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韓国・文政権、対日強硬姿勢の裏に経済不振

7/24(水) 18:05配信

ニュースソクラ

タイミング悪かった労働者優遇の経済政策

 日本政府は韓国に対して7月初め半導体材料であるレジストほか三品目の規制を発動した。従来は信頼関係を築いている「ホワイト国」として審査・許可なしで輸出できたが、安全保障上、このホワイト国の指定を外すことになる。

 日本政府は認めていないが、元徴用工への慰謝料の支払いを日本企業に求めた韓国最高法院の判決に対する対抗措置とみられる。

 日韓関係は、このほかにも従軍慰安婦問題、自衛隊に対するレーダー照射などにみられるように悪化の一途をたどっている。23日もロシアに領空侵犯をされたのに、それが領有権争いをしている竹島周辺であったため、日韓は共同歩調をとれなかった。

 日韓関係がスパイラルに悪化しているのは、安倍首相が韓国叩きは参院選に有利と判断していたからとも言えるが、同時に、文大統領が支持率を上げるために大衆迎合策を取り続けてきた結果でもある。

 2017年5月に発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権は発足当初、8割を上回る高い支持率を得ていた。その後も北朝鮮との「南北対話」を通じる関係強化などが好感されて高支持率の維持を図った。

 18年6月の米朝首脳会談実現に向けての尽力、19年2月の平昌オリンピックにおける南北共同参加、同年9月の平壌共同宣言の採択など、南北関係の強化策を挙げると枚挙にいとまない。

 しかしながら、国民受けを狙った日本に対する強硬姿勢、南北対話の強化にもかかわらず、文政権の支持率は発足直後の80%台から現在では40%台まで急降下している。なぜであろうか。

 それは韓国経済の低迷から文政権が公約した雇用の拡大が全く実現しておらず、一般国民の不満が高まっているためである。

 7月初めに韓国の企画財務省は年央経済見通しにおいて、今年の実質GDPを2.4―2.5%へと昨年12月時点の2.6-2.7%から0.2 %引き下げた。仮にこの通りの数値となれば、韓国は7年ぶりの低成長に直面することになる。

 しかし、民間見通しでは今年のGDP成長率は最低1.4%の予想がでている。さらに足元はマイナス成長とも言われる。政府見通しがまだまだ高いのは今年後半の世界経済の回復という希望的観測に基づいているためだ。

 韓国経済のけん引役となってきた輸出は上記の企画財務省の見通しでは今年は5%減と従来の見通し(+3.1%)を大きく下方修正した。同国の輸出をみると、輸出全体の20%を占める最大の輸出先である中国の景気停滞と最大の輸出品目である半導体の不振のダブルパンチから減少を余儀なくされている。

 ちなみに19年1~5月の対中輸出は前年比15%減、半導体輸出は価格の下落も相まって同21%減と大幅減となっている。5月の経常収支は輸出の減少を主因に7年ぶりに赤字を記録した。

 このようなアゲンストの風が強まる中で、韓国経済のシェアの過半を占めるサムスン、現代など財閥の業績が悪化している。最大財閥であるサムスンの4~6月の営業利益は56%減と前期に続く大幅減益となった。

 このため、財閥系各社は、先行きの経済の不透明性が高まる中で、主要部門である半導体、自動車、造船などの分野で設備投資を手控えている。企画財務相の見通しでは今年の設備投資は前年比4%減と予想されている。

 海外環境の悪化が外需依存型の韓国経済を直撃しているのは事実だ。しかし、問題は、文政権が「輸出中心の大企業主導の経済」から「所得、雇用を増やして人中心の包容経済」の実現を公約として掲げていたのに、現実にはその公約の実現からほど遠いところにあることだ。

 文政権は左派政権らしく、就任早々から労働者優遇策を打ち出した。最低賃金は18年が前年比+16%、19年が同+11%も引き上げられ、時給ベースで17年の6,470ウォンからわずか2年後の19年には8,350ウォンとなった。併せて、18年7月には法定労働時間も週間ベースで最高52時間と従前の68時間から24%も短縮させた。

 韓国経済の成長力が鈍化して労働生産性も伸び悩みを続けるこの時期に、全くそうした経済的影響をカウントしない労働政策は自分で自分の足を撃つようなものである。人件費負担の増大に耐えられない中小零細企業を中心に雇用調整の動きが広がり、一時失業率は4.4%と9年ぶりの高水準となった。

 収益力の弱い中小零細企業からは悲鳴の声が出ている。文政権は一定規模以下の零細企業には月額15万ウォン程度の補助金を出す羽目になった。

 文政権は急低下した支持率向上に懸命である。その鍵は韓国経済の動向にかかっている。すでに経済スタッフを入れ替えるなど信認回復に躍起となっているほか、今後は景気浮揚策を打ち出してくるであろう。

 金融政策面では利上げを続けてきた韓国銀行の金融政策会合でこの5月には利下げを主張する意見も出てきており、今後利下げへの転換も予想される。財政政策面をみると、文政権は発足以来、財閥系への増税(非課税措置の縮小など)で増えた歳入で社会福祉関連支出を大幅に増やすという大衆迎合策を打ち出している。

 さらに19年4月には悪化する景気を浮揚する狙いから6.7兆ウォンの補正予算を作成して国会審議を急いでいる。

 しかし、文政権は、低成長の持続、雇用情勢の悪化、経常収支の悪化、などの困難な経済情勢を早急に立ち直らせることは難しいであろう。そもそも、文政権の大衆迎合的な経済政策では潜在成長率の引き上げ、労働生産性の向上は期待できない。

 したがって、外交面で得点を稼ぐことに今以上に注力してこよう。日本に対する理不尽ともいえる強硬姿勢が弱まることはないほか、北朝鮮との政治・経済関係の強化にも一段と傾斜姿勢を強めそうだ。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:7/24(水) 18:05
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