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香港デモで板挟み、ナイキも吉野家も月餅も

7/22(月) 15:17配信

ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

 香港では中国の影響力拡大に反発する抗議運動が続いている。米スポーツ用品大手ナイキから地元ベーカリーまで幅広いビジネスが、どちらかを支持したり、あるいはそう見えるだけで人気が急上昇するかと思えば、逆に怒りの反応にも見舞われている。

 ここ数週間、香港の政治問題に巻き込まれた企業はマーケティング戦略の素早い修正を迫られてきた。ナイキのデザイナーがソーシャルメディアに香港デモを支持する投稿をしたところ、中国本土の企業がナイキの新スニーカーの販売を中止した。大塚製薬の清涼飲料水「ポカリスエット」は、政府寄りとみられている香港テレビ局へのCM出稿を取りやめたところデモ参加者の愛用ドリンクとなったが、中国では不買運動に直面するはめになった。また、香港のあるベーカリーは抗議運動をテーマにした焼き菓子を売り出し、販売を大きく伸ばした一方で、罵詈(ばり)雑言も浴びせられた。

 中国への犯罪人引き渡しを認める条例に抗議し、何百万人もの香港市民が街に繰り出す中、企業は世界2位の経済大国による敏感な反応に対処するという難題を思い知らされている。

 香港の抗議運動では参加者がしばしばポカリスエットを手にかざし、警察と衝突した後の現場には空のボトルが散乱していた。大塚製薬が香港のテレビ局大手、無線電視(TVB)からCMを引き揚げたことが、デモ参加者から歓迎された。デモ参加者はTVBが中国寄りだと非難している。

 大塚製薬の広報担当者は電話インタビューに対し、「TVBからのCM引き揚げはマーケティング戦略上の判断であって、政治的メッセージを発信する目的ではない」と述べた。

 TVBは大塚製薬の判断について「非常に遺憾」だとした。

 中国本土では、一部のソーシャルメディアユーザーがポカリスエットの不買を呼び掛けた。だが香港では、参加者がポカリスエットを夜の大規模デモで非公式のマスコットにするなど、コストのかからないマーケティング効果が続いている。

 ナイキもその数週間前に同様の板挟みにあっていた。日本のコラボ先「アンダーカバー」がネット上に香港デモ参加者の写真を掲載して「中国への引き渡し反対」と書き添えたことで、中国のソーシャルメディアで激しい反発が起きたからだ。写真は後に削除されたが、アンダーカバーとナイキは当時、中国を含む複数の市場で新スニーカーを発売する目前だった。

 数日後になって中国のスポーツ用品販売大手、寶勝国際などの小売業者が、アンダーカバーのデザインしたスニーカーの販売を中止するようナイキから「緊急連絡」を受けたとソーシャルメディアで明らかにした。ナイキと寶勝国際傘下のスポーツブランドYYSports(勝道体育)から今のところコメントは得られていない。

 デモ参加者の間では、香港警察の行動にも注目が高まっている。吉野家の現地法人では先週、フェイスブックの同社ページに香港警察をからかうような投稿があったことを受け、火消しに追われている。

 また、中国寄りのビジネスマンである吉野家のフランチャイズオーナーが地元メディアで香港政府への支持を訴えたことを受け、抗議者たちが少なくとも1軒の吉野家の正面を、ボイコットを求めるメッセージを書いたポストイットで覆い尽くした。

 その一つには「共産主義の連中を喜ばせる吉野家は恥を知れ」と書かれていた。吉野家からコメントは得られていない。

 デモ参加者の心をつかんで利益につなげた地元ベーカリーもある。

 ベーカリーを経営するナオミ・スエンさん(35)は、デモ参加者の士気を高めようと、月餅に抗議メッセージを焼き付け始めた。

 「遊び感覚だった。それに皆を盛り上げたかった」とスエンさんは語る。

 ベーカリーの売り上げは、政治メッセージ入り月餅を売り出してから2週間で2割増えたという。

 誰もがこの月餅を買っているわけではない。スエンさんには怒りの電話もかかってくるが、「彼らはどっちみち私のお客ではないから」と気にしない。「商売には影響ないわ」

 ただ、一種の逆境にも見舞われている。スエンさんの焼き菓子用の型は中国本土製だ。最近、抗議メッセージを入れた新しい型を一式発注しようとしたところ、業者に拒否されたという。

By Joyu Wang, Chuin-Wei Yap

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