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フォンデアライエン氏のEUトップ、直前にクシュナー米大統領顧問と密談

7/22(月) 15:00配信

ニュースソクラ

根強かった欧州議会の反発

 欧州連合(EU)の新しい顔として初の女性の欧州委員会委員長が誕生した。予想外の強い反対の背景に、スイスの湖上の米欧間の密談がEU内部関係者の間で話題になっている。  

 フランスのストラスブールに召集された欧州議会本会議は16日、投票の結果、任期切れとなるユンカー欧州委員会委員長の後任にドイツ国防相のウルズラ・フォン・デア・ライエン独キリスト教民主同盟副党首を、支持383票、不支持327票、棄権22票、無効1票で信任し、EUの歴史上初の女性委員長が誕生した。しかしEU全加盟国首脳会議の推薦した同候補は、議会の信任に最低必要な374票は辛うじてクリアしたものの、逆に327人という予想以上の多数議員が不支持に回った。

  欧州委員会委員長は、EUの「首相」に相当する重要ポストである。当初、欧州議会は公開討論会まで催し、三候補をEU首脳会議に提案した。しかし首脳会議はこれを無視し、まったく予想外の独国防相を一方的に候補として押し付けた。不支持の多さは、このようなEU主要国主導の横暴に対する議会の反発、と説明されている。だが、もっと深刻な反発の理由として、スイスの湖上の独国防相と米トランプ政権側の密談――つまりEUトップ人事に見え隠れする「トランプの影」が、ブリュッセル関係者の間で囁かれているのだ。

 問題の密談――フォン・デア・ライエン独国防相とジェレッド・クシュナー米大統領上級顧問による密談が行われたのは今年6月初め。ポンぺオ米国務長官、北大西洋条約機構(NATO)事務総長、オランダ首相なども参加し、スイスのモントルー市内で催された国際会議中、独国防相と米大統領上級顧問だけが若干の側近を伴い20分程度、湖の船上で会談した。話し合いの内容は一切不明だが、国際会議の正式議題だった欧州の今後、対ロシア及び中国政策等についてさらに踏み込んだ意見交換が行われたものとみられる。結果的にはこれが新EU体制とトランプ政権の初会合となった。

 EU関係者たちが最も注目するのは「密談」の行われた時期だ。独国防相の名が欧州委員会委員長候補として突然、飛び出たのは7月2日、徹夜で揉め続けたEU臨時首脳会議最終日だった。だが実際は、少なくとも一月も前に、EU主要国がトップ人事でこっそり合意し、米国にも通じていたのではないか、と蚊帳の外に置かれた欧州議会議員は怒り、不信感を強めている。

 このような不信感を裏打ちするのは、今回のEUトップ人事のもう一人である「EU外交・安保上級代表」としてスペイン外相のボレル氏が5月末までに密かに固まり、それに伴う同外相後任人事まで整っていたとの内部情報だ。「奥の院」の政治が横行するEU…。「限りなく市民に近いEU」を唱え、今秋発足する新EU体制には間違いなく波乱の5年が待ち受けている。
 
 余談ながらフォン・デア・ライエン新欧州委員長が、今秋のEU離脱の旗を掲げる英国首相最有力候補ボリス・ジョンソン氏と同じブリュッセルの欧州官僚子弟用学校の出身であることも歴史の皮肉というしかない。

■谷口 長世(国際ジャーナリスト、在ブリュッセル)
毎日新聞ブリュッセル支局長を経て1998年、独立。ブリュッセル在住、安全保障&国際問題を中心に月刊「世界」など内外の雑誌に多数寄稿。著書に「アンネ・フランク 心の旅路」(講談社)、「NATO 変貌する安全保障」「サイバー時代の戦争」(共に岩波書店)。現在、世界第2の規模の外国特派員組織・国際記者連盟(ベルギー)財務理事。

最終更新:7/22(月) 15:00
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