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「米国第一」が壊す秩序(7月21日)

7/21(日) 9:21配信

福島民報

 「トランプ大統領が再選して、あと六年やるとなったら(世界は)取り返しのつかないことになるのではないか」。元外務省幹部は率直に懸念を示す。米国は来年の大統領選挙モードに入った。トランプ氏(共和党)が再選を目指し、多数が名乗りを上げている民主党は候補者指名争いが本格化している。

 こうした懸念は各国で広がっている。トランプ政権が国際合意を次々破り、その行きつく先が見えないことにある。環太平洋連携協定(TPP)と地球温暖化防止のためのパリ協定から離脱、米ロ中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄、そしてイラン核合意を一方的に踏みにじり、イラン制裁を強化し危機を作り出している。

 INF条約は一九八七年、核軍拡の競争抑止のため、共和党のレーガン大統領が当時のソ連と締結した。これ以外は全てオバマ前大統領(民主党)がまとめあげたものだ。多国間の「自由貿易体制」の構築による経済発展、同盟関係を中心に「国際協調」での世界平和の維持を目指すという基本からであった。

 トランプ氏はオバマ氏の政策を全否定。パリ協定やTPPは「米国に不公平」であり、貿易協定は多国間ではなく二国間だとする。「米国第一」を掲げ、これまでの世界の経済、平和維持のシステムを崩壊させている。経済、軍事両面での超大国という理念をかなぐり捨て、米国の利益が第一という姿勢だ。

 これは公式に否定されたが、トランプ氏は一時、北大西洋条約機構(NATO)からの脱退や日米安保条約の破棄まで口にしたという。防衛費の分担が「不公平」というのが理由で、日米安保条約についてはその片務性に現在も不満を表明している。

 「(日本が攻撃されたら)米国はいかなる犠牲を払っても日本を守る。それなのに米国が攻撃されたとき、日本はソニーのテレビで見ていられる」。どぎつい言い方である。脱退するぞ、廃棄するぞと脅しをかけ、取引しようとするのが常套[じょうとう]手段になっている。同盟関係は信頼で成り立つが、これはそれを軽視する発言だ。

 イラン核合意は米国、英国、フランス、ドイツ、中国、ロシアがイランと結んだもので、イランは国際原子力機関(IAEA)の定期査察を受け入れてきたのに、である。

 イラン産原油を購入する国は「米市場から締め出す」とまで宣言し脅す。狙いはイラン嫌いの米国のキリスト教福音派の支持を受け、大統領選を有利にしたいということだとされる。

 トランプ氏のイラン強硬策が世界的支持を受けない背景の一つである。世界経済に暗雲をもたらしている中国との「貿易戦争」。日米同盟関係は堅持すべきだが、日本は注文も主張もせず過度なトランプ一辺倒でいいのだろうか。(国分俊英 元共同通信社編集局長、本宮市出身)

最終更新:7/21(日) 9:21
福島民報

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