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スバルが生まれ変わるために その1

7/22(月) 7:05配信

ITmedia ビジネスオンライン

 完成検査問題以来、スバルは苦しんでいる。ステークホルダーからは厳しい指摘を受け、ロイヤリティユーザーの一部も離れ始めている。そうした中で、今、スバルは「変わらないと未来がない」ことに気づいている。それは事あるごとに伝わってくるのだが、しかし一方で、どう変わればいいのか、あるいは何を変えればいいのかということについて、スバルはまだ答えをつかんでいないように見える。

【スバルがNo.1評価を獲得したコンシュマーレポート4月号】

 世の中には「岡目八目」という言葉がある。当事者には見えない重要なポイントが、第三者からは見えることはよくあることだ。筆者から見えるスバルの状況がどんなものなのか、それを書くのがこの原稿の目的だ。

 筆者の思い過ごしでなければ、「スバルよ変われ!」という記事を書いて以来、スバルはこれまで以上に、筆者に取材の便宜を図ってくれるようになった。

 それは、スバルの苦衷(くちゅう)を現しているのかもしれないが、藁(わら)をも掴(つか)む思いで、外部からの批判の声に耳を澄ませ、スバルが自ら変わりたいと強く願っているという意味だと筆者は解釈している。世界のどこの国でも、自動車産業は例外なく国益を担っている。スバルももちろんその一角を占め、日本の産業界の、ひいては日本国民の幸せを支えている。

 だからこそ、微力ながらスバルの変革を応援したいと思っている。そんな筆者を、スバルは北米の有力ディーラーへと招待した。多くの方がご存知の通り、ここ数年スバルは北米で絶好調である。その北米でのビジネスを見せたい。多分そう考えたのだと思う。

北米ディーラーでのインタビュー

 ペンシルバニア州アレンタウンの「ショッカ・スバル」は、新車・中古車を合わせたスバル車の販売数で全米1位。新車のみに関しても、全米最多級である。この販売店のオーナー、グレッグ・ショッカ氏は、スバルの販売ネットワーク以外にも、ベンツ、BMW、アウディ、フォルクスワーゲン、トヨタ、そして数々の米国ブランドなど14メーカーのディーラーを経営しているが、スバルの販売台数が最も多いという。

 それだけの錚々(そうそう)たるメーカーと付き合っても、スバルに特別なシンパシーを感じるのだそうだ。スバルは中古車の売り上げも含めた販社の様子を、とても積極的に気にしてくれるという。なるほど、ビジネスライクな北米の自動車販売に対して、賛否あれども「系列」的風土が生み出した日本的経営の良いところが、販売店に響く部分があるのかもしれない。

 しかし、ここから以後、質問と答えが一向にかみ合わない。ちょっと辛いかもしれないが、我慢して読んで欲しい。

 一体どんなサポートをしてくれるのかと尋ねると、「スバルは他のメーカーと違い、とてもよく面倒を見てくれます。まるでそれは家族のようにです」という答えが返ってくる。なるほどそういう気持ちは分かったが、サポートの中身は何なのかと尋ねると、「中古車販売もしっかりサポートしてくれます」という答え。中古車の何がスバル独自プログラムなのかと聞くと「サーティファイドプログラムがあります」だという。

 いわゆる顧客満足プログラムだが、そんなものはどこもやっているはずだ。他社のプログラムとどう違うのかを問うても、「スバルのレベルは他社と違う。クルマの価値自体が違います」。いや、それでは取材にならない。ベンツ、BMW、アウディのドイツ3強メーカーなど、片手であしらうほどスバルの価値は高いというんだろうか? そう畳み掛けると「ドイツ車の価値だってもちろん低くはありませんが、販売台数はスバルの方がずっと多いのです」。

 とにかく「スバルは他と違う」と、この自動車販売のプロフェッショナルが、本気でそう思っていることはよくよく分かった。けれど、具体的に何がどう違うのかが全く説明されない。

 彼は、「コンシュマーレポート」誌の話題でさらに饒舌(じょうぜつ)になった。コンシュマーレポートとは広告収入によらない商品評価レポート誌で、辛口評価とともにランキングが発表され、高評価を受けると北米での売り上げに直結する。このコンシュマーレポート4月号で、スバルの北米専用3列シートモデル「アセント」が最高点を獲得したのだ。

 「いまコンシュマーレポートを見たお客さんがどんどんやって来ています。この間も、近所のフォルクスワーゲン・ディーラーの店頭にあったコンシュマーレポートをショールームで立ち読みしたお客様が、そのままそれを持ってこの店にやって来て、(フォルクスワーゲンの)ティグアンの代わりにフォレスターを買ったのです」

 コンシュマーレポートが販売に大きな影響を与えるという話は当然知ってはいたが、影響の大きさについて少し甘くみていたかもしれない。現場の温度感を通して見たそのインパクトはよく理解できた。だとすると、そのコンシュマーレポートに高く評価されるためにスバルは一体どんな戦略を立てているのだろうか?

 「コンシュマーレポートは中立性を重んじているので、何を基準に評価するかは完全なシークレットで、われわれもそれを知ることはできません。だからこそコンシュマーレポートには価値があるのです」

 それはそうかもしれない。だとしても、過去の評価歴から傾向を分析するとか、信頼性や維持コストなど、コンシュマーレポート誌が絶対におろそかにしないであろう項目について、スバル自身が積極的に数字ベースのファクトデータを広く公開して、それらについての優秀性をアピールするとか、やれることはたくさんあるはずだ。

 ただ評価されるのを待つだけだとすると、それはもう戦略でも何でもなく、ただのラッキーだ。もちろんベースとしてば、彼が言う通り、スバルが大事にしてきた「安全」と「耐久性」が大前提であることには筆者も異論はない。ダメな商品を高評価するほどコンシュマーレポートは甘くないだろう。だが、良ければトップが取れるのかといえばそんな簡単な話ではないはずだ。

 プロダクトが良いことは永遠の基本だ。過去も未来もずっと継続してレベルアップをしなくてはいけない。「商品が良ければ黙っていても売れる」という話は、少なくとも21世紀のビジネスではない。良い商品であることに加えて、ブランド価値を高めるためにどんな戦略を立てていくのか、それを聞くために筆者はペンシルバニアまで来ているのだ。

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最終更新:7/23(火) 8:04
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