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[コラム]民族主義ではなくヒューマニズムだ

7/20(土) 15:41配信

ハンギョレ新聞

 ジョージ・オーウェルの『ウィガン波止場への道』には、1930年代の英国炭鉱労働者の実状が生々しく描かれている。斜めに横になり、這うようにして切り羽に入り、からだを自由に伸ばすこともできずに作業する炭鉱労働は、本当に苦痛だ。オーウェルが描いたこの惨状は、日帝強制占領期間の強制徴用朝鮮人労働者と大きく変わらない。

 映画『軍艦島』は、1940年代に炭鉱に徴用された朝鮮人の苦難を描いた。日本人との戦闘場面などは、過度の想像力のせいで、かえって実状を理解しにくくする側面がある。軍艦島の徴用工は、一日に12時間以上も採掘に動員され、病気・栄養失調・溺死などで亡くなっていった。

 強制徴用朝鮮人は、炭鉱・製鉄所・造船所などで苛酷な労働搾取に遭い、給与もまともに受け取ることができなかった。外出も統制され、殴打と監視の中で危険な仕事をした。国際労働機構(ILO)は1999年、これをILO29号協約に違反した強制労働と判定した。

 強制徴用をめぐる韓日間の軋轢が激化して、「官製民族主義」論議が起きた。文在寅(ムン・ジェイン)政府が時代遅れの民族主義の観点で接近し、国の経済を危険にさらしているということだ。竹槍に義兵など、誤解を招く表現がなかったわけではないが、強制徴用を民族主義の観点だけで見ているというのは事実ではない。

 強制徴用は、端的に言えば人の問題、ヒューマニズムの問題だ。普遍的人権の問題という話だ。これは、日本軍「慰安婦」が韓日間の民族的問題ではなく、人類普遍の価値の問題であることと同じだ。帝国主義の軍隊に踏みにじられた「慰安婦」は、ヒューマニズムに立った女性・人権の問題だ。強制徴用もまた帝国主義の企業に蹂りんされた朝鮮人労働者の問題なので、ヒューマニズム的普遍性を持つ。

 国際人権法の視点で見れば、強制徴用被害者の踏みにじられた人権を回復し賠償する問題は、いかなる人為的装置でも制限できない。一国の法や政府の決定、裁判所の判決、ひいては国家間の協定をもってしても人間の天賦の権利を抑制することはできない。

 韓国と日本の裁判所は、判決でこれを確認した。2007年、日本の最高裁判所は中国人強制徴用被害者判決で個人請求権が実体的に消滅していないと述べた。1965年の韓日協定で、請求権資金を渡された韓国の場合はちょっと複雑だ。だが、2012年と2018年に韓国の最高裁(大法院)は、韓日協定によって個人請求権は基本的に制約されないと判決することにより、この問題の性格を明確にした。

 1965年以後、時代の流れが大きく変わり、過去の問題がヒューマニズム的観点から新たに提起されたのに、両国政府はまともに対処できなかった。「慰安婦」合意の破綻は、ヒューマニズム的な過去の問題に対して両国政府が不得要領だったことを示した象徴的事件だ。

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府は2005年、韓日協定文書の公開を契機に強制徴用問題をなんとか解決すべく努力した。政府が乗り出し慰労金を支給し、その延長線上で2012年にはポスコも100億ウォン(約10億円)を出捐することにした。盧武鉉の解決法は、自分たちの力で被害を救済しようとする「政府積極主義」だったという点で示唆するところが大きい。

 安倍晋三が、他でもない過去の歴史に、ヒューマニズムの問題に経済報復を突きつけたのは、幼稚なふるまいだ。文在寅大統領は、野党時代に徴用訴訟の弁護人であっただけに、ヒューマニズムの原則に忠実に見える。ただし、李舜臣(イ・スンシン)発言などは、民族主義に寄り添っているのではないかとの誤解を生じさせかねない。

 安倍の策略は、経済と安保の次元で韓国をひざまずかせようとしているという見方が多いが、なおさら民族主義では対処しがたい。韓日問題は、民族主義ではなくヒューマニズムの観点で接近してこそ道徳的優位を持ち、正しい解決法に近付くことができる。民族主義に捕われれば、感情対決の悪循環が続くだけだ。国内的にも反日・親日フレームで争うことは、お互いに傷つくだけの敵前分裂になるのが常だ。

 深刻で緊急な外交対決や経済戦争において、ヒューマニズムに何の意味があるかと思うかもしれない。だが、ヒューマニズムこそ強力だ。すべての力の源泉はヒューマニズム、すなわち人間らしさにある。外交や経済もヒューマニズム的土台がなければ、力を得ることはできない。ヒューマニズムに立って、正道を進むことは、当面の解決に汲々とするより長い観点で対処する道であり、現実において多様な方法で柔軟に接近することを意味する。

 強制徴用の被害者たちは、日帝強制占領期間の“キム・ヨンギュン”であり“双龍(サンヨン)自動車解雇労働者”であり“全泰壱(チョン・テイル)”だ。

ペク・キチョル論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:7/20(土) 15:41
ハンギョレ新聞

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