム会社に戻るか、せっかくここまでeスポーツをがんばってきたんだから、そういう業種で働くか。

 eスポーツ系なら誰に相談するか、真っ先に思い浮かんだのがOoodaさん(※)。僕が知ってるのはシューター界隈だけですけど、Ooodaさんはいろいろやってますしね。


※Oooda:ゲーム大会の実況やMCなど、さまざまなジャンルで活動するキャスター。『パズドラ』実況者として“おはスタ”に出演した経験も。『サドンアタック』の実況経験も豊富で、Vaderくんとの付き合いも長い。


Vader(eスポーツの仕事は)やりたくても枠がなかったらできないかなー、と。先に業界の話を聞きたいと思っていたら、『サドンアタック』でお世話になった人が、僕が就職先で悩んでいると聞いてくださっていたみたいでした。

 そしたら、バンダイナムコオンラインの人と話す機会を作っていただいたんですね。このインタビューでは詳細は話せないですけど、これからも自社でオンラインゲームを開発する可能性があるらしい、と。

ユースケVaderくんが食いつくということはシューター系? 何だろ。

Oblivious僕らがここで「そうです」とか「違います」とか言ったらまずいですよね。

Vader問題になるよね(笑)。

ユースケふたりが入社したということで、新作シューター系を期待する人は多いと思うのだけど。

Vaderですよね。基本無料のシューターは一時代を築きましたけど、いまはビッグタイトル以外は厳しい状況です。

 それでも、僕個人としてはシューターを作りたい気持ちはあります。挑戦的だからこそおもしろそう。

ユースケそういう言葉を聞けて安心した。プレイヤーとしてFPSに本気で取り組んだ経験が役に立つところを見てみたい。

 仮に、仮にね。ふたりが新作シューターの開発・運営に関わることになった場合、バンダイナムコオンラインだから、自分たちだからできることは何があると思いますか?

Vaderそうですねぇ……。前の会社は海外製のゲームを日本で運営するパブリッシャーでした。意見を出しても開発側になかなか届かないことがあるんです。これが辛い辛い。

ユースケ日本から出す意見が無視されるってこと?

Vaderいやいや、さすがに無視されることはないと思います。問題はもっとシンプルで、自分が言語を習得してないと正確に伝えられないんですよ。

ユースケそうか、間に通訳さんを挟むから伝言ゲームになっちゃうんだ。

Vaderどんなに優秀な通訳さんでも、ゲームの細かい内容を完璧に伝えるのはやっぱり難しいでしょうからね。

ユースケゲームに詳しかったとしても、プレイヤーの心情を理解できないと、ニュアンスがずれるだろうしなー。

Vaderバンダイナムコオンラインは内部に開発環境がありますから、自分の意見を円滑に伝えられると感じたんです。
Oblivious「怖くて仕事を辞める選択ができなかった」
 じつは当該の“お世話になった人”は現在バンダイナムコオンラインに所属していて、このインタビューにも同席してもらっている。仮にAさんとする。

 Aさんの耳にVaderくんが就職活動をしていると届いたのが入社のきっかけ。「紹介するから話だけでも聞いてみなよ」とアドバイスしたところ、話が進んで2018年11月に入社。

 採用する会社側は慎重になるのが当たり前なので、スムーズに決まるのは珍しいと思う。開発現場に必要なゲームへのリテラシー、スキル、経験、勤勉さが評価されたのだろう。


ユースケじゃあ、今度はObliviousくんの来歴を教えてください。

Oblivious小中学生の頃からゲームが好きで、ずっと『大乱闘スマッシュブラザーズ』とかやってました。友だちからPCのMMORPGを教えてもらって、「すげー! インターネットにつなげるといろんな人と戦えるんだ」って興奮しましたね。

 私もMMORPGを始めたんですけど、時間をかけた人が強いゲームに思えて、どれだけがんばっても無理じゃんってふてくされていたら、『Gunz Online』に誘われたんです。

ユースケMMORPGを対戦ゲームとして捉えてたんだ。

Obliviousギルド戦が好きだったんですよ。MMORPGも対戦ゲーム感覚で遊んでました。

ユースケなるほど。装備とお金の資産形成が大切なゲームの場合は、時間をかけたほうが強いというのはあるかも。

Oblivious私は『Gunz Online』時代はVaderたちみたいにトップじゃなくて、中堅と上位の間くらいの立ち位置でした。

 その後もVaderと同じく『サドンアタック』に。高校の友だちを誘って大会に出たりしてました。

 友だちの中ではいちばんうまかったと思いますけど、井の中の蛙。トップのプレイヤーにはまったく歯が立たないレベルでした。

ユースケへぇー、うまいイメージあったけど、最初はそうだったのね。

Obliviousひたすら配信を見て技術を盗んだりコメントしたり。あとはクランマークを作ってプレゼントしたり。こび売ってましたね(笑)。

 で、仲よくなっていっしょにやりませんかみたいな。スペクト視点(※)で動きを勉強させてもらいました。


※スペクト視点:やられたときに見られる、ほかのプレイヤーの視点のこと。


ユースケそれもうまくなるための努力みたいなものか。

Oblivious我ながらがんばったと思います(笑)。そのうちにやっとVaderたちみたいな腕の人たちの輪に入れた感じです。

 途中まではリアルの友だちとよく遊んでましたけど、私だけがうまくなりたい気持ちが強くなっちゃったかなーと思います。その友だちとはいまもふつうに遊んでますけどね。


 Obliviousくんはストイックに対戦ゲームに取り組む人と一般人(と言えばいいのだろうか)の中間の感性を持っているみたいだ。リアルの世界とゲームの世界を両立している。

 本人は「自分ではよくわからないんですけど、そうなんですかね」と言っていたが、ここまでバランスがいい人はトッププレイヤーとしては珍しいかもしれない。

Obliviousそういうのが積み重なって名前がある程度知れ渡ると、うまい人たちといっしょにゲームする機会が増えるじゃないですか。で、紙投げとチームを組んで大会に出たりして。

 そこからもほとんどVaderと同じですね、たぶん。分かれ道もいっしょで、『サドンアタック』をいったん止めて『オーバーウォッチ』に。私もけっこう『オーバーウォッチ』をガチでやっていて、6人でチームを組んで大会に出たところまでいっしょ。

 Vaderは本気でやりたいから、仕事を辞めてまで本気でやりたいからそっち(プロ)の道を選んだ。私は怖かったんですよ。仕事を辞める選択ができなかった。

 高校は落ちないようなところを安全に選んで、大学には指定校推薦で入りました。就職も大学に来ていた就活の求人でシステムエンジニアになって。ずっと安定安定。安定志向で来てるんですよ。

 Vaderはプロのルートに進んで「じゃあ、ここでお別れだね」って。私は趣味としてゲームを遊ぶ道に進みました。

ユースケ蓋を開けてみたら、バンダイナムコオンラインで再会。

Oblivious彼は私の知らない道を歩んでいるのでちょっとおもしろいですよね。自分がプロの道に進んでいたらこうなっていたのかもなって。

ユースケシステムエンジニアとして働きながら趣味としてゲームをしていたわけでしょ。仕事でもゲームに関わろうとしたのは、何か心境の変化があったということですか?

Obliviousよく「3年は(入った会社で)働こう」って言うじゃないですか。それくらいは働いてみようと思っていたんですよ、最初から。

 でも、ゲームに関わりたい気持ちはずっとありました。小学校の頃からずっとゲームが好きで、大学を卒業してもゲームをやっている。それを仕事にしたほうが絶対楽しいんだろうなと。

ユースケゲームを仕事にすることへの憧れみたいなものかな。

Obliviousそうですね。「ゲーム業界に入ろう」と決断して、業界で仕事をしている人たちに相談していたら、『サドンアタック』でお世話になった人が親身になってくださいました。これもVaderと同じですね。

 その1~2週間後くらいに当社の事業本部長と面談する機会をいただきました。そのときは自社開発してることもまったく知らなくて。その場で強みがいろいろ聞けて、ここで働きたい! と。

ユースケ前に入った人の信用が後に影響するって言うよね。あいつの友だちだからまじめなんだろうな、みたいな。先に入ったObliviousくんの働きは、Vaderくんの就職にも影響があったかもしれない。

Vaderそういうのも少しはあるかもしれませんね。僕たちみたいにゲーマーからゲーム会社に入ると、世間の目は厳しいのかもなって感じます。

ユースケふたりともゲーム会社に知り合いが多いのは間違いないし、コネ入社って言われる可能性もあるということだよね。

Vaderそれもありますし、僕らが役に立たなかったら採用を決めてくれた人に迷惑がかかります。それに、僕らの働きをもとにゲーマーが評価されることもあると思うんです。「ゲーマーは使えない」なんてイメージがついたら最悪です。下の世代の子たちの邪魔になっちゃう。

ユースケ逆に、VaderくんやObliviousくんがしっかりやることによって、ゲーマーのセカンドキャリアが広がる可能性もあるよね。ゲームに真剣に取り組んだ奴はまじめだぞ、と。

Vaderそこはすごく意識してます。

Obliviousそう言えばそうか。これから意識するようにします(笑)。

ユースケここでも対比がすごいな。たとえば、知り合いのゲーマーに「ゲーム業界の会社を紹介してほしい」って頼まれたらどうする?

Vaderうーん、難しいですね。仮に“ゲーマー採用枠”みたいなものがあるんだったら、自分がしっかり働いて結果を出して枠を広げたい気持ちはあります。でも、こいつだったら安心して紹介できる、みたいな人はまだまだ少ないです。

ユースケやっぱり勤勉さが根底にないと厳しいよねえ。
Obliviousくんの眼力は敏腕アイドルプロデューサー並
 Aさんがふたりを会社側に推薦したのは、『サドンアタック』での長い付き合いの中で、根っこの部分がきちんとしているとわかっていたからだ。

 Obliviousくんはいち社会人として働きながら上位の実力をキープ。Vaderくんは大会の解説ができるくらいの理論派。もちろん、一般的なモラルも持ち合わせている。

 そんなふたりはゲームを続けていたからこそ、バンダイナムコオンラインで働けている。ゲームから何を学んできたのだろうか。


ユースケゲームから学んだことがあったら教えてほしいのだけど。

Oblivious負けず嫌いになったと思います。負けたくない気持ちは仕事でも大切ですよね。うまくいかなかったら別の方法を考えますし、きちんと成果を上げたいんですよ。周りに貢献したいというか。

 ただ、ゲームをやってるときは(将来の)不安も正直言ってありました。中学のときも、高校のときも。知り合いの多くはフリーターや働いてない人だったので、「就職しなくてもいいじゃん。いっしょにずっとゲームしようよ」みたいなことを言われたり。

ユースケそこまで高純度な悪魔のささやき、ある?

Oblivious「就職したらゲームできないよ」なんて言われたりして。

 Ninja(※)は「しっかり学校に行って勉強して、そのうえでゲームをやったほうがいい」って言ってますよね。その通りだと思います。最低限、やるべきことをやったうえでゲームをしたほうがいい。

 時間の使いかたはその人次第だと思うので、寝る時間を削ってゲームするとか、友だちの誘いを断ってゲームをするとか、そこは自由。

 絶対にいい大学に行けというわけじゃないですけど、どうゲームと向き合うか、自分で考えるべきです。


※Ninja:Twitchでもっとも多くのフォロワー(1300万人以上)を抱えるストリーマー。「自分は将来のことを考えて学校でしっかり勉強もした。すべてを辞めてゲームに専念するのはよくない」という旨の発言をしている。





 いいことを話してくれるObliviousくんではあるが、「でもまぁ、たいへんな選手でしたよ」と、Aさん。

 『サドンアタック』のような対戦ゲームの大会では、挙動や戦績をチェックする審判が選手たちの後ろにつく。だが、極まれに誤審もある。人間だから絶対はないし、たまたま別の部分を見ていることもあるかもしれない。

 そういった誤審に対して、Obliviousくんはすごく敏感なのだそうだ。言い合いになったこともある。

 運営サイドとしてはObliviousくんの言い分が(たぶん)正しいと理解しつつも、審判は絶対というルールを曲げるわけにはいかなかった。審判の権威がぐらぐらすると競技として破たんする。

 ビシッと強権を振るってもいいとは思うが、選手はメーカーにとってお客様でもある。難しい問題だなーと思う。

Oblivious「そういうのも含めてスポーツだから」なんて説得されて、「ぐぬぬ」って唸りながら納得してました。たしかにね、そうなんですけど。言いたいことはわかるんですけど。


 ここで、Aさんは「いまだから言えますけど」と前置きしたうえで、興味深い話をしてくれた。Obliviousくんはベンチマークだったのだそうだ。

 世間には“声が大きい人”がいる。“影響力がある人”と言い換えてもいい。そういう人が主張をすると、何となく正しい雰囲気になる。Obliviousくんはまさにそのタイプだったとのこと。

 声が大きいだけだと厄介なお客さんだが、彼はすごくバランスがよかった。ゲームに詳しくて、熱意があって、一般的な感性もある。ほかのプレイヤーの価値観も理解している。プレイヤーと運営の両者にとっていい意見を持っている。

 つまり、Obliviousくんが気に入ったものは、ほかのユーザーにもウケる可能性が高いのだ。彼がかわいいと言ったモデルさんをオフライン大会のイメージキャラに起用したこともあるらしい。敏腕アイドルプロデューサー並みの眼力である。
論理的な思考とコミュニケーション

ユースケVaderくんはどうかな。どういったことを学んできたか、教えてください。

Vaderうーん、僕はチームでやるゲームが好きで、みんなでひとつのことを成し遂げることの難しさとかうれしさとか、そういうものをゲームで学んだ気がします。

 ゲームの開発も運営もひとりでやることじゃないですよね。みんなでアイデアを出し合って作って、お客さんからフィードバックをもらう。

ユースケたしかになあ。仮にひとりで開発も運営もやっていたとしても、プレイヤーの存在を大事にしないといけないわけだし。

Vader(チーム戦タイトルの大会で)優勝するにはうまいやつを集めないといけません。5人なら5人。6人なら6人。たとえば、そのゲームの上位5人が集まったら強いと思いますか?

ユースケその競技のことを知らない人からしたら最強チームだよね。野球の打線、全員4番バッターだったら最強説みたいなもので。

Oblivious全員チームワークを考えられるいい子だったらいいんですけどねー。


Vader全員がみんないい子のわけないじゃないですか。相対的に優れた人が集まってるわけで、みんな多少は自信があると思うんですよ。「おれは強い。おれの考えどおりにやれば勝てる」って。

ユースケ多少は我が強くなるのはわかる気がする。みんなで話し合わないといけないけど、まぁうまくはいかないよなー。わがままな人に合わせて遠慮しちゃったら意味ないし。

Vaderみんなの意見をまとめる難しさとか、人間的な部分は『オーバーウォッチ』で学べたと思います。『サドンアタック』の、とくにKeNNy(※)とかがいたときは、ひと言ふた言で話しがまとまっていたので。


※KeNNy:『カウンターストライク1.6』など、さまざまなゲームで活躍した元プロゲーマー。10年以上前から韓国で短期合宿を行うなど、精力的に活動していた。


ユースケ目指している方向が似てるか、精神的に大人な面子が揃ってれば楽なんだろうな。言うときは言って、引くべきところは引く。『サドンアタック』は5人だけど『オーバーウォッチ』は6人。ひとり増えるだけでもたいへんそうだよね。

Vader『オーバーウォッチ』時代は話す時間がめちゃくちゃ長かったですよ。「こうしたらいいじゃん」ってひと言で済ませたいんですけど、全員が納得するかというと、そんなことはなくて。

 結局、「これはこう、これはこう」と、1個ずつ丁寧に(方針を)決めていくしかないんです。物事を分解・分析する力はゲームで身に着いたと思います。

 誰かに説明するとき、感覚だけで通じる人と通じない人がいますけど、それは当たり前の話。通じない相手に説明することって多いですよね。

ユースケあるある。すごくある。

Vaderそういうときは理論的に説明するしかないわけで。こういうの何力(なにりょく)って言うんだろ?

Obliviousある意味、コミュニケーション力の一種なんじゃないですかね。(チーム戦ゲームで強くなろうと思ったら)コミュ力は磨かれますよ。

ユースケ自分だけ伸びるんじゃなくて、チーム全体で伸びていくために必要な力が身に着いたというわけか。

Vaderそうですね。あと、ゲームをきっかけに得た仕事はいい経験になりました。

 『サドンアタック』で言えば、最初はプレイヤーだったのに、気付けば公式配信とオフラインイベントで演者側に。もともと自分がいた立場の人(プレイヤー)に何かしらを提供できたわけです。プレイヤーとして人前に立つのと演者として立つのとでは、心構えが違いました。

 それと、プロゲーマー時代は専門学校で講師として『オーバーウォッチ』を教えていた時期もありまして。

ユースケそうか。講師も経験してたね。

Vader初日に生徒の雰囲気とレートを見たんですけど、中には本気でプロを目指してるの? って子もいました。でも、19歳20歳くらいの子たちが、将来の不安もある中で学校に来てると思うんです。その気持ちに絶対応えたかった。

 どうやったらうまくなるか、すごい真剣に考えてカリキュラムを作ってました。チームメイトにも迷惑をかけながら、割りに合わないくらい授業の準備に時間をかけたかなーって。

ユースケ引き受けたからには責任も生じるわけだしね。カリキュラム作りで気を付けたことは何かありますか?

Vaderうまい人たちがフィーリングで行っている部分を言語化しようと思ってました。いま思うと、これで論理的な思考を磨けた気がします。



将来のことを考えたからプロになり、考えなかったから堅実な道を選んだ

ユースケプレイヤーとしてトップを目指してるとき、将来のことは考えてましたたか?

Vader高校生、大学生の頃はなかったですね。純粋に楽しかった。好きなゲームで勝ちたい気持ちしかなかったですし。『オーバーウォッチ』をやるくらいになったら、そのゲーム自体の将来性とか自分自身のキャリアを気にするようになりました。

 あの頃は26~27歳くらい。いつまでこれを続けられるのか、どうしても頭の中にちらつくんですよ。プロゲーマーとしてはよくないんですけど。

ユースケプロとしてやっていける環境があるから決断したのが2016年。とはいえ、それもいつまで続くか分からない。不安との戦い。ある意味、最強の敵だ。

Vaderそうなんですよ。年齢を重ねるにつれて、不安はどんどん強くなっていきました。

Oblivious私はその不安が嫌だったから、働きながらゲームをする道を選んだんです。ゲームはおもしろいし大好きですけど、不安から逃げたかった。楽しいことばかり続けてたい。

ユースケ「逃げた」とか悪いように言ってるけど、それもまた賢明な判断だと思うけどなあ。ふたりの目的は「自分が納得する形でゲームを続けたい」ということなんだろうし、プロを選んだほうと選ばなかったほう、どちらが正解とは言えないと思うよ。

Oblivious配信しながらゲームをして、変なこと言ったりやったりすると、見ている人が笑ってくれる。そういうのが楽しかったんですよね。

 Vaderみたいに、将来を考えることは全然なかったです。ゲームの市場がどうとか、プロゲーマーになったらこうだとか。楽しいから(ゲームを)やる以外の気持ちはなかったんじゃないかな。


※関連記事
ゲーマーだって社会貢献したい! RQやモデルも参加したゴミ拾い活動に密着

ユースケ対照的だなー。“将来のことを考えずにプロを目指す”って話はよく聞きそうなものだけど、ふたりの場合は逆なんだね。

 将来のことを真剣に考えたVaderくんはプロになって、考えなかったと言うObliviousくんは堅実に会社員になった。ふしぎ。

Obliviousあー、たしかにそうですね。(Vaderがいた)NabDって基本的にはまじめなチームなんですよ。リーダーのMatchaもしっかりしてますし。

 NabDはつねにトップのまじめなチーム。私が参加していたKMN-GAMiNGは上位にいるお笑い担当チーム。(創設者の)紙投げにはあとで謝ります(笑)。

ユースケうん、言いたいことはわかる。

Oblivious登場シーンでポーズを取ったりカメラが回ってきたらおもしろいことしたり。見てくれている人に楽しんでもらいたい。ゲーム作りも運営も同じ。みんなを楽しませたいんです。


 ここで、取材に同席しているAさんは、「eスポーツやゲームの専門学校に行けば何とかなると思っている子やその親御さんにも、この記事を読んでほしいですね」と言った。

 専門学校で学んできちんと就職できたり、プロゲーマーになれたらそれはすばらしいことだ。だが、結局は本人のやる気次第。学校全般に言えることだが、教わった内容をもとに自分なりの行動ができないと大成できないものである。

 「声優の専門学校もありますよね。芸事の世界は華やかだけどたいへんだってみんな知ってるから覚悟もあるでしょうけど、ゲームだとそうはいかない。学校に行けばプロになれる(ゲーム業界に入れる)って思い込みで入学するのはかわいそうだなと思います」と、Aさん。

ユースケ専門学校に通うと安心するんですよね。授業を受けてれば大丈夫と心のどこかで思っちゃう。業界の考えを学んで自分から動く子なら伸びるんでしょうけど、多くはないだろうなと思います。

Vader自分からばんばん質問してくる子はやっぱり上達します。これも“自分から動く”ということですよね。真剣にやってるのか、こっちが心配になるような子も、もちろんいました。

 スタートラインも取り組みかたも、みんな違います。その人たちをひとつの教室に集めて授業するんですよ。

ユースケ上級者と初級者、どっちが多かった?

Vader初心者ですね。プロを目指すんだったら上級者向けのカリキュラムを作ったほうがいいんでしょうけど、それをすると生徒の大半を切ることになる。さすがにそれも悪い気がして、板挟み状態でした。

 授業の初めに「僕と会うときだけがんばってもプロになれるわけがないから、授業の外でもやらないと」って毎回言ってました。自主的にやらないとうまくならないんです。ゲームに限った話じゃないですけど。

ユースケ自主性を育てるのは簡単じゃないということか。

Vaderあとはチームを早く組めって。『オーバーウォッチ』はチーム戦のゲームなので、チームを経験しないでプロを目指すのはありえない。何でもいいからチームを組めと。

ユースケチームプレイをするうえでの考えかたは、早いうちに理解しておいたほうがいいしね。

Vaderそうですね。まじめな子も多くてやり甲斐はありましたけど、「この子たちはこのまま続けてプロになれるのかな」っていう悩みもつねにありました。


ユースケいろいろなプレイヤーを見てきたと思うんだ。すごくまじめな子もいれば、自分勝手な子もいる。ふたりは自分なりのやりかたを見つけて、一定の成功を収めていると思う。ほかのプレイヤーを見て「もっとこうしたらいいのにな」とか思うことはあった?

Oblivious私はないですね。自分が楽しければいいってタイプなので。(感性が)合う人とだけ接してました。

ユースケ相談されたりしなかった?

Oblivious配信してるとコメントはきましたけど……何て返してたかな。

Vader配信中だったら絶対適当だよね。

Obliviousそうですね、たぶん。うまくなりたかったら毎日1000キルしろとか(笑)。Vaderは何かあった?

Vader『オーバーウォッチ』で活動してたときはあったかなぁ。チームに途中から若くて強い子が入ってきたんですよ。

 最初の印象は「まじでうまいな」。でも、コミュニケーションの取りかたがよくなくて、それはもったいないと感じました。

 若くて強い子に多いと思うんですけど、(仲間に)してほしいことをちゃんと言ってくれないんですね。負けると感情的になってしまって。実力に自信があるのはわかります。でも、チームゲームなので、しっかりコミュニケーションを取らないと勝てないんですよ。

 その子の場合はとりあえず冷静になりなよってところからスタートして、めちゃくちゃ言い合いました。何度も何度も指摘して、落ち着いて話せるようになって、ようやく大会で優勝できるようになったのかな、と思います。

 自分は10代の頃はそこまではちゃめちゃだった記憶はないんですけど、どうだったのかなあ。

Oblivious若い頃のことは自分じゃわからないけど、大人に助けられてることはあったんじゃない?

Vaderそうかもね。若くてうまい子の言いたいこともわかるんですよ。でも、理にかなってない、筋が通ってない。そういう話なんです。

ユースケ結局はチーム戦ってことなんだよね。個人技がすごいやつが集まっても勝てるとは限らない。

Vaderその大事さを知らない子は若い子に多いのかもなと思います。うちのチームに若い子が入ってきたとき、似たような話は何度もしました。

ユースケそれでチームワークを強く意識するようになるとか、チーム自体が教育の場になることはあるような気がする。10代でうまくてちやほやされたら調子に乗るのは仕方ないだろうし。

Vader自分中心で話す子はいますよね。

ユースケおれはこうしたいから、そっちが合わせろ、みたいな?

Vaderそうですね。でも、それが必ずしも正解とは限らない。きみの視点だとそう感じるかもしれないけど、ちょっと周りを見渡したら不可能だよねって話を、考える前に怒りながらしてしまう。

ユースケ悪気はないんだろうけどね。ヒートアップしてることに気づけない。言われて気付ける子はいるんだろな。

Vaderそれはあります。そこでうるせーな! となっちゃうと伸びない印象はあります。

ユースケふたりと話をしていて、ちゃんとしてるなーと感じてる。うまいのにちゃんとしてないプレイヤーをどう思うかな。

Obliviousいいんじゃないですか? その人の人生なので。

Vaderひどい(笑)。

Obliviousその人が選んだ生きかたですし、本人がよければいいんじゃないかなって思います。私にはできないというだけで。

Vader僕はもったいないと思うタイプなんですよね。目の前にちらついているチャンスをつかみ取れていないのはもったいないなって。

 たとえば、「おれはあいつより強い」みたいな発言をする人がいるとしますよね。強いアピールしたい気持ちが芽生えるのはおかしいことじゃないし、仮にプロゲーマーだったら“自分は強い”って自覚は大切。

 ただ、それがデメリットに働くこともあるんです。自分にメリットがあるような立ち回りを考えたら、変な発言は出ないと思います。


ユースケObliviousくんに聞きたいんだけど、ゲームのプレイヤーとしてはいまの立ち位置がいちばんいいとしても、仲よくしてた連中が華やかな世界で活躍していたわけでしょ。苦しくなかった?

Oblivious多少ありました、やっぱり。プロゲーマーになりたい気持ちはゼロじゃなかったので。でも、これで一生食っていけるかって言われたら難しいよなぁと思っちゃったんですよ。いまは前より環境も整っているのでわからないですけど。

ユースケあくまでゲーム好き、ゲームファンとして、プレイヤーを続けるのがいいわけだね。

Obliviousプロゲーマーじゃなくても大会には出られるし、結果も残せるじゃないですか。だったら、無理にプロチームに入る必要もないのかなって思います。アマだけでチームを組んでプロを倒すのもおもしろそう。

ユースケVaderくんはプロとして活動して、いまは会社員になったわけだよね。元プロとしてのプライドはある?

Vaderとくにないと思います。プロゲーマーっていまはすごくなりやすいじゃないですか。その中で、自分で考えてこれだけの結果を出せたという自負はあります。

 プロって本来はハードルが高いものだと思うんですよ。自分がプロゲーマーを名乗ることになったら、こういうことをしたいみたいな気持ちはありましたけど、100%はできなかったかな。完璧ではないにしても、人前で胸を張れるくらいの実績は残せたかなと思ってます。

 それを“プロゲーマー”としてひと括りで語られるのはちょっと嫌ですね。

ユースケなるほどね。中途半端なやつといっしょにすんじゃねえと。

Oblivious言いかた!(笑)
年齢を言い訳にしやすい理由

ユースケ何かすごいタイトルが出てきて、プレイに専念できる環境があった場合、もう1回チャレンジしたい?

Vaderプロになるために会社を1回辞めた身なので、絶対にないとは言えないと思いますけど、現実的にはないんじゃないかなあ。年齢もあるのかな、どんどん下手になってると感じますし。

ユースケやっぱり年齢で衰えるもの?

Vaderゼロじゃないと思います。でも、あんまり年齢は理由にしたくないですね。ゲームってリアルのスポーツと違って、時期によって全然違う対応方法とか考えかたを強いられるんですよ。体験が変わると言いますか。

ユースケスポーツでもルールが調整されたりプレイスタイルの流行り廃りはあるけど、ゲームはアップデートで変化するものだからね。けっこう頻繁に。

Vaderそうです。その変化にずっと対応し続けるのが重要なんです。歳を取ると反射神経が衰えるって言いますよね。でも、卓球なんかはめちゃくちゃ速い球を瞬時に判断して打ち返すスポーツなのに、トップ選手の中には僕より年上もいる。年齢による衰えは言い訳にできないって思えます。

ユースケ単純に比べられるものじゃないけど、ちゃんと研究してストイックにトレーニングし続ければ、上位にい続けられる可能性はあるわけだ。

Vaderたいへんですけどね、好きなゲームだとしても。将来が見えないから不安になることもあるだろうし。そういう日本国内の環境が、年齢を言い訳にさせるのかなと思うことはあります。

 卓球の話で言えば、世界最強国は中国。中国では卓球がすごく流行っているから、成果を出せば多額のお金が動く。人生をかける価値がある。シンプルに言うと、きっとそういうことですよね。

 いまから日本でプロゲーマーになって真剣に取り組んで日本一になったとして、(収入や将来性は)どれだけのものか。そういう不安もあって、いちばん諦める理由にしやすいのが“年齢”なんだと思います。

ユースケ年齢ってわりと“周囲の環境”と“現実的かどうか”にリンクするからなー。

Vaderですので、本当に何か噛み合えば(競技選手に復帰する)可能性はありますけど、現実的ではないというのが僕の結論です。
作り手の感性にゲーマーの経験が融合

ユースケ僕はVaderくんが競技選手に戻りたくなるくらい魅力的なゲームを作ってほしい。ふたりのことを知っているゲーマーからしたら期待すると思うのだけど。

Obliviousヘビーユーザーとしての感覚を期待されることもあると思うんですけど、それだけだと少し違うような。だって、プロにならなくても、無理にうまくなろうとしなくても、ゲームはおもしろいんですもん。ゲームを見る視点はひとつだけじゃない。私みたいにわいわい楽しみたい人もいるわけなので。

 もし“ヘビーユーザーにしかわからないおもしろさ”が中心になったら、一部の人にフォーカスしたゲームになっちゃう。それはよくないですよね。ゲーム会社に入ったばかりの私が言うのは生意気かもしれませんけど。

Vaderもともとヘビーユーザーだったので、同じようなタイプのプレイヤーとずっとお付き合いできる関係性は築けると思います。そのゲームが好きで意見を投げてくれる方も多いので、そういうユーザー目線は絶対に拾いたいですね。


 Obliviousくんのように、バランス感覚のいい人がオンラインゲームを運営すれば、ユーザーの気持ちがわかる。社内でもそういう評価は高いそうだ。

 また、AさんはVaderくんを「解説ができるくらいの理論派だから、作り手として能力があるのでないか」と評価。ゲーム開発は作り手の感性で進められている部分もあるらしいが、感性と同じくらい理論も大切だ。

 たとえば、対戦ゲームのマップ構造。開発スタッフは動き回ったときの楽しさを重視して作るかもしれないが、Vaderくんは戦術面から細かくチェックできる。

 作り手の感性を理論でコントロールできたらゲームの完成度は高くなりそうだ。とはいえ、Vaderくんは作り手の感性を尊重したい気持ちが強いという。

Vader僕がゲーマーの立ち位置から(クリエイターから上がってきた)成果物に対して言えるのは、「ここをちょっと低くしてほしい」とか、そういうことだと思うんです。

 いくら僕がゲーマーだからって、実際に制作するスタッフがゼロから1にしたものをないがしろにしてはいけない。ただ、僕はヘビーユーザーと近い目線を持っているので、彼らが気にする部分は理解できると思います。

Oblivious「きっとこう指摘されますよ」って想定して作れるのはいいですよね。クリエイティブな視点から直してもらえればいちばんいいわけですし。

ユースケFPSみたいなゲームの場合、“壁を少し低くする”とか、まさにヘビーユーザー視点の発想よね。カジュアルに遊ぶ分には影響は少ないけど、射線が通るとゲームバランスが変わる可能性もある。

Vaderそうですね。ですけど、ゲーマーだからと言って必ずしもいいゲームを作れるわけではないとも思っています。いつも自問自答してます。

ObliviousVaderは客観視もできるんだと思います。自分が楽しいものを疑える。でも、Vaderを褒めすぎないほうがいいですよ。社内でいじめられたらかわいそうですからね(笑)。
バンダイナムコオンラインは“ゲームプレイ第一”

Obliviousうちはゲーマーが多いんですよ。元プロゲーマーも、有名プレイヤーだった人もいますし、社長もすごくゲームしてます。誰よりも詳しいんじゃないかってくらい。

 あと、社員の行動指針にゲームプレイ第一って定められてるんです。昼休み中もめっちゃ声聞こえますよ。「瀕死瀕死!」とか。

ユースケ完全にFPSやってる。

Obliviousひたすら格ゲーのコンボ練習している人もいます。

ユースケ会社として、きちんとゲームが好きな人を求めてるわけだ。プレイヤーからしたら、ゲーム好きな人が作ってるゲームのほうが安心できるよね。

 (採用ページを見ながら)FAQページにもいろいろ書いてあるね。福利厚生もしっかりしてる。ほかには……「部活や同好会はありますか?」。フットサル、ボードゲーム、カラオケ……。


ユースケ焚火同好会。仕事だからたいへんなこともあるよね。焚火を見て癒される時間も必要。

Obliviousこれから応募する人が不安になるようなことを言わないでもらえません?


 Vaderくんはまじめで規律正しくてプロゲーマーにならなそうなのに、なった人。Obliviousくんはプロになる実力もあったのに、ならなかった人。

 ふたりは自分の考えを客観視しつつも、担当ゲームをひとりでも多くの人に届けるために奮闘している。その感覚がバンダイナムコオンラインの内部にあるのなら、ゲーマーとしては安心できると思う。僕はひとまず『BLUE PROTOCOL』に期待する。

 ちなみに、バンダイナムコオンラインは彼らのように本気でゲームを遊んでいる人材を求めているそうだ。興味がある人は採用ページをどうぞ。そして焚火同好会に入ろうぜ。

最終更新:7/20(土) 11:02
ファミ通.com

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事