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【漢字トリビア】「氷」の成り立ち物語

7/21(日) 11:11配信

TOKYO FM+

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今日の漢字は「氷(こおり)」。「氷河」「流氷」の「氷(ヒョウ)とも読む漢字です。7月25日は「かき氷の日」。制定当時、日本最高気温を記録した日にちなみ、冷たいかき氷を食べるのにふさわしい日とされました。
(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2019年7月20日(土)放送より)

「氷」という漢字は、その様子をかたどった象形文字。古代文字を見ると「人」という字がふたつ、組体操をするような形で重ねて描かれています(人人)。
これは水が凍ったとき、表面張力によって水面がもりあがり、ひきつった様子を描いたとされています。
やがてその形がふたつの点に省略されて「にすい(冫)」という部首になり、「こおり」そのものを表すようになるのです。

現在、「氷」という漢字は「水」という字の左肩のあたりに点をひとつ書きますが、もとは「水」に「にすい」を書いて「氷」を意味していました。その後、「にすい」をひとつの点に省略して「氷」という字ができあがったのです。

漢字が生まれた中国・殷の時代、時の国王は、すでに氷を利用していたといいます。
真冬の間、山の中腹を流れる川のほとりで自然に出来上がった氷を切り出し、山奥の洞窟に作った「氷室」に貯蔵して保存。それを都へ取り寄せて臣下たちに配るのです。

透明な輝きを放つ美しい氷。削って口に含めば、涼やかな風が通りぬけていきます。               
真夏に氷を手にした臣下たちは、時間さえ支配する国王の、絶大な権力と能力にただただひれ伏すしかありませんでした。

今日の漢字は「氷」「氷山「樹氷」の「氷(ヒョウ)」。
「水」という漢字は水が流れる様子を描いた象形文字で、左肩のあたりに書いた点が氷の形を表します。
つまり「水」が凍って固まり、「氷」になったという状態を意味する漢字です。

― 削り氷に甘葛(あまづら)入れて、新しき鋺(かなまり)に入れたる。
清少納言が記した随筆集『枕草子』には、
「あてなるもの」のひとつに、かき氷があげられています。
「あてなる」とは、貴く雅やかなこと、上品なこと。
彼女は削った氷に「甘葛」とばれるシロップを入れて、新しい金属製の茶碗によそったものを「あてなる」と表現したのです。

清少納言といえば、一条天皇の后である中宮定子に仕える身。
各地から献上された貴重な氷を口にすることができました。
無垢な宝石のごとき輝きを放っていても、はかなく消えゆく夏氷。
彼女はそこに、風雅を感じたのでしょう。

かき氷、冷や汁、氷の上に盛るそうめん。
庶民の私たちだって氷さえあればたちまち汗もひき、品よく笑顔でいられそうです。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……。
ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献
『常用字解(第二版)』(白川静/平凡社)
『ひんやり氷の本』(前野紀一/池田書店)
(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」年7月20日(土)放送分より)

最終更新:7/21(日) 11:11
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