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地盤沈下する日本の道路を守る切り札はAI

7/23(火) 8:00配信

TechTargetジャパン

 日本の広大で複雑な(かつ実に不可解なことが多い)道路網の下には、同じく広大な下水道管網が広がっている。だが日本は地震多発地域にある。その上、戦後の高度経済成長期に敷設された地下インフラは今や老朽化し、劣化している。そのため地盤沈下や陥没穴が大事故の主な原因になりつつある。

 日本の国土交通省によると、2015年には全国3300カ所で道路陥没が発生したという。一例を挙げると、2016年11月に福岡県で大陥没事故が発生し、大都市中心部の交差点が数日にわたって通行止めになった。

 この事故は、劣化した配水管から流出した水が道路下の地下鉄トンネルに流れ込んだことが原因と考えられている。犠牲者が出なかった唯一の理由は、発生時刻が午前5時15分だったことだといわれている。

地中レーダーで空洞を特定

 ディープラーニングをはじめとする人工知能(AI)の技術が、地中レーダーが生成するデータに応用されつつある。これにより、危険な地下空洞が出現する前に路面下の浸食領域を特定し、命を脅かす構造崩壊を防止することが期待されている。そう語るのは、東京を拠点とするエンジニアリング企業の川崎地質(KGE)だ。同社は土木や地下水の汚染、海底マッピング、地滑りと地震のリスク分析、構造劣化など、多岐にわたる地球科学を専門とする。

 同社の技術者、今井利宗氏は次のように語る。「地表からは見えない道路下の空洞を正確に特定する方法が必要だった。こうした空洞を陥没前に見つけ出さなくてはならない」

 そのため、同社は独自の地中レーダー探査システムを開発した。このシステムはミニバンの背後に取り付けられ、時速50~60キロでけん引される。2メートル幅のコンテナには5本のアンテナが取り付けられ、50M~1000MHz帯域で信号を送信する。これにより、沈下や地下水漏れなどが原因で生まれる空洞を、道路下2~3メートルの深さまで正確に特定できる。

 データは路上で収集され、本社に転送される。今井氏は5Gによってこのプロセスが容易になることを期待している。

 だが、ここでデジタルの限界に直面してアナログの方法に戻ることになった。というのも、3つの技術者グループがデータを目視で分析するために、A3サイズの紙に印刷する必要があるからだ。

 「目を凝らせば、地下空洞の存在を示す反応が分かる。わずかな隆起が、空洞があるという事実を表す。だが隆起以外の形もある。どれほど才能があっても、熟練していても、人間の技術者は確認に疲れて空洞を見落とすことが避けられない」

 「画像の分析は複数の技術者で行う。1人で分析すると見逃す恐れがある。複数の技術者が必要なのはこのためだ」

 道路100メートルごとにA3用紙1枚分のデータが生成される。有意義な分析のためには膨大なリソースを必要とするという事実を回避するすべは同社になかった。このままではいけないと考えたのが、同社代表取締役の坂上敏彦氏だ。

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最終更新:7/23(火) 8:00
TechTargetジャパン

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