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【ヒヨリノアメ インタビュー】ヒヨリノアメの曲は自分そのもの

7/20(土) 12:02配信

OKMusic

自分のことが少し分かったという感覚

──そして、初の全国流通作品であり、それでも世界が続くならの篠塚将行さんのプロデュースによるミニアルバム『記憶の片隅に』が完成しましたが、どのような制作期間でしたか?

AKI:しのさん(篠塚の愛称)がいなければできなかったと思う部分がたくさんあります。「傘とシンデレラ」「room」「東京」の3曲は再録なんですけど、その選曲からアレンジ、音の録り方まで相談して決めて。もともとこのバンドを組む前からそれでも世界が続くならが大好きで、茨城から東京までワンマンを観に行ったりもしていたんです。対バンできるだけでも嬉しかったのに、“プロデュースさせてくれないか”って声を掛けてもらった時は、もう単純な嬉しい気持ちとはまた違いました。何か複雑だったんです。こんなに近付いていいのかっていう気持ちもありました。

──今回は一発取りでレコーディングされたそうですね。

AKI:ヴォーカルも一緒に録るのは初めてでした。ヒヨリノアメはその場で思ったことを歌って曲を作ったりもするんですけど、しのさんが僕らのそういった部分も知った上で、レコーディングでも格式ばった感じではなく、普段通り型にはまらないほうが良いと考えてくれたんです。それがすごく自分たちに合ってましたね。不器用だし、自分の緊張とかも演奏に影響しちゃうんで、いつも通りに自分たちができる最大限のものが録れたと思います。

萩谷:レコーディングだけど、ライヴをしてるような感じで。4人で向き合って録れたことも良くて、活き活きした音が入ったと思います。かしこまらず、“自分たちはこのままがいいんだ”という考えになりました。

──全曲がAKIさんの実体験に基づいているそうですが、それってすごく身を削る想いでもあるのではないかと思いました。

AKI:実体験を歌うっていうのは意識してやっているのではなく、曲を作ろうって思った時、僕にはそれしかできなかったんです。アーティストはみんな喋るのと同じように実体験だけを曲にして歌っているものだと思っていて。だから、自然と今のかたちになりました。思ったことしか歌ってないので、何も考えてない時とか、バンドのことで気掛かりがあると考えすぎちゃってできないし。一曲一曲がひとつの出来事でできているのではなくて、いろいろ積み重なった想いがひとつの曲になっています。ヒヨリノアメの曲は自分そのものなんです。

──今作でも作詞作曲はAKIさん?

AKI:はい。どの曲も本当に自分のままなので、実は結構恥ずかしいんですよね(笑)。メンバーに聴かれるのが一番恥ずかしい。“何のことを歌ってるの?”とか質問されないのが救いです。

大橋:僕たちもそこは聞きたいと思ってないので(笑)。

山崎:なんとなく分かるっていうか、“あのことだろうな”って思う時もあるので(笑)。

AKI:それはそれで一番恥ずかしいんですけど…。だから、いつも新曲ができた時にはちょっとスタジオの電気を暗くして、基本的に何も言わずにいきなり歌い始めます。ちょっとマイクから離れて歌詞を誤魔化したりして。

大橋:よく“まだできてないんだよね”とか言うよね(笑)。

AKI:そう(笑)。それで“それ誰の曲?”ってメンバーに訊かれたら、“俺が作ったんだけど、まだ歌詞はできてないんだよね”って。本当はできてるんですけど(笑)。そこから何回かスタジオで歌って、アレンジして完成させてます。

──それを言ってしまったら、次から歌詞が出来上がっているのがバレますね。

全員:(笑)。

──これだけAKIさんの色が一番に出ているのって、他のメンバーがAKIさんをリスペクトしているからなんだろうなって思いました。

AKI:自分が思ったことばっかり歌っていて、メンバーが同じことを考えているわけではないはずなのに、こうして一緒にやれているのは信頼関係とか友情関係があるからなんだろうなと思ってます。

──今作には再録した楽曲も収録されていますが、特に印象深い曲はありますか?

AKI:前に山崎が辞めたいって言い出した時があって。普段は4人で集まるのってスタジオくらいなんですけど、たまに良くない雰囲気になった時とかは集まって話したりするんです。だから、その時もみんなで家に集まったんですけど、大橋が急にピアノを弾き始めて、山崎は暑かったのか、なぜか裸になって(笑)。

萩谷:“お前のピアノはやっぱり最高だよ!”“お前のドラムがあるからだよ”みたいな(笑)。

AKI:そうそう(笑)。そしたらふたりで泣きながら“やっぱり一緒にやってきたい”って言い出して、最終的には僕と萩谷もギターとベースを弾いて、「傘とシンデレラ」をみんなで歌うっていうことがありました。

──すごく良いエピソードじゃないですか! ヒヨリノアメの楽曲には心にぽっかりと穴が空いていても、それを愛しながら歩み続けていくっていう気持ちが一貫してあるように感じていたんですけど、それはAKIさんの人柄そのものであり、それを表現する4人の絆が滲み出ているんですね。改めてミニアルバム『記憶の片隅に』はどんな一枚になりましたか?

AKI:俺らはいつもバンドのことを考えているけど、今回しのさんにプロデュースしてもらったことで、別の角度から見てもらわないと分からない、変わらないことがあるんだなって気が付けたんです。自分の中で自分のことが少し分かったという感覚もありますし、自分のやりたい音楽を見付けられた作品です。次の作品でもその時の歌いたいことを歌いたいなって思いました。

山崎:今までの自分たちが思っていた100パーセントの状態を超えるものが作れました。でも、これがゴールではないから、次につなげていきたいですね。

萩谷:ミニアルバムを作るにあたって改めて自分たちの曲を何回も聴いて、その聴いてる時に対話しているというか、会話をしている感覚になって、自分のことをもっと知れた期間でした。今できることを詰め込めたし、単純にこのバンドが好きになりました。

大橋:レコーディングに関してもそうですが、ずっと正しいと思っていたことだけではなく、そうじゃない考え方が他にもあるっていう、新しい見方を知れた制作でした。自分たちのことって自分たちじゃ分かり切らないけど、これからも良いと思ったことをやっていきたいです。

取材:千々和香苗

OKMusic編集部

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最終更新:7/20(土) 12:02
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